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第62話 人に場所を伝えるときは、より詳細に伝えてあげないと、似たような所でだいたい迷う。

……とは言ったものの、あんなこと聞いたらビビっちゃうわけで。仁井園宅から帰宅するとき、無駄に警戒しながら歩いちゃったからね、なんで無駄に暗い路地裏とか怖いのか。


いや、例の内田さんがでてくるんじゃないか?とか、そういった不安もなのだが、無駄に昔の怖い話とか思い出して、その手のヤツが出てくんじゃないか、みたいな不安かられる……。


恐怖と言う感情は、人に思い込ませるだけで萎縮させることができる。言わば最強の呪いなのではないだろうか。


さて、帰宅しながら俺は考える。いきなり電話を切られたので、こちらとしては動きようがない。しかし、あちらさんは何かしらモーションを起こしてくるはずだ。特に、俺なんかよりも一番意識しておかなければならないのは仁井園である。


なぜなら、奴等は俺に腹をたてている。しかし、俺の居場所を探さなければならない。ならば、一番手っ取り早いのが仁井園に居場所を聞くことだ。


これはあくまで予防である。あっちがなにもしないなら、しないに越したことはないが、予め予測し、対応策を練っておくことで、"もしも"に備えられるのだ。


「最近、災害とかも多いしな……」


ま、俺は災難が多いんですがね…呟いたくらいに家に到着する。玄関をあけ、「ただいま」を言うと、いつも通り、風呂上がりなのか、まだ髪のしっとりとしているマイシスターが駆け足でやってくる。


「悠莉くん! おかえりっ!」


「はいはい、帰りましたよ」


「今日はね、中華だよっ!」


「マジか、なら早く風呂入ってこないとな」


俺はそう言って菜衣子の頭に軽くポン、と手をおき、部屋へと向かう階段を上がる。


すると菜衣子が呼び止める。


「悠莉くん」


………ぐぬっ、………この、階段を上がるときにコイツに呼び止められる時って、だいたい俺の周りに変化が起きる気がする……。


「咲来ちゃんとこの家ね、今日電気ついてたよ! ひょっとしたら、本当なのかもね、咲来ちゃん帰ってきてるの」


「……ああ、そうかもな」


「まぁ、他の人が入ってるって可能性もなくはないけどさ……」


……そうだ、やはりあのLINEは咲来本人からのモノである。


ボードゲームとメモ帳の写真、丸文字……『ただいま』


「結局、今日返せなかったな……」


俺は1日を振り返りそう呟く。なんとなく菜衣子をみると、頭に「?」マークを浮かべていそうな顔をしている。俺は階段を引き返し、もう一度妹の頭に手をおいて、わざとグシャグシャに髪を撫でる。


「ちょ、うわっ!? もうやめてよ、バカっ!」


「八つ当たりだ」


「うざっ!?」


そうして俺は部屋に引き返した。鞄を机におき、ベッドにたおれ込む。


「スー……はぁあぁああ~」


めちゃくちゃデカイため息でた。だってめんどくさいんだもん、なんなの?なんなのあの写真!意味ありげに送ってきたけど、俺は何?どう返せばいいの?咲来、アイツ昔っから、ああいうとこあるよね、なんか無駄におしゃれと言うか、インパクト与えるのうまいと言うか、もうあれだ、CM作る人にでもなれば?アイツならうまく商品とか人に刷り込めるだろ!


あとなに、なんなんだよタカくんっ!なんで仁井園に依存してんの?!あと内田って誰だよっ!!初対面の相手にキレすぎだろっ!!あんまり怒鳴るもんだから時々何言ってるかわかんねぇし、動物園かと思ったわ!


そう言ったことが頭を駆け巡り、俺は部屋で叫ぶ。


「あああああ! めんどくせぇぇええ!」


すると下から、「悠莉うるさいっ!!」と俺の叫びを飲み込むくらいデカい声で母親に怒られる。



「母は強し……か…」



ちょっと違う気もするが、今はもう何も考えたくはない。とりあえず体を起こす。


「中華たべよ…」


そう呟いて俺は下に行くのだった。



***


【橘 伯李】


街中の歩道橋、上から私は下を走る車を見下ろす。


「今飛び降りたら死んじゃうのかな~?」


呟いていると、右側から言われる。


「じゃあ飛び降りてみたら?」


私はそちら向いて、にこりと笑う。


「来てくれて良かった♪ 来てくれなかったらどうしようかと思ったよー♪ もし来なかったら~、伯李がなにかされちゃうかもじゃん?………内田さんに♪……ね、真理子ちゃん」


「いいから、早く連れていって」


「そんな怖い顔しないでよ♪」


***


【七五三田 悠莉】


ある日の放課後、俺は1人スマホとにらめっこをしていた。まあ、咲来のLINEなんだけど……完全に既読スルー状態で5日目となりました。いや、なに?なんでこんなに言葉を交わすと言うのは難しいのか、しかも、時間が経てば経つほどに返しづらくなる。


「……やべぇな…」


すると神城が急に横に現れる。


「ね、ね、七五三田、真理子しらない?」


「…ん?」


そう言えば、最後の授業からいないような……体調不良か?


「6限目から見てないよね?」


神城に言われ、俺は頷く。


「そう言えば、そうだよな、体でも壊したのか?」


「わかんない、でも真理子、今日変だったんだよね」


「アイツはいつも変だろ…」


「いや、七五三田ほどではないよ」


ちょっと神城さん?さらりと酷いこと言わないの。まあ、でも確かに気になるな……例の一件とあるし、と、持っていたスマホがなる。


着信先は、《仁井園 真理子》


俺はとりあえず電話に出る。


「もしもし? 今おまえが何処にいるかって…」


〈「よぉ、七五三田 悠莉、俺だけど」〉


……その電話から聞こえてきたのは、どこかで聞いた低い声だった。


「………に……真理子は?」


俺は警戒しながら相手に聞く。すると隣で神城が


「真理子!?」


いや、今はそれどころじゃないから、神城、ちょっと黙っててくれ。俺は人差し指を口にあて、静かにするように促す。察した神城は、こくこくと頷いてくれた。


〈「あ? 今俺の隣に寝てるよ? なんてなっ! だっはっはっは!」〉


なにこいつ、マジうざいんですけど。


「いいから、代わってもらえませんか?」


〈「あ? 今の笑うところだろうが、マジおまえつまんねぇな」〉


知らねぇよ。てか、なんで仁井園がコイツらといるんだ?散々それについては注意するように話したのだが……。


〈「俺さ~、マジおまえにイラついてんの。殺したいわけ。でもよ、殺したら犯罪じゃん? だから、おまえが今から土下座しに来たらちょっと考えてやるよ」〉


俺は即答する。


「わかりました、行きます」


〈「……いや、おまえプライドとかねぇのかよ、マジクソだせぇ男だな……」〉


ダサかろうが、臭かろうが、仁井園の場所が分かるのなら、なんでもいい。そんなプライドくれてやる。


〈「まぁいい、なら今からつぶれたボーリング場のとこに来い、いいな」〉


そう言って電話がきられる……。


……いや、えぇー…て言うか、つぶれたボーリング場って何処だよ……何わかってる感じで言ってんのこの人?せめて地名をください。俺のプライド返してっ!返してよっ!














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