第56話 世の中は、思った以上に予想外が多くある。
【七五三田 悠莉】
神城宅へのお泊まりも終わり、学校も再開してから一月ほどが過ぎた。季節は秋へと代わり、衣替えの時期である。かく言うウチの学校も衣替えであり、ウチの珍しいところは、基本ブレザーなのだが、指定のパーカーがあるのは珍しいところではないだろうか?ちなみに色は紺である。そんな学校指定のパーカーに身を包み、先程から神城が俺へとちょっかいをかけてきている。
「……ふふふ」
「……。」
「えい!」
「いてっ…おまえシャーペンで後ろから指すなよ」
「えへへ、だって七五三田が前にいるんだもん、なんか新鮮♪」
さて、お気づきの方もおられると思うのだが、席替えがありました。隣にいた神城が俺の後ろへとやってきて……
「アンタ達うるさいんだけど」
なんと仁井園さんがお隣へ、なにか陰謀めたものを感じる…。いやまぁ、くじ引きで決まったんだけどね…。さて、白野 咲来の件に関しては、俺は今、考えないようにしている。これは断じて逃げではなく、実際に会っていないし、もし会ったとしてきっと気まずく感じてしまうのではないか?と、考えたからだ。ならばそれはまた、そう言う機会に考えればよいじゃないかと思ったからである。少しだけ前の自分と比べると、楽天的と言うか、ポジティブになれているような気がする。
まぁ、それもきっと、近くにこの二人がいてくれているからなのではないだろうか?
***
【仁井園 真理子】
……気になる。最近、七五三田と美羽の二人がたまに話をしている内容が気になる……。この間も、二人でなんか"桜"がどうのと言う話をしていた。二人で花見でもするのだろうか?いや……でも…
そんなことを考えていると、美羽から声をかけられた。
「真理子、次体育だから一緒に行こ」
「……え、あー、うん」
「?」
「なに?」
「いや、なんか真理子、最近考え事してること多くない?」
「そ、そう?気のせいじゃない?」
「そうかな? 今もなんかそんな感じだったし」
アンタと七五三田のことが気になるからだってーの! お泊まりなんて……何かあったのかな?
「ねぇ、美羽」
「この間七五三田が泊まったとき、なんかあった……?」
「え?……あー………その、なにもなかった訳じゃないんだけど…」
「なにかあったの!?」
やば、自分でもびっくりするくらい大きな声出た。
「び、びっくりした…」
「ご、ごめん…その、まぁ、な、なにがあったわけ?」
「え?……うん……」
歯切れが悪い……まさか、もうすでに美羽が心の内を七五三田に伝えたとか?そしてそれがうまくいったとか!?やばい、考えれば考えるほど、負のドツボにはまっていく気がする……。
「や、やっぱいい」
「え、うん、わかった」
引かないでよ! ちょっとは言いたいとか思いなさいよ! アンタ達もう付き合いだしたの!? それならなんで言ってくれないのよ!
「やっぱあたし一人でいく」
「え!? なんで!?」
「知らない」
「なんで怒ってるの?!」
***
【神城 美羽】
真理子の機嫌が悪くなってしまった…。でも、七五三田の問題だから、勝手に話して良いものかわからないし……困ったなぁ…。
「はぁ…」
私がため息をつくと、隣で手を洗っていた夢ちゃんが声をかけてくる。
「あの……なにかあったんですか?」
「え?……いや、別に……………」
私は、そう呟いてすぐに
「ねぇ夢ちゃん」
「はい?…」
***
結局、話をしたくて夢ちゃんと一緒に帰ることに。誘ったとき、少し驚かれてしまった…。それから、私達は近くのカフェへ入る。
「あの……お話って……」
「あ、うん、あのね、その、友達の………友達のことなんだけど…」
「……? はぁ…?」
「夢ちゃんは、もし友達になにか問題って言うか悩みがあるとして、それをもう一人の友達に相談するのって、どう思うかな?」
「えと……友達の……ああ、なるほど」
良かった、理解してもらえた。
「私は……内容にもよるとは思いますが、それが良い方向へむかうのであれば、するかもしれません…」
「えと、その悩んでる方の許可がなくても?」
「え?許可がないならしませんよ、でも、それが明らかに一人で抱え込んでいるようなら、わからないけど……やっぱりするかもしれません」
「そんなことして、嫌われちゃわないかな?」
「……どうだろ……難しいですが、私は好きな友人のために嫌われるなら、それは仕方ないのかな……って思います。すみません、他人事みたいに」
「え!? いやいや、うん…そっか……そうだよね、別に仲間外れにしたいわけじゃないんだけど……真理子が機嫌悪くなっちゃって……」
「あー……七五三田くんの件でしたか」
「え、なんでわかったの!?」
「いや、お二人が関わってるのって七五三田くんなので…」
「そっか……うん、ちょっと七五三田に悩みがあるみたいで……どうにかしてあげたいんだけど……なんか、難しくてさ…最近無理矢理それを考えないようにしてるように見えるし……私になんかできることってないかなぁ……」
私はそう言ってテーブルに突っ伏すと、夢ちゃんが「ふふふ」と笑う。
「なに?」
「いや、すみません、美羽さんって、七五三田くんのこと好きなんですか?」
急に言われ、あわてて
「え!? なんで!?」
と聞き返す。すると、夢ちゃんは
「だってすごく七五三田くんのことで悩んでるから」
とまた笑顔でそう言った。
***
【七五三田 悠莉】
学校から帰宅し、自室へと向かう。途中、菜衣子が
「悠莉くん! 今日のおやつホットケーキだって!」
と、嬉しそうに謎の報告をしてくる。
「そうか……菜衣子」
「なに?」
「咲来………その、アイツは昔の家に帰ってきたんだろうか?」
「……知らない、でも私通学路の途中だからたまに見るけど、人はいない感じなんだよね」
「そうか……つか、何年空き家やってんだよあそこ…」
「ねぇー」
他愛ない会話を終わらせ、自室へと入る。そして鞄を適当におき、スマホを取り出す。すると、一件、LINEが来ていることに気づいた。
「……誰だ…? ……*sakura*さんが画像を投稿しました。………さくら…画像…?」
俺はハッとして、あわててメッセージを開く。そこには、昔、白野 咲来のいなくなる前日、一緒に遊んだボードゲームと、丸字でかかれた『ただいま』のメモ紙が添えられていた――――。
***
【白野 咲来】
―――何年ぶりだろうか? 沢山嫌な思いをした町。
沢山いろんな事があった町。
またここに戻ってきた……。
コンコン……ドアがノックされる。
「はい」
「白野さん、具合はどうですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「そうですか、学校に通い始めたって聞いたから、良くなったのかと思ったけど…」
看護師さんに言われ、私は苦笑する。
「ははは、そうなんでけどね……また、戻ってきちゃいました」
「本当ですよ! でも、無理はダメですよ?」
「はい、気を付けます」
私は今、病院にいる。 原因のわからない病気により、たまに貧血を起こしたり、胸がいたくなったりしてしまうためだ。医者が言うには、私の心臓が人より小さいことに理由があるかもしれないとの事だ。
そんな私は……ろくに学校にも通えず、幼馴染みとまともにお別れもできず、何も楽しい"青春"と言うものを経験していない……友達もいないしなぁ……だから……今で言う非リアと言う人種になるのではないだろうか?
ちょっと違うかな…病人だし……でもまぁ、だから、そんな非リアな私は、憧れている。青春と言うセカイに――――――。
学校で楽しんだり、恋をしたり……笑ったり、泣いたり…協力したり……そんなセカイを求めている――――――。
看護師さんが出ていったあと、病室の窓から楽しそうに下校する同い年くらいの子を見て、私は呟く。
「いいなぁ……悠莉、見てくれたかな?」
【非リアの求める青春の在り方。】
更新が遅い中、いつも読んでくれてありがとうございます❗(o・ω・o)きゅぴ~ん✨
さて、タイトル回収までやってきました。今年はこれが最後の更新となります。皆様がよいお年を迎えられますように❗
………仕事してくるか…。おうちかえりたい




