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第46話 希望の数だけ失望が生まれ、期待の数だけ裏切りが増えると言うが、逆説的に言えばプラスにもなる。

「……落ち着いた?」


「……いや、そんな号泣はしてないだろ」


謎の涙が止まり、仁井園にそれをいじられる。


「つか、アンタも泣いたりするんだね」


「……どういう意味だよ」


「いや、別に? アンタって、人にどう思われてるかとか気にしてない感じだったから、正直泣くとか想像つかなかったって言うか…まぁ、タイミングは意味不明だけどね」


そう言って仁井園は困ったように笑う。


「いや、実際俺が一番ビックリしてるからな…ほんと、人前で泣くとか……幼稚園依頼だわ……超はず…」


俺がしゃべっていると、仁井園が急に俺の顔を覗きこんでくる。ってちかっ! やめろ! メンズの見られたら嫌な所ランキングでも恐らく上位に入っているであろう"泣き顔"を見るとかデリカシーどこに置いてきたの? 玄関? ねぇ玄関なの? だったら早く持ってきて!


「って、ちょ! 見んなよ!」


俺は慌てて顔をそらし、片手で仁井園の顔を軽く押す。


「えー、だってその顔は美羽も見てないんでしょ? だったら先にしっかり見とこうと思ったの!」


「いや、なんでそこで神城出てくんだよ…関係ねぇだろ…」


「まぁ、アンタにはわかんないだろうね」


「は? なにがだよ」


「べっつにー……落ち着いたなら、帰ろうか?」


「……そうだな」


そう言って俺達は歩き出す。途中、恥ずかしさから俺は



「悪いな、みっともないとこ見せて」


と仁井園に言った。しかし、仁井園は


「え? なんで?」


「いや、男が泣くとか…なんか、あれじゃん」


「は?意味分かんない。 人間なんだから男も泣くでしょ、泣いちゃいけないとか誰が決めたわけ? それに、あたしはそれをみっともないとか思わないし、泣きたいなら泣きゃいいでしょ、その時そばにいたら、慰めるくらいしてやるってーの」


そう言ってから仁井園は「ん~…!」と伸びをする。そして「はぁー」と息をはくと、首を左右に動かし


「浴衣って肩こるわー」


と独り言をこぼす。俺はその様子を見て、安心感のようなものを感じていた。きっとこれが、友人との関係性と言うヤツなのだろう。遠い昔に置いてきて、避け続けたその心地好さを、今になって、俺は知ったのだった。


***


「悠莉くん! 悠莉くんってば!」


分かってる。これはマイシスターの声である。昨夜花火を見てから仁井園を送り届けたあと、俺はなんとなくソファーでテレビを見ていたら、ウトウトとし、眠ってしまったのだ。昔、それこそ俺が3歳くらいならば、きっと母か父が俺を抱き抱え、部屋の布団へと寝かせてくれたのだろう。しかし、現在は高校生。さすがにそんな甘いことはなく、なんだったら誰も起こしてくれなかった感じである。


(さて……起きるか……)


「悠莉くん! みうちゃんから明後日の連絡きたよ!」


そう言って菜衣子は自分のキッズケータイの画面を俺に見せてくる。そこには


『なえちゃん、予定通りで大丈夫だよ!美味しいご飯つくってあげるから、楽しみにしてててね!(о´∀`о)』


と、神城からのメッセージが表示されていた。つか、"楽しみにしてててね"って、一個"て"が多いのが気になる。しかも実際口にだそうとすると恐ろしく言いづらい。まぁどうでもいいんだけど……そんな風に思い、俺はソファーから体をお越し、座り直す。


「てかさ……俺マジで行っていいんだろうか?」


「え? なにが?」


「いや、泊まりだよ」


「なんで? みうちゃんがせっかく呼んでくれたんじゃん!」


「いや、まぁそうなんだけど……なんつーか、年頃の男女がってのは、どうなんだろう…的な?」


「……え、悠莉くん、何言ってるの? 私も行くんだよ? 万が一……億……いや、兆が一にも悠莉くんが妄想してるような事はないよ、てか、実兄がそんな事考えてるとかキモい……」


おぉぅ……それは深読みのしすぎですよおとなえさん、良いですか?私はですね、倫理的かつ世間的に見ての意見として今の発言をしたのであって、決してやましい気持ちとか20%くらいしかなかったですからね?いやほんとに。………ごめん、嘘。ちょっと期待したかもしれないです。


「……おとなえさん、ませすぎですよ」


「もう! あだ名で呼ばないでよっ!」



***



――――3日後


――ピンポーン


「はーい」


チャイムをならすと、中から神城の声が聞こえる。


「んふふ♪」


隣にたつ菜衣子はお気に入りのリュックを背負い、ニッコニコで神城を待ち構えている。ちなみに、このリュックの中身はお菓子とかである。……つか、なんか人生ゲームみたいなのがはみ出てんだけど…なに? コイツどんだけ遊び倒す気なの? 我が妹ながら、自重してほしいところである。はしゃぎですよおとなえさん。


そして、間もなく扉が開かれた。


「いらっしゃい七五三田、なえちゃん!」


「おお、てか、どっちも七五三田なんだけど」


俺がそう言うと、神城は「あはは」と笑い


「確かにそうだね!」と言いながら俺達を招き入れた。


「おじゃましまーす! わぁー! みうちゃんち良い匂い!」


と言いながらマイシスターが上がり込む。


「えへへ、そうかな?」


と笑う神城に、とりあえず


「悪いな、アイツすごい楽しみにしててさ」


と言っておく。俺今超お兄ちゃんしてる。


「いいよいいよ! 私も楽しみだったし」


「……そうか」


「うん!」


そんな話をしていると、リビングの扉が開かれ、見知らぬ美人が現れた。


「あら、いらっしゃい」


「あ、おじゃまします!」


菜衣子は普通に挨拶を返す。てかこの人誰だよ、何この巨乳美人……


「神城……おまえ今日母ちゃんいたの?」


俺がそう言うと、神城は


「へ?ちがうよー」


と笑い、今日1の衝撃発言をする。


「あれはおばあちゃん! もー七五三田なにいってんの? あはは」


いや、おまえが何いってんの?こればあちゃんとか嘘でしょ…何?おまえん家年取らない仕様なの?サザエさん的なあれなの?それともヴァンパイアかな?


「マジか……」





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