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第6話 発言は計画的に。

神城達の一件から少しの時が過ぎた。神城は今、クラスの他の子達と話をしたり、俺と昼食をとったりして過ごしている。神城自身は、きっと思うところなどもあるのだろうが、端から見ている分には、あまり普段と変わらない様子ではある。だが、今後も気にかけておこうと思う。ともあれ、こうして落ち着きのある(?)日々が戻ってきたかのように思えた…。


だが、世の中とは常に変化をしていくモノである。例えば、久しぶりに家族でお出掛けしようと言うことになり、普段通らない道を久しぶりに通ったら、知らない内にスシ□ー出来てるじゃん。とか思った事はないだろうか…?あれ?ない?いつの間にかこんな店できてる…と、思った事とかない?……こほん。まぁ、そのようにして、世界と言うのは常に新しくなり続けているものなのだ。そんなある日の事……


昼食前の授業が終わり、黒板の文字を消していた担任の四月一日(わたぬき)先生が、思い出したように話を始める。


「そう言えば…みんなに言うのを忘れていた」


その声を聞いて、授業の片付けをしていたクラスメイト達は手を止め、先生の方を向く。


「…来週なんだが、町の歴史を学ぼうって事で、体験授業を行う事になった。それを伝え忘れていた、すまない」


先生がそう言うと、クラスが少しだけざわつく、だが、そんな事気にもとめず先生は話を続けた。


「それでだな、今回は体験場所として歴史博物館へ行くことになったのだが、皆にはそこの体験コーナーで勾玉(まがたま)作りを体験してもらう事になった。詳しくは、帰りのホームルームでプリントを配布するので、そこで詳細を確認してほしい。あ…あと、七五三田、君は昼食後でいいから、職員室にきてくれ、…以上だ」



先生がそう言うと、再びクラスはざわつき始め、昼休みへと入った。……なんだろうか? 俺なんかしたっけ? そんな事を考えながら、俺は授業の片付けを終える。それから、なんとなく周りを見ると、妙な違和感を感じ、そこをもう一度見てみる…。


………ん? え?


そこには、自分の席で頬杖をついて自慢の黒髪を風に揺らしながら、窓の外を眺める仁井園の姿があった。それだけならば、別になんともない光景なのだが、問題は、とりまきの木村と原田が、なんか別の子と話をしながら、そこで昼食をとろうとしている所である。


(なんかあったのか…?)


まぁでも、たまたまかもしれないし…気のせい、気のせい。それに、そんなのいちいち気にしていたら、昼休みがいくつあっても足りやしないじゃないか…。いや、しかし…と思考していると、急に視界が暗転し、妙にひんやりとした感触が俺の瞼に伝わる。


「だーれだっ♪」


瞬間、最近のお昼には、かならず聞く声が俺の耳に届いた。


「……うわーだれだろー、わからないなぁ(棒)」


俺がそう言うと、その声の主は、俺の視界を遮っていた手をパッと離して、むーっと膨れっ面をしながら俺の顔を覗きこんできた。なにそれマジ可愛い。あと近いです。


「七五三田つまんない、そこは当てに来てほしいところでしょっ!」


「……いや、なんで当ててほしいんだよ」


「……へ…?なんでだろ?」


神城は顎に人差し指を宛ながら斜め上を見て思考する。そして「へへへ」と笑いながら


「ご飯たべよーぜ☆」


と言って親指をたてた。自分でもよく分かんなかったんですね。


それから中庭のいつものベンチへと移動する。あれ以来、俺達の昼食は、あの話をしたベンチが定位置になりつつあった。何故いつもこのベンチは空いているのだろうか?と言う疑問ももたなくはないのだが、辺りを見渡すと、みんな定位置っぽいとこを決めて座っているのかもしれない。ほら、あのいつも、あ~んってしてる成功者(笑)達も、卒業生が寄付したとか書いてある時計台の横でいつもみたいに、あ~んってしてるし…あ、たこさんウインナー落ちた。………っしゃ!やったぜ。


「しかしあれだな、神城は俺なんかと飯を食ってていいのか?」


そのベンチに座り、俺は予め買ってきていたコンビニのパンを開きながら、神城に尋ねる。すると神城は、自分の弁当を開けながら


「え? なんで? だってご飯は一緒の方がおいしいじゃん」


と言う。この一言に、こいつの家庭環境を一瞬想像したのは、きっと俺がひねくれているからなのだと思う。しかし、ここに男女二人でいると言うことは、少なからずそう言った誤解をされると言うことである。って言うかそれ以前に、クラスの他の子と一緒に食べたりした方が、仲良し度と言うか…好感度とかあげれるんじゃないんですかね?そんな事を考えていると、俺はその間ずっと神城を見ていたらしく、


「……あの、七五三田…見すぎだから…っ! ちょっと照れるじゃん」


と言われる。


「え?あー、すまんすまん」


俺が謝ると、神城は「あ、わかった」と言ってニヤついて、自分の弁当から何故か卵焼きを箸で取り出すと、


「はいっ」と言って笑顔で俺に差し出した。


は?なにこれ。いや、なんで卵焼きやねん。全然見てなかっただろうが。


……でもここは頂いておこう…へへへ。箸で掴んで差し出していると言うことは、そう言うことですよね?そう言うことでいいんですよね?


俺はそのまま口を開けて「あ~ん」と、卵焼きに近づく。とうとう俺にもこの日がやってきた…! おい、時計台の横の君達、見ているかね!? そして口にいれようとした瞬間、神城はサッとそれをかわす。


(え?)


俺が開けた口のやり場に困っていると、神城は俺にくれようとした卵焼きをパクり、と頬張った。


「んふふ♪ うっそぉ~」


コノヤロオオオオオっ! 童貞の純情をもてあそんでんじゃねぇよっ!おまえが思ってる以上に期待して傷つくんだぞっ!もうすごいんだからっ!超絶ナイーブなんだからっ!ガラスのハートどころじゃないんだからねっ!乾燥したパサパサの泥くらい脆いんだからっ!そんな俺の憤りなど素知らぬ顔で神城はもくもくと卵焼きを食べながら、「ひっかかった、ひっかかった♪」と楽しそうにしている。なので俺は明いた口を閉じてから、精一杯のジト目で神城に言ってやる。


「見た目ビッチ」


俺がそう言うと、神城は「ごふっ」とむせてから反論する。


「はっ……? はぁっ?! こほっ!七五三田、今なんて…っ!」


「べっつにー」


俺は顔をそむけて口を尖らせる。だって超恥ずかしかったもん、めちゃくちゃ期待しちゃったもん。ちょっと仕返しをするくらいなら、罸はあたらないだろう。そんなことを思いながら、横目で神城を見ると、神城はお茶をグッと飲み、ターン!とそれを置いて、何故かベンチから立ち上がり


「七五三田! 君は勘違いをしているよっ!」


と、いつもより3割くらい強めに言って、更に続ける。


「私はビッチじゃないよ……っ! だって処女だもんッ!」


だもんッ………!


だもんっ……!


だもんっ…!


中庭に、神城の大胆発言(スーパーカミングアウト)がこだまする。


「あ……はい」


いやでもほら、コイツの面子を保つために言っておくと、それわりと普通の事だし…って、なんかごめんね。

第7話『教師も人間なので、利用できるものは利用する。』


5月21日(月)に更新予定です❗(。・ω・。)きゅぴーん✨


この6話は書いててなんかむず痒かった。

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