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第73話 漫画なんかでヒロインがヤバい時は、だいたい主人公本気出す。

【神城 美羽】


「ははは…そうだね」


愛想笑いを浮かべる。はぁー…私何してるんだろ…。今回の合コンは、中学の頃の同級生からのお願いで、彼女には中学の頃に何度か助けられたことがあった。だから…と言うのもあったが、私としては、やっぱりあまり乗り気にはなれなかった。正直こういう場があまり得意ではないと言うのもある。それに七五三田があんなこと言うから……。


―――いや、結局私が選んだのか…。


考えてから思い直す。


中学の頃の私もそうだ。それなりのグループに属して、愛想笑いを浮かべ、他人に合わせる。きっと、それは決して悪いことではない…それでも私は出会ってしまった。


何にも属さず、自分は自分と言う人に。人達に。


今こうして、同級生達に囲まれ、カラオケで盛り上がっているはずなのに、私はどこか、居場所がないような気持ちでいる…。


そんなことを考えていると、先程ふざけて私に告白してきた人が話しかけてきた。


「あれ? 美羽ちゃん、あんま楽しくない?」


「…え? あ、いや、別にそんなんじゃないよ?なんで?」


「いや、なーんか影があるって言うかさー…」


やば…態度に出てかな?思い直し、空気を悪くしないようにと私は笑顔を作る。


「ははは、そんなこと無いし!…てか、えっと…」


「あ、俺、わたりね、わたり 修也しゅうや


「あ、そっか、渡くん…渡くんは次何歌うの?」


「えー?おれー?…俺はねぇ…」


少し考える素振りをすると彼は


「美羽ちゃんが元気の出る曲♪」


そう言ってウィンクをしてくる。


「ははは…そっか…」


「あれ!? ちょっと引いてる?!」


「いやいや、そんな…」


「でもマジ、俺わりとガチめに美羽ちゃん気に入ったんだよねー」


そう言ってこちらを見てくる。


「はは…そりゃどうも…」


「……つかさ、二人でぬけね? 美羽ちゃん元気ないし、俺、美羽ちゃんつまんないの嫌だしさ!」


「…へ?」


私が答える前に彼は立ち上がり、手を上げる


「はいはーいっ! 俺と美羽ちゃんぬけまーす!」


「え、ちょ…」


そう言うと、彼は「いいから、いいから、俺に任せて」と行って私の手首を掴んで立ち上がる。するとそれを見た周りは


「おー、なんだなんだ、二人でやらしいことすんなよー!」


「なにぃー、美羽お持ち帰りー?」


とかふざけて笑う。


「いや…私…」


私は何も言えないまま部屋から連れ出されてしまう。


✳✳✳


【七五三田 悠利】



「いや、どうすんだマジで、これ意味なくないか?」


とりあえず俺と仁井園は着席してからそんな話をする。


「……マジでやらかしたわね、これじゃ…」


まぁ、そんな大したことにはならないだろうと言う反面、仁井園が余計なことを言ったせいで、神城が今もう既に誰かの毒牙にかかっているのではないか?などと言う謎の不安にもかられる。


「つーか、単純に連絡してみたらどうなんだ?」


「え? あぁ、それもそうね…」


そう言って仁井園はスマホを取り出す。そして…


「……あと2パーしか充電ないんだけど」


「……は?え?なんで?」


「いや、知らないし、つか、充電してたのに…マジムカつく…とりあえずLINEだけしとく」


「おぅ…」


そう言うと、めちゃくちゃ早くスマホをタプタプといじる仁井園。何その指の動き、何?プロなの?君はスマホ使い上級者なの?いや、てかマジで早いんですけど。


一通り打ち終えた仁井園は、


「ふぅ…とりあえず、美羽が気づくの待つしか…」


とこちらを向いて言葉を止める。そして何かを目で追った。次の瞬間、

「七五三田、荷物まとめて」


「いや、出してもないんだけど…てか、手ぶらなんですけど…」


「じゃあ立って、今美羽がさっき告ってた奴に引っ張られてた」


「…は?」


「いいから、はよ!」


「お、おう、わかった!」


✳✳✳


【神城 美羽】


カラオケ店を出て、彼に手を引かれたまま歩く。ってか、ペースはや……どんどん歩くうちに足が少しもつれそうになる。


そして町外れの公園に連れてこられた。


「ここさ、俺の好きな場所なんだよ」


……え?


「悩み事とかある時、よく来るんだ…人少ないし、いいとこだろ?」


「えっと…まぁ…」


確かに、町中に比べると落ち着いていて、草木の音が心地良い。でも…。


「美羽…」


「へ…?」


え、呼び捨て…?


「俺、マジで美羽の事、好きかもしんない」


「え…いや、ちょ…え?」


駄目だ、彼の勢いについていけない。ってかまだ会って1〜2時間くらいだよね…?え?どういう事…?


「たぶん、運命の人は、この人だ!ってなるって聞いたことあるけど、それが今なんだと思う……」


そう言うと、じりじりとこちらへ歩いてくる。


「いや…え? ごめん、急すぎてちょっと意味が…」


「大丈夫、俺、優しいから」


「いや、答えになってな…」


私が返事をしようとすると、両手で肩を掴まれる。ちょ…ま…こわ…ッ!


「大丈夫だから、今は急で意味わかんないかもだけど、ゆっくり考えてくれたらいいから…」


待って、言葉と行動が一致してないんだけどこの人!


そして引き寄せられ、抱きつかれる。


「だから、今はこれで我慢する」


いや、我慢て…こわ、怖い…。


そしてゆっくりと離され、さすがに文句を言おうと上を向くと


「…え」


彼の顔が迫ってくる。


やだ…! 私まだ初めてなのにっ…!


いや…


力が強くて抵抗できない。怖い…怖い…っ!


あぁ…駄目だ…私このまま…


そう思った瞬間だった――――。



「……なに、それおまえの彼氏なの?」


聞き慣れた声がする。


すると、彼の顔が離れる。


「…誰?、おまえ」


渡くんが言うと、聞き慣れた声が答える。


「アンタが今、強制猥褻しようとしてる人の友人」


「は? 強制猥褻? これは今後のための」


「今後…?」


七五三田は少し考える素振りをすると私に聞く。


「神城、それと今後があんのか?」


私ハッとして彼からとっさに離れる。


「な、ない! ないよ! ビックリして何もできなかっただけだからっ!」


「え…美羽、嘘だろ…?」


「いや…てか美羽って…」


私が急に呼び捨てとかありえないと言おうとすると、真理子が駆け足でやってくる。


「いた…! はぁ…はぁ…ってか七五三田、アンタ見つけたなら連絡くらいしてよっ!」


「いや…おまえあと2パーじゃん」


「2パー?」


私が聞くと、真理子が「スマホ、スマホ」と言って苦笑する。


「……え、なに、美羽ってまさか合コン、こいつ等につけさせたてわけ? え、マジで引くんだけど…意味わからん」


「いや、意味わかんないのは君だから、急に連れ出したり、引っ張り回したり…その、キ…キスしようとか…っ!」


私が言うと、露骨に態度を変え、渡くんは言う。


「はー、話ちげぇー、可愛くて大人しい子っつうからイケると思ったのに」


「…は?」


「おまえの同級生、なんつったっけ、きもと? アイツ俺の連れが好きみたいでさ、だったらおまえも紹介しろって話たら、おまえの名前があがったんだよ、写メみたらなかなか可愛いし、とりあえずこれでいっかって思ったのに、マジでないわー、てか護衛つけとくとか、何様だよ、マジでうざい」


彼の言葉に、衝撃を受ける。木本さんに紹介されたのも少し引っかかるが、何故会って間もない人にここまで言われなければならないのか、怒りで涙がこみ上げてくる…ッ!


「な…」


私が言おうとした瞬間、七五三田が口を開いた。


「何様? そりゃ神城様に決まってんだろ。ウチの高校の可愛い人ランキング5本指の一人だぞ、舐めてんのか、いいか、学年じゃない、全校でだ」


「は? 意味がわからん、だから?」


「なんだ、察し悪いな、アンタじゃ相手にならないどころか、視界に入れるのもおこがましいって話してんだよ」


七五三田を見ると、顔が…怒っている。


「はー? 誰が誰視界に入れようと勝手じゃん? 何? おまえこいつの事好きなの?」


「だったらどうした」


七五三田は、怒った顔のまま彼をにらみつける。


「ヒュー、愛の告白かー? それとももう付き合ってんの?」


二人のやり取りを見ていた真理子がつかつかと歩いていき、渡くんの胸ぐらを掴むとグイッと引き寄せ、何かを耳打ちする。


すると、彼は驚いた様子でこちらを見てから


「ま、まぁ、別にいいけどな、勝手によろしくやれよマジしらけるわ」


そう言って踵を返した。


「……いや、おまえ今何言ったんだよ…」


七五三田が言う。すると真理子は素知らぬ顔で


「別に、見たことあるなーと思ったからちょっとね…」


「え、こわっ…なにおまえ言葉だけで人を無力化って呪文でも唱えたの? なに?魔女なの?おまえ」


「は?意味わかんないし」


そう言って真理子が歩き始める。


「いや、マジでこえぇよ…魔女っ子真理子…」


「今なんつった?」


「なんでもないです」


あるき始めた二人が立ち止まり、振り返る。


「美羽」


「神城」


「帰るよ」

「帰るぞ」




あー…そうか、やっぱり私の居場所はここなのだ。


きっと、今日落ち着かなかったのは、きっと、私が二人といなかったから…いや、違うな…二人が居てくれると思わなかったから。側にいなくても、側にいると思わなかったから。


だから、寂しかったのだ。


「ふふ…」


「何笑ってんだよおまえ…」


「えへへ、べっつにー! ってか、七五三田って私の事、好きだったんだー、へー」


「ちょ、バッ…! バッカおまえ、あれだよ、ライクだよ、ライク」


「ふーん、へー」


「ちょっと、アンタ達いちゃつかないでくれる?イラつく」


「こわっ」

「こわっ」


私が愛想笑いではなく、笑顔でいられる場所。


そんな場所を作ってくれた……。



七五三田、私は…君が好きだよ。



「お腹空いたねぇ…」


「アンタ今さっきまでカラオケいたじゃない」


「全然食べれなかったよー」







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