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第51話 友達の定義なんてものは、人それぞれである。

――――橘 伯李………こいつマジか。何があったかは知らないが、こいつにやられたことを思うと、正直知ったこっちゃないと思ってしまうのだが、今は神城も一緒だし、この目の前に立つ男もどんなヤツなのかはわからない。


そう考えると、俺の出来ることは限られてくる。ってかマジでなんでいるんだこいつ。くそっ! せっかく心も落ち着いてきた感じだったのに……っ! そんな事を考えていると、目の前の男が近寄ってくる。橘は、それを俺の後ろに隠れながら「なに!? こっち来ないで!」とか言っている。俺はどうしたものかと思いながら神城を見ると、神城は橘 伯李を驚いた顔で見ていた。まぁ、でしょうね。いきなりコイツに出くわすなんて絶対思わないしな……。


この状況を見て、俺はとりあえず、橘を庇うようにして


「あの、なんなんですかね?」


と、男に聞いてみる。理由は後から橘から聞けばいいだろう。教えてくれなそうだけどな……


近くに来ると分かったのだが、男は、この間いた面子の中にはいなかったヤツのようだ。身長は170後半?くらいで、体型はいたって普通である。橘のつるむ人間にしては、いたって普通……と言うか、ヤンチャな感じには見えない。むしろ黒髪短髪のイケメンに見える。ってなにコイツもイケメンなの?なんなの?同じ黒髪なのに、どうしてこうも俺とスペックが違うんだよ、神様は二物を与えすぎだ!とかやってる場合ではない……


「………ごめん、退いてくれないか? 俺は伯李と話がしたいんだ。君は伯李のなんなんだ?」


「え……」


男に問われ、解答につまる。だって俺こいつのなんなんだよ。友達なんて絶対に有り得ないし、正直知人だともいいたくない。顔見知り?えっと……とか考えていると、橘 伯李はいけしゃあしゃあと


「友達! つぐみより付き合い濃いからっ!」


とか言い出す。おいおい、何言ってんのこの人。確かにおまえには濃い思い出作らされたけどな、決して良い意味の濃いじゃないからなっ!いいかげんにしろよこの隠れヤンキー(?)!……大丈夫。自分でも何言ってんのかわかんないから。なんだ隠れヤンキーって。


「えと、その、話が見えないんだけど…なんなんすかね? アイス溶けちゃうんですけど」


俺が言うと、男は


「え? あ、ああ、ごめん、俺も君とそこの彼女の邪魔をしたい訳じゃないんだ、伯李をこっちに渡してくれないか?」


「か、彼女……」


いや神城さん?なに変なとこ食いついてんですかね?今それどころじゃなくない?にしても、これじゃらちが明かない。菜衣子と神城にはまた後でアイスを買ってやろうと思い、俺は場所を代えることを提案する。すると後ろに隠れていた橘も承諾し、コンビニの近くの公園へと向かった―――。



***


【橘 伯李】


――――この世界は弱者と強者に別れきっている。


弱者は強者にはかなわない。私は幼い頃からそれを知っている。私の父は個人で会社を経営していた。小さな会社だったが、生活に困ったことはなかった。しかし、ある日うちの会社は潰れた。いや、潰されたのだ。大手のメーカーが近くに来たことにより、うちの会社のお客さん達は流れてしまった。それは本当にあっという間だった。


会社が潰れると、父は働かなくなった。きっと今まで上にいたので、プライドとかで人の下につきたくなかったのだろう。しかし、生活がある、しばらくして、仕方なく町工場で父は働き始めたが、ストレスから酒に溺れ、母と喧嘩をする日々が増えていった。


そして、うちの家族は壊れた。


父と母が離婚をした時、私は寂しいとか悲しいとかも思わなくはなかったが、何よりその大手会社の圧倒的力を痛感していた。強者とは、こんなにも簡単に、人の生活を壊してしまうのだ。


ならば、私は弱者なんかではいられない。今後、こんな気持ちにならないためにも、自分が強者であり、周りを強者で固めるべきなのだ。そうすればどうだろう?


ほら、無敵の精神要塞の完成だ―――。


そう考えた私は、引っ越しの日、父が見送るなか、母に連れられ、"笑顔"で手を降って家を離れた。


***


【七五三田 悠莉】



公園へとやってきた………やってきたのだが、何故俺はこの男と二人でベンチに座っているのだろうか?……いやまぁ、橘が飲み物買ってくるとかいって、何故か神城を連れていっちゃったからなんですけどね……てか大丈夫なのかあの二人……。そんな事を思っていると、男が口を開く。


「俺は九十九(つくも) つぐみ、君の名前は?」


「………七五三田、七五三田 悠莉…」


「君が七五三田くんか……」


え? なに?なんで俺の事知ってるの?とうとう俺もここまで来たか……ってなにかした心当たりなんもないんだけど…。つか、九十九なんて知らないし


「……はは、なんで知ってるんだ?って顔してるな」


「………いや、普通にそう思うでしょ…」


「……七五三田くん、敬語はいいよ、同い年だから」


「………は?」


え、俺敬語使ってた?……くそっ!年上じゃねぇのかよ!じゃあなんでそんな爽やかイケメンなんですかね?無意識に年上だと思っちゃっただろうがっ! 少女漫画のヒーローみたいななりしやがって! なに?こいつ風早くんなの?君に届くの?


「い、いや別に意識して敬語とか使ってねぇし、初対面に敬語なんて大人の世界じゃ当たり前なんだよ、俺はちゃんと親に仕付けられてるからモラルをつらぬいただけなの、決しておまえなんかに劣っていると思った訳ではないし、年上なんじゃないかなんて思ってないからな!」(早口)


「……はは、そうか」


ニコッ☆ じゃねぇよ!くっそ!勝てる気がしねぇ!あとマジでなんで俺の事しってるような口ぶりなんだよ!

















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