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第5話 バッドエンドとは、考え方や捉え方次第で"まし"になる。

昼休み、俺は神城に呼ばれ、中庭で話をする事になった。中庭には、2羽鶏がいたりはしないけども、成功者(笑)達がこぞってそこで昼食をとり、あ~ん、とかしている。今すぐそのミートボールの刺さったフォークを奪いさって、遠くに投げ飛ばしたい。ぐぬぬ…羨ましい……っ!と、現実逃避はここまでにして本題に入ろう。


神城を見る限り、わりと普通そうだし、先程見た目も、今じゃ赤みは消え、綺麗な瞳になっている。神城は適当にベンチに座ると、その隣をぺんぺんと二回叩いた。どうやらここに座れと言いたいらしい。俺は指示されるままにそこに腰を下ろす。少しだけ訪れる沈黙……。


…………。


温かな風が吹き、周りの談笑がざわざわと聞こえる。こうしていると、さっきまでの事が、無かったかのように感じる。……いやまぁ、無くなったりはしないんだけど…。俺がこんな風に思っていると、神城はグッと両腕を伸ばして伸びをして、ふぅ~っと息をはき、話を始めた。


「七五三田…」


「は、はい……」


神城の声に、ドキリとする。表情からは悪い結果ではなさそうだが、自分のやった事がやった事なだけに、責任を感じるし、場合によってはその場で土下座も覚悟しているっ!いや、本当。早く楽にしてくださいっ!お願いいたしますッ!俺が、こんな風に心の中で狼狽えていると、神城は靴を脱ぎ、「よいしょ」と言って、ベンチの上に正座をし、体をこちらへ向ける。何してんだ?と思っていると、彼女は、


「ありがとうございました」


と言って深々と頭を下げた。


「え……?は?いや……いやいやいや、や、やめろっ! 人がみてんだろうがっ!」


「へへへ、恥ずかしい?」


「あっ……! 当たり前だろっ! 頼むからやめてくれ!」


俺がそう言うと、神城はまた「よいしょ」と言って普通に座り直す。まじで恥ずかしかった、なんなの?どうしていいか分かんなくなるだろうがっ!でも、まぁ……


「その、うまい事いったのか…?」


神城にそう聞くと、彼女は「うーん…」と悩んで、俺に言う。


「結果的には、バッドエンド…なのかな?」


「え……?」


この「え?」は、フォントサイズ変えられるなら5倍くらいデカくしておきたいくらいの「え?」である。って言うかバッドエンドって……


「あの、それってどう言う……」


「あぁ、うん、何て言うか、結果としては…真理子達のグループからは、ぬけちゃったって事……かな?」


ぇぇぇえええっ……!?いや、これは俺やらかしすぎたろう。最悪の結果じゃねぇか!


「マジか……」


何がマジか…だよ、ごめんなさいだろうがっ!うわああああっ!やらかしたっ!くそっ!マジでやらかした……っ!


「でもね、たぶんこれで良かったと思うんだ」


「…………へ?」


「えへへ…」


神城は柔らかく笑う。なにそれ可愛い、とかいってる場合じゃない!


「その、なんかごめん……マジで調子のったと思う…」


俺の謝罪を聞いて、神城は目を丸くし、両手をふりふりとして、違う違うと否定する。


「七五三田、君は勘違いをしているよ」


「いや……勘違いもクソもないだろう…俺のせいで最悪の結果になっ…… 」

「違うってば!」


神城の強い言葉に驚いて、俺は沈黙する。すると神城は、


「違う、違うんだよ? 七五三田がさ、私が立ち尽くしている時に声をあげてくれたでしょ、たぶんあの時、思っちゃったんだ、嗚呼、私の居場所は…ここだけじゃないんだって、新しい環境、新しい生活の為に、そのグループにいただけなんだって…だからね、すごく、すごーく、嬉しかったよ?周りの人がどう思うかなんて関係ないし、こう言うのが嫌な子だっているかもしれない、それでも、私はすごく嬉しかった。一人じゃないんだって思えた…。だから、真理子達に全部言ったんだ、私が思っている事、聞いたんだ、真理子達が思っている事、それで話し込んでたら二時間くらいたっちゃってたよ、ははは…それに、これは別に悲しい終わり方なんかじゃない…話しかけたらちゃんと話をしてくれるって皆言ってくれたしね…」


神城は、何かを思うように目を瞑る…瞬間、俺と神城の隙間を、一陣の風が吹き抜け、神城は目を開く―――。



「だから、"ありがとう"なんだよ」


そう言って、ニッと笑う。たぶん、この時に見た笑顔が、俺の知る神城の笑顔の中で、一番輝いていたと思う。


「そっか……」


「うん、そうだよ!」


……ん?でも待てよ、じゃあ神城はぼっちになってしまうんじゃ…?


「……なぁ、つーかそれだとおまえぼっちにならね…?」


「そうだよー、だからお昼ご飯に七五三田を誘ったんじゃん」


「あ…そう言う……」


俺はそう呟きながら、持ってきたパンに視線を落とす。すると、


「七五三田…!」


神城に名前を呼ばれ、俺は改めてそちらを向いた。瞬間、神城はグッと俺の耳元に顔を寄せる……!


「?!」


そして神城は、俺の耳元でこう囁くのだ。


「責任、取ってよね…!」


「―――ッ?!」


あざとい…!だが、俺はだまされない、これは神城の仕様なのだ。いや、本当。ちょっとゾクッとしただけだし、ドキッとはしてないし、本当だし……っ!


もう一回やってくんねぇかな…?










次回『第6話発言は、計画的に。』


5月20日 12時更新となります❗(。・ω・。)きゅぴーん✨

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