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第50話 偶然とは、運命なんて言葉では片付けられない必然である。

【七五三田 悠莉】


風呂をいただき、食事を済ませ、俺達はリビングでトランプを行う。菜衣子はソファーに座り、俺と神城はそれぞれ向かいあわせで座る。ババ抜きをしているため、テーブルを囲むような形で相手に手札が見えないようにしている。………のだが、俺は今、眼前の敵の手札よりも気になるものがある……それは、神城の格好である。風呂あがりの彼女は、パステルカラーのなんか、モコモコとした部屋着を着用しているのだが、ちょっとそれ胸元緩くないですかね?俺のカード引こうとするたびに凄まじい魔力でそちらへと視線持っていかれそうになるんですが、これはなに? やっぱ魔法なの?


「……悠莉くん、なんでみうちゃんがカード引こうとするたびにこっち見るの……?」


おおふ、恐らくおとなえさんは俺が意識的に視線をそらしてることにうすうす感づいているのだろう…。


「いや、なんだ……その、じょ……女子が近すぎると、なんかあれだろ…っ!」


「え? そんな近いかな? ごめんね、でもお風呂あとだから臭いとかはないと思うんだけど?」


そう言いながら、カードを引き終えた神城は座り直し、自分の腕の辺りをくんくん嗅いでみる。いや、大丈夫。むしろ良い匂いだから、ただもうちょっと……とか考えていると、おとなえさんは確信したらしく。


「……悠莉くん、それ逆に気持ち悪いからやめたほうがいいよ」


とこぼした。神城は頭に「?」を浮かべている様子だ。


「……お、おう」


まぁね、所詮は脂肪の塊ですよ、なんだったらうちの母にも妹…はまぁあれだが、ついてるものですよ、そう考えたらなに? 当たり前なんだからなんとも思わないと言うかですね…と、また神城の番が回ってくる。そして俺のカードに手を伸ばす。揺れ…!


―――そうこうしてトランプにも飽きてきた頃、神城が


「冷たいもの食べたいね」


と言ってきた。まぁ確かに、夏も終盤とは言えまだ少し暑くはある。俺もそれに同意すると、神城は冷蔵庫へと向かった。


それからすぐに戻ってきて、「何もなかったから、コンビニ行ってくるよ」と言い、部屋へと戻ろうとした為、俺は


「ああ、世話になりっぱなしもあれだし、俺行ってくるぞ?」


俺がそう言うと、菜衣子も「じゃあ私も!」とか言い出すのではないかと思ったが、


「じゃあ悠莉くん、私いつものね!」


と、完全にテレビに夢中である。と言うことで、着替えた神城も戻ってきて、コンビニへと向かう。神城の家からだと徒歩4~5分と行ったところか? 外に出ると、神城は


「まだ外はあついねぇ」


「そうだな、残暑ってやつだろうな」


「来週からまた学校だね」


「……おう」


「ねぇ七五三田……」


「ん? なんだ?」


「…その……真理子との花火……どうだった?」


「え?花火?」


そう返しながら、ふと恥ずかしいあの瞬間を思い出す。


「ま、まぁ、普通に良かったぞ?」


「そっか…」


どうしてだろうか? なんかその言葉に違和感を覚えた。


「……そういや、仁井園はなんでおまえを……」


誘わなかったのだろうか?そう聞こうとした瞬間、後ろから自転車が来たことに気づき、自転車側にいる神城の腕を咄嗟にひく。


「わっ!?」


神城が驚いた後、自転車はすぐに神城の横を過ぎていった。


「……あぶな…大丈夫か?」


「だ、大丈夫、ありがとう……」


何故かうつ向いている神城を見て、俺は一瞬不思議に思うが、すぐに神城は歩き始めた。


「さ、さ、いこいこ」


「?」


そんな感じでコンビニへと入る。


「七五三田、アイスってどんなのが好き?」


「……普通の」


「普通のって」


そう呟いてクスクスと笑う。確かに、普通のって人によって何が普通なのかわからない感じではあるが、そんなことを考えていると、神城はイチゴ味のアイスを手に取った。


「あ、それ菜衣子の言う"いつもの"と一緒だぞ」


「え? そうなの? ふふ、じゃあなえちゃんもこれでいいかな?」


「ああ」


そんな話をしながら、俺も適当にチョコのモナカアイスを手に取った。


「七五三田の普通ってそれなの?」


「……え? ああ、まあ、そうだな、わりとこれ食べるわ」


「へぇ……」


そしれから、二人でレジへと行く。先に俺が行き、神城の持ってるアイスも一緒に出してもらう。


「一緒で」


俺がそう言うと、神城は


「え!? 悪いよ、出すよ!」


と言うが、ここは世話になってる分返させてもらいたいところだ。


「いや、いいよ」


そう言って半ば強引に俺は会計を済ませる。コンビニを出ると、すぐに神城が


「ごめんね、ありがとう」


と言ってきた。


「いや、おまえアイスくらいで何いってんだ」


「だって!」


「ま、いいからいいから、ほら、俺はおまえと違って金あんま使わないし」


「え? なんで?」


「いやほら、俺友達とかいないし…」


「あ……」


この一言で察していただけたらしい。それから夜道を歩いていると、何やら少し先の方で女の人が男の人の腕を振りほどき、文句をいっている姿を見つけた。


「………してっ!」


「………だ……から!」


近づくにつれ、その姿がはっきりと見え、声も鮮明になってくる。


「離してっ! つぐみはいつもそう! 私に関わんないでよっ!」


「……くりっ! ちゃんと謝った方がいいって!」


すると、女性が此方に気づき、今一度捕まれた腕を振りほどくと、俺達の方へと走ってきた。そして、その女の姿をハッキリと確認した瞬間、俺は体が強張る。


そして、女は俺の後ろに隠れ、男に言うのだ。


「こいつが、アンタなんかぼこぼこにするからっ!!」


いや、何言ってんのこの人。つか、なんでこんな所にいるんだよ………。



橘 伯李………。

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