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第75話 関係と言うものは、急に変わるのではなく、知らないとこから、変えられ始めている。

【原田ともか】


―――この世界は、楽しむためにある。


最終的には皆、いつかは死んでしまう。だから、これは暇つぶし…。自分が楽しければ何でもいい。


私を楽しませてくれたらそれでいい。考え方がおかしい?


自己中心的?そんなこと知らないしっ!


生きやすくするのに理由なんていらないっしょ!


でもまぁ、最近ウチは楽しくない…。


真理子が離れちゃったから。


でも、真理子はそれなりに楽しそうだよね?


なんで?なんで?なんであの子、楽しそうなの?


あんなしょぼい男連れて、自分がハブッた子と絡んで…。


おかしくない?おかしいよね?


こんなの、許されないよね?


じゃあ、ウチが裁かなきゃ♪


ウチが楽しくないのに、真理子や美羽が楽しいのって、絶対おかしいもんね♪


❋❋❋


【七五三田 悠莉】


いろいろなことが落ち着き始め、収まる所へと収まり始めた今日この頃…白い雪が顔を出し、冬の到来を感じさせます。皆様いかがお過ごしでしょうか?


私は今―――



「だからっ! 今のとこもうちょっと右だってば!」


「うっさいわねぇ、菜衣子わっ! だからお母さんは嫌だって言ったのよ!! もう三百円も入れたのよっ?! もうおしまい! これは取れないように出来てんのっ!」


「違うもんっ! これは確立機で、私が見たところあと2百円で設定に届くはずだもんっ! だからあと2回させてっ!」


そう言って、デパートのゲーセン…物取り系のゲーム機の前、母のコートを引っ張り、ブンブンと大円を描きながら、5年生とは思えない発言をしている妹を俺は静止する。


「はいはい、菜衣子、本来こう言うキャッチャー系のゲーム機は、だいたい運だからね…いい子だから我儘は…」


「うるさい、負け犬! 勝てる戦から逃げ出すのかっ?! 貴様それでも武士かっ! そんなお兄ちゃん情けないよっ!! 美羽ちゃんと真理子ちゃんに言ってるやる!」


「いや…あいつら関係な…」


「悠莉くんは最近になって、おっぱいの大きい茶色い髪のグラドルとかの写真見出したって言ってやるっ!!」


「え、悠莉…そうなの?」


「いや、ちょっと待てっ! 確かに最近たまたま、た•ま•た•まっ! そういう子がグラドルにいて似てるとは思ったけどだなっ!決してやましい…!」


「いいやっ! 悠莉くんはそれで妄想をしてるねっ! 美羽ちゃんと被せて如何わしいこと考えてるねっ! じゃなきゃいちいち、たまたま似てると思った人物を検索とかしないもんっ!」


何こいつ心理士なの? 名探偵? 体は子供で頭脳は大人なの? こわっ! 将来旦那さんになる人は絶対浮気出来ないわ…。いや、そんな事したら、俺が許さないんだけどね…。


そんな事を考えていると、


「…あれ? 七五三田?」


と声をかけられ振り返る。


するとそこには、仁井園と…原田……?


「おぅ…」


なんだろう…違和感を感じる。


「あー、七五三田じゃーん、なになに? 美羽とデート?」


「いや…ちょっと家族と買い物にな……」


「あはは、だよねーないと思ったー」


(笑)でもつけそうなテンションで絡んでくる。てか、俺君とそんな親しくないだろ…。とは思いつつ…。


「はは…」


何愛想笑いしてんだ俺…。


すると、そんなやり取りに気づいた菜衣子が振り返る。


「あ、真理子ちゃん、こんにちわ」


「あ、こんにちわ」


「え?え? 真理子、七五三田の妹とも知り合いなの? まじ怪しい、ウケる」


いや、ウケねぇから。つか、なんで原田は仁井園と…?


確かに、学校で仁井園と原田はたまに会話をしている。だが、前のような関係性ではないはずだ。何故なら、俺が一度、彼女達の関係性をめちゃくちゃにしているからだ。そう考えるとむしろ、仁井園を疎ましく思っていて、俺に対しては恨みの感情をもっていてもおかしくは無い…。


だが、言われた仁井園は「ははは…」と愛想笑いとかしてるし。


やはり可笑しい。前の仁井園のならば、『いや、アンタうるさいし』とでも言って…彼女の話を切ってしまいそうなものだが…なんだ…?これじゃまるで……立場が前とは逆のような印象を受ける。


「じゃ、あたしら買い物あるから」


「おぅ…またな」


俺はそう言って仁井園に軽く手を降る。菜衣子も「またね」と手を降った。


「……ふむ」


俺が考え込んでいると、菜衣子が言う。


「悠莉くん」


「…なんだ」


「真理子ちゃん、なんからしくなかったね」


さすがですおとなえさん。俺もそう思っていますよ。


✳✳✳


翌朝、学校へとやってきた俺は、いつも通りHR前のスーパーリラクゼーションタイム、ミュージックスタジアム…自分でも何言ってるのかよくわからないけど、癒やしの時間へと自らを誘う。


イヤホンを耳につけ、うつぶせに…。


「七五三田、おはよ」


誘った瞬間に俺は聞き慣れた声からの挨拶で現実へと戻ってくる。


「…おぅ…神城…」


顔をあげ、神城を見る……。え?


「おまえ、髪染めたの?」


「あ…うん、どうかな? 変じゃないかな?」


いや…て言うか……綺麗な茶色からブロンド系に。


もともとキュート系のハーフ顔ではあるが、恐ろしく似合っているというか…まるで人形と言うか…。


「あぁ…まぁ、いいんじゃないんですか?」


「えー! 七五三田つめたい、もっとなんかないの?」


言えるわけねぇだろ…。だが、やべぇ、超可愛い。とか俺が言ったらどんなリアクションするんだろうか。


そんなやり取りをしていると、また教室の扉が開き、談笑パーティ中だったクラスが一瞬で静まり返る。


スローモーションにでもかかったかのような錯覚に襲われ、その扉から入ってきたと人物に、視線を持っていかれる――――。


それは、長く綺麗な黒髪を、バッサリとセミロングまで切り、大きく印象を変えてきた、仁井園 真理子の姿だった。



そして、この、変わった二人からその連鎖は始まっていく。



気づかなかったのか…気づけなかったのか…。



もし、気付けていれば変わったのか…。



俺は改めて思わされるのだ……。



"人気者"が正義なのだと。

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