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第60話 ギャップ萌えと言うヤツは、いつの時代も良いものである。

「いや、アンタ…俺が出るわって…大丈夫なわけ?」


「大丈夫かどうかは実際出てみないとわからん! が、単純な話だ。おまえが今タカくんにつけこまれてる原因は俺だろ?要は俺とおまえを別れさせたいんだ。だから、神城と俺がコンビニにいたことを理由にあーだのこーだの言ってきてるんだろ?」


ただ…まぁ、気になるのはそこだけではないんだけどな…。


「……まぁ…そうだけど…でも、アイツ怒るとマジウザイからね?七五三田とかたぶん、普通に呼び出したりしようとするよ?」


えぇ……なに? 暴力なの? バイオレンスなの? じゃあこちらもそれなりの対応をしますよ!ええ、しますとも!この国で最強の暴力は法だからな! タカくんめ!もしもそう言う手段に出るなら、めにもの見せてやるんだからねっ!……とは言うものの…


「いや、おまえ……お、脅かすなよ…」


俺がそう言うと、仁井園はフッと笑って


「ね? 怖いでしょ? だから、無理なんてしなくていいよ、あたしはアンタの今の言葉で充分だから、それに、自分の事は自分で……って親にも言われてるからね」


……。いや、違うだろ。自分の事は自分でと言うのは人として基本だ。とりわけ、ぼっち世界を渡り歩いた俺にとってはそれこそ当たり前だ。しかし、そんな俺でさえ妹に頼ることがある。それは、本能的に一人で抱えているのがしんどいから……なのではないだろうか? 今気づいたんだけどさ…。


なんにせよ、たぶんこのままは一番良くない。仁井園はこういってくれているが……このままでは、現状を維持しながら、悪い方へと転がっていく気がする。何故なら、仁井園が自分で動けるなら、既に動いてないとおかしいからだ。


「いや、それでも俺が出るわ」


「え……いいって、アンタどうせまためんどくさく考えて無理しようとしてるんでしょ?」


「仁井園、勘違いするな。俺は無理なんてしてない。頑張るをしてるんだ」


「え、は……? 頑張るをするってなんかおかしくない?」


「いや、いいんだよそれで。おまえの気遣いはありがたい……が、正直このままおまえに任せても現状は回避できないと俺は思っている」


「は? あたしが……」


「一人で頑張ればって? 違うだろうが、おまえは今まで一人で頑張ってきたんだろうが。それで悩んで苦しんで、怖がって、それで辛かったんだろうが」


「――っ…!」


「だからなんだ……その、と……友達が一人で頑張ってんだから、俺も頑張ってみようかな……って言うかだな…俺も力になりたいと言うか……」


俺が恥ずかしさから、急にどもると、仁井園は一度目を瞑り、ゆっくりとあけて、困ったように笑った。


「もう! 一番大事なとこでどもんなし!」


そう言って俺を軽く小突いてくる。


「いてっ」


「でも、ありがとう。七五三田! ちょっとカッコ良かったよ」


「……は、はぁ?? いみわかんにぇし」


「いや咬むなし、あはは! 動揺しすぎだから」


「ば、バカやろう! べ、別に動揺してねぇよ!」


急に出す素敵な笑顔やめろ! ハート持っていかれそうになるだろうがっ! やっぱ女の子ってなんやかんや笑ってる顔が一番良い気がする。


「ま、まぁ…それは置いといてだ。 その、電話を待つ間の話なんだが……さすがに遅くまでおまえんチにいるわけにもいかんだろうから…」


と、話を始めた瞬間だった。


――――ガチャッ……ガチャガチャン…ギッ……


「ただいま。帰ったぞ」


と、玄関から声が聞こえる。その直後、仁井園が慌てて立ち上がり


「やば……」


と呟く。ってなにがヤバイの?なに?こわいんだけどっ!何がヤバイの!?


「お父さん帰ってきた…」


おぅふ!それはヤバい!何がヤバいって過去の俺の印象とか状況とかいろいろヤバい!そんなことを考えていると、仁井園がこそこそと急ぎながら


「(いい? アタシがお父さん引き付けるから、その間に二階の一番奥の部屋に入って! 入ったらすぐ目つむって! わかった!?)」


そう俺に伝えると、徐に制服の上を脱ぎ捨て、シャツのボタンを途中まであけ始めた。


「(ってちょっと待て!おおお、おま、なにして!)」


「(いいから! 早くそこの裏いって!)」


仁井園はそう言って、一番早くこの部屋から出れそうなドアの裏を指差す。てかいや、おまえ胸元!見えてンだけど! ちょっと大人っぽいピンクが見えたんだけどっ!つーか何故脱ぎ始めた!ちょっと俺には刺激が強いんだけどッ!


俺の考えなど知らぬ存ぜぬで仁井園はそのまま出ていく。


すると案の定、玄関から


「真理子、なんだその格好は!だらしないっ!」


「いいから!今そこで着替えようとしてたら、窓の外に誰かいたんだけど、見てきてくれない?」


「……なに? よし、ちょっとまってろ」


そう仁井園パパの声が聞こえ、扉の開くおとがした。そして、閉まった瞬間、俺はダッシュで仁井園指定の部屋へと向かいかけあがる。そしてドアを開き入って閉めた。


「……ふぅ…」


一息ついて、周りを確認する。そう言えば仁井園が目閉じとけとかいっていたが……


「……つか、ぬいぐるみおおっ!」


そう言って俺はとりあえず目をつむる。いやだって、ベッドわきの窓辺に大きなぬいぐるみがいくつも飾ってあり、パッと見だが、その他にも机とかにもあった気がする。てか、え?ここ仁井園の部屋?だとしたら可愛らしすぎるだろ。なに?ギャップすごいんだけど、アイツまさかぬいぐるみ超好きなの?名前とかつけてたらどうしよう……。そんなことを思っているとドアが開く。


―――ガン


「あいたっ」


ドア近くに立っていた為、開いたドアにぶつかってしまう。


「あ、ごめん、てか静かにしてよ、気づかれるじゃん!あとそこ邪魔!」


なんだろう?いつもの仁井園なのだが、ぬいぐるみのギャップでちょっと可愛く感じる。


「なぁ、もう目あけていいか…?」


「ダメ、あと五分くらいそのままでいて」


「いや、なんでだよ」


「うるさい、散らかってんのっ!」


「……ぬいぐるみとかですか?」


呟いた瞬間、胸ぐらを捕まれ、思い切り引き寄せられる。


「おわっ」


「……見たの?」


うっすらと目を開くと、眼前に不機嫌な仁井園さんの顔。こわっ、あと近い!


「いや、さ、さすがに目閉じて入るのは無理じゃね……?」


俺は目をそらしながらそう言う。すると仁井園は、


「……見られたならもういい……目、開ければ…?」


俺は完全に目を開く。すると、いつの間にか着替えたのか、部屋着の仁井園がそこに立っていた。ちなみに緩めのパーカーみたいなのに、キャミソールと、短パンである。あと髪の毛も珍しく横で結んでいる。………誰これ。こいつマジで黙ってたらこんな口悪いヤツに見えねぇな。あと、男いれてんのにその格好はダメですよ!


ちょっと仁井園さん、俺を男だと認識してなさすぎじゃないですかね?


「いや……」


「なに?」


「な、なんでもねぇよ……」


「……? まぁいいや、そこ座って」


仁井園は机の椅子を指定する。俺は言われるがままそこに座った。


「……おまえ、お父さん大丈夫だったのか?」


「え? うんまぁ、大丈夫じゃない? どうせまたすぐ出るだろうし」


「そうか……あのさ」


「うん」


仁井園は返事をしながらベッドに腰かける。


「ぬいぐるみ多くね?」


俺がそう言うと、クッションがとんできた。それをかわす。


「あぶな! おまえすぐモノなんげんなよ!」


「うるさい! 七五三田のアホ! 仕方ないでしょ!好きなんだから!」


仁井園は少し頬を紅くしてそう言う。なにそれ可愛い。


「ま、まぁなんだ、別に悪いとは言ってないだろうが」


「……でも、似合わないとか思ったでしょ…」


「…………まぁ、似合わないと言うか、意外ではあったけどな…」


「やっぱり…」


「でも、今改めて考えると、仁井園らしいっちゃらしいよなとも思うよ」


「どこらへんが……?」


「服とかもそうだが、おまえスカートとか多いしな、私服。だから女の子らしいっちゃらしいんだよなと思った」


俺がそう言うと、仁井園はふん!としてから


「あっそ」


と一言だけ呟く。照れ隠しかな?……さて、お遊びはこの辺までにして本題に入ろうか……。











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