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第59話 状況と関係性を天秤にかけたとき、人はだいたい関係性を選ぶ。

【七五三田 悠莉】


「タカくん? タカくんってあのタカくん?……おまえの元カレの?」


仁井園宅へとおじゃまし、リビングへと通される。


「……うん」


それから、仁井園が情緒不安定な理由聞いてみた。すると、先ほど泣いてしまったのは、いろんな事があって気持ちがパンクしてしまったとの事だった。


それでまぁ、話を聞いているのだが……それで出てきたのがタカくんである。タカくん…仁井園の偽彼氏役をした時の、あのいけすかないイケメンか……つか、まさかここで関わってくるとは……


「で、なんでそのタカくんが今頃おまえに言い寄ってんですかね……?」


「……その、七五三田と美羽が二人でコンビニにいるのをたまたま見たらしくて……」


「で、おまえの男浮気してんぞ! とでも?」


「ううん……真理子、おまえやっぱアイツとつきあってねぇだろって、画像と一緒に……」


「そんでおまえはなんて返したんだよ?」


「……なにも」


……?解せないな…じゃあそのままで良いのではないだろうか?


「いや、じゃあそのままでいいんじゃないの?」


俺がそう言うと、仁井園は徐にスマホを取り出す。


「…………これ見て」


仁井園にスマホを渡され、画面に視線を落とすと――――


【着信件数 タカくん 246件】


oh……いや………いやいやいや、なにこれこわっ!こわいよっ! 数字もそうだが、何が怖いって、単純に計算して、1日が24時間だろ?その10倍近くの件数と言うことは、一時間に10回くらいかかってるってこと?一時間に10回じゃなくても、とある時間に凝縮されてコールラッシュとか……これが俗に言う"鬼電"ってヤツか……いや、これはむしろもう……



「なにこれ、新手のサイバーテロじゃん、こわっ」


「だよね…それさ……だいたいが夜中にまとめて鳴るんだよね……一応着信拒否もしようかとは思ってるんだけど……家にこられるとウザいし……サイレントにして気にしないようにしながら寝ても、起きたらゾッとするし……」


「……いや、まぁだろうな…」


と言うか、電話にも出ていないのなら、家に来るのは時間の問題かもしれないと思っておいた方がいいだろう。……たぶん、コイツが独り暮らしでもしていようものなら、既に家には来ていると思う。


「てかさ、なんで今頃タカくんがおまえに連絡してきてんの?」


「ええっと……その、まぁ……実話ずっと来てるのは来てるんだよね…あたしがあまり相手しないってか、シカトしてるだけで」


「マジかよ、めちゃめちゃおまえの事好きなんだな…」


「……それは違うと思うよ、あの人、他にも沢山女の子いるし」


「………は?」


「なに……?」


いや、他にも女の子いるってなに?だとしたら、仁井園もその中の一人だったってことか? つか、コイツはそれでよかったのか?いや……だめだマジで腹立つな、腹立つな!なんだ沢山の女の子って、だからイケメンは嫌いなんだ!一人に絞ってやれよ!と、心の中で呟いておく。


「いや、まぁ……じゃあなんで?」


「…? たぶん気にくわないんだと思う……あたし初めからそんなにアイツの事相手にしてなかったし……他の子はちやほやしてくれるのに、なんで真理子はそんな冷たいの?って直接言われたことあるから」


「いや、それはそれで発言すげぇけどさ……」


「まぁ、だからこれのせいで……たまに後ろにいる人とかを警戒しちゃったりとか、夜、窓の外の音がなるとビクつくっていうか……すごいストレスなんだよね………」


……まぁこれは確かに怖いだろう。もしも自分が女なら、俺は速攻で警察に事案として通報しているだろう。しかし、仁井園がそれをしないのは……やはり、少なくとも今までの関係性があるからである。おそらく、共通の友人なんかもいることだろう。そこを壊す勇気がないのだ。


が、今ならば俺にも分かるかもしれない……決して分かりあったりすることなど出来ないと、人は個なのだと思ってきた。それは今も対して大きくは変わらない。しかし、たまに神城や仁井園に出会う前のことを考えると……今を失いたくないと思う自分に気づくことがある。


それは決して、この二人と一生一緒にいたいだとか、ずっと二人の理解者でありたいだとか、そう言ったことではない。そんなのは不可能だとわかっているし、いつか、かならず終わりは来てしまう。


だからこそ、今を繋いでいたいと人は願うし、今を残したいと思うのだ――――――!


――――だが、その関係性も、自分にとって有益でなかったり、確実に害が及ぶとなれば話は別だ。しかしそこにあるモラル的かつ、感情的な部分で、人はその関係性を壊せないのである。


『あの時こうしてくれたから、この人はいい人』『コイツはこういう時話を聞いてくれる』『この子は短気だけどおもいやりがあって』『アイツはめちゃくちゃ優しい』


まず、こう言った思考が、複数の人間を思いおこさせ、今現在の状況と交遊関係を脳が心の天秤にかけさせる。その後、他人に写る自分を想像し、"この程度で"と思われたくないとか、自分のせいでこの空間を壊したくないとか、影で悪口を言われたくないとか、そう言った"呪い"にからめとられていく。…結果、多くはこの複数の人間に傾いてしまい、交遊関係を選択した後に、こう思うのだ。




【俺が、私が 我慢をすれば………】




断言しよう。 そんなのは間違いである!


何故"仲間"と言っておきながら一人が我慢を強いられるのか、そんなのはただの"ごっこ"遊びだ。時と場合では仕方がない?それが普通? 普通なんてもの誰が決めた? 人ではないか。言っておく、"普通は変えられるのだ" 例えば、今現在のコミュニケーションツールが手紙や携帯からスマホに変わったように、また、俺の世界が、ぼっちから3人に変わったように……変えられるのである。




これは推測ではあるが、恐らく仁井園がタカくんについて、強く出られない原因は"共通の友人"だろう。しかも、その共通の友人達は、タカくん側についている可能性が高い。じゃなければ既に仁井園はそっちに相談をしているはずだからだ。


それが、一人で悩み、俺に言ってきたと言うことは、心持ち的にも限界が近いのである。


ならば……俺は"友人"として、仁井園の友人達に立ち向かわなければならない。


何故なら、仁井園が"今"を壊したくないと考えているように、俺もまた、俺の"今"を守りたいからである―――


まぁ、守るのって超怖いんですけどね……



「それで………ねぇ、どうしたらいいと思う?」


「……そうだな、とりあえず、次電話きたら俺がとるわ」


「……は?………え?」



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