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第53話 人の話を集中して聞くのは意外と難しかったりする。

「………いや、いやいや、殺されるって大袈裟すぎんだろ」


「………まぁ、普通はそう思うよな、でも、ガチなんだよ」


そう言うと九十九は真剣な眼差しをこちらへと向けた。


「七五三田くんは、その、伯李の性格をどのくらい知ってる?」


そうですね、まず自分の都合の良いように動かない人間は必ず潰しにいくのは知っていますね、また、自分の容姿を武器にゴツめの男をタブラかし、ムカつく相手にけしかけたり、ちょっと反論したらすぐにハブるとかですかね?………これ言って良いのかね……?


「まぁ、ある程度……」


言えませんでした。だって九十九くんあれなんだもん、絶対橘サイドだもの。ここで批判して急にブチキレたらどうすんの?だって今普通のイケメンなんだよ?でも"あの"橘 伯李と友人っぽいんだよ!? 一癖二癖あるんじゃないかと疑うのが普通だろ。


「………そうか」


九十九はそう呟くと、大きく息を吸ってはきだし、こう言う。


「まぁ、改めて言うのもなんだけど、伯李は…………その、正直、クズなんだ………」


知ってます。


そう言うと九十九は頭を抱えた。てかあぶねぇ、咄嗟に即答しちゃいそうだったよ


「ただ、もともとはそんなヤツじゃなかったんだ…親の離婚から大きく変わってしまった……俺は伯李とは幼なじみなんだが、アイツ小学校高学年になるくらいに転校してさ、それでもたまにアイツの家に遊びにいったりしてたんだよ……でも、なんか中学に上がったくらいの時……アイツに『つぐみは今はいらないから、もう来なくて良いよ』って言われて追い返されたんだ。もちろん、俺は納得できないから理由を聞いたよ、でも……」


「答えてくれなかったのか」


「ああ、それから何度かいくが、家にいることはなかったよ……ひょっとしたら、居留守つかわれてたのかもな」


「そこまでされているなら、別に関わらなくて良いんじゃないのか?」


俺がそう言うと、九十九は少し黙ってから、言いづらそうに


「その、初恋なんだ、伯李は」


「……………そうか、良い思い出だったな、だが人間切り替えが大事だぞ、ほら、スポーツ選手とかもいってるだろ、負けたら次の試合に頭を切り替えてって」


「ひどっ!?…いや、酷いな七五三田くん……まぁ、そうなんだけど、なんか…やっぱ忘れられなくてさ…そしたら高校で再会したんだよ、ちょっと運命感じるだろ!?」


……九十九のそれは、ただの理想だ。人間漫画やドラマのようなシチュエーションをどこかで夢見ているものだ、それが現実に近しい状態で現れたからと言って、漫画やドラマのようにハッピーエンドに辿り着けるかと言ったら、そううまくはいかない。なぜなら、それは現実であり、"台本"等存在しないからだ。もし、この九十九と言う男が、そう言った理想を描いていて、ハッピーエンドをつかみとりたいのであれば、ドラマや漫画なんかじゃ足りないくらいの努力がいることだろう。


「まぁ、あれだな、それでアンタはどうしたいんだよ」


「俺は伯李に幸せになってほしいんだ!……再会したのに、その再会の仕方も最悪だった…もともと俺は伯李がこの学校にいるなんて知らなかったんだけど、ある日学校で"あくじょめがみ"と呼ばれている人物の噂が耳に入ったんだ。なんでも見た目は可愛らしいのに、かなり悪い女らしいと言うのでその子はそう呼ばれていた、しかも、その悪女にやられた奴等の"被害者の会"まで存在していると言うんだ……」


その被害者の会はどうしたら入れるのだろうか……。そんなことを考えていると九十九は話を続ける。


「そして、ある時、一緒に歩いていた友達があれが噂の悪女だと教えてくれた……」


「それが橘 伯李だったわけか」


「ああ、正直驚いたよ、それに何故、伯李がみんなに悪女何て呼ばれているのか知りたくなった。だから俺は伯李に普通に声をかけたよ……中学に上がる頃の事も聞きたかったし…でも、無視されるんだ…挨拶しても、肩を叩いても、全部無視だ……。そして、その日も階段の踊り場で声をかけた」


………やばい、一生懸命話してくれてるのは分かるのだが、無視されつづけても攻めの姿勢を崩さないコイツのメンタルまじすげぇなっとか思っちゃう。よし、内容に集中しよう。


「それで、声をかけようとしたときだ、伯李が突き飛ばされて、俺のいたほうに倒れそうになった、俺は咄嗟に伯李を捕まえて落ちずにはすんだんだけど……」


「それで殺されそうになったってことか」


「ああ、まぁ、それでさすがに伯李も無視できなくなったんだろう……いろいろ話を聞いたんだよ、そしたら……思っていた以上に酷いことをしていたんだ……他人に対して……しかも、彼女はそれを正当化しようとしていた。だから…みんなに謝りに行こうって話をしてたら……」


「うざがって逃げ出したのか………」


「まぁ、そんなとこだ……」


この、九十九 ツグミ も言う人物は、思ったよりまともらしい。ただ、そんな話を聞いたとこで、他校である俺にはなにも出来ない……。俺が答えに悩んでいると


「はぁ………なんかごめんな、君にこんな話して……吐き出すところがほしかったのかもしれない」


「……まぁ、なんだ……俺にはなにも出来ないが、スッキリしたなら良かったな」


「ああ、そうだ、七五三田くん、これを期に友達になってくれないか! 俺友達少なくてさ! LINE交換しよう!」


え、何言ってんのこの人。すごいナチュラルにLINEきいてきたじゃん。あと、なんで俺ちょっと嬉しさみたいの感じてんだ。とか思いながら俺はスマホを取り出す。正直、また橘に絡まれたときに力になってくれそうだと思ったりもするからだが……。


「まぁ、それはお互い様か……」


俺が呟くと、九十九は少し首をかしげた。


「?」


そんなことをしていると、女子二人が戻ってくる。ジュース買ってくるのにどんだけ時間かけてんだ………ん? あれ? 女子二人じゃないねアレ………三人?


そして近づくにつれてもう一人の顔がはっきりと見える。





――――木乃葉(このは) ひとひら……っ!?




牡蠣小屋でバイトした際の年下の先輩である。なぜこの美人海女がここにいるのか……。そんなことを考えていると、ひとひらは俺に気付き


「え、悠莉じゃん!」


と言って駆け足になり、「ドーン」と言いながら抱きついてくる。


「超久しぶりじゃん! 元気だったか悠莉! にしし」


と、悪のりして俺の頭をなで回す。


「いや、ちょっ…! や、やめろ! つかなんでいるんだよっ!」


俺は頭を撫でられるのを回避するため、ひとひらを自分から引き離す。


それから、ふと、神城と橘の方に視線を向けると、驚いた顔をした神城がつかつかとこちらへやって来る。その顔は何故か徐々にほほを膨らませていく。そして、


「私もする」


と言って何故か怒りながら俺の頭を撫でようとする。いや、マジでなんでだよ。


てか、次から次に知人に会いすぎだろ。なに?そう言う日なの?くそっ!アイス絶対だめだわ……






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