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第42話 時と場合により、弁明と言うのは、すればするほど自分の立場を悪くする。

―――翌日。


午前中に簡単な検査を済ませ、病室へと戻る。ベッドへと腰掛け、テレビでも見ようかと電源へと手を伸ばすと、ガラガラ…と扉の開く音が聞こえた。


「……?」


(母さんが来るには少し早いし、誰だろうか…?)


そんな事を考えていると、その音の主はすぐに姿を表した。


「……悠莉くん…?」


不安そうな声、その声を聞いてすぐにそれが妹だと確信する。


「……いませんよ」


「いるじゃんっ!」


菜衣子は何故か両手に買い物袋をさげてやってきた。


「……なにそれ、なんでおまえそんないっぱい買い物してんの?」


「なんでじゃないよっ! もう! すごい心配したんだからねっ! 私不安で泣きそうだったんだからっ!」


「……そいつは悪かったな、でもこの通り、ピンピンしてる。ほら、俺強いから」


「……悠莉くんは強くはないよ、喧嘩って言ってもどうせ相手に一方的にやられたんでしょ?」


ぐっ……痛いところをついてくる…っ!


「ま、でも悠莉くんはそれでいいんだよ、悠莉くんは手を出してないんだよね?」


「まぁな…」


いや、手を出す以前に、もうボッコボコでした。何て言うか、レベル100の相手にレベル20くらいで挑んだぐらいボッコボコでした。RPGとかで言う負けイベントみたいだった。いやほんとに。……2周目で経験値10倍とかつけて絶対倒してやりたい。


「ならいいじゃん、相手は暴行罪に脅迫、その他もろもろの余罪もありそうだし、完全にこっちは被害者だもん、どうとでもなるよっ♪」


おいおい、笑顔で法律を意識した発言する小5って……お兄ちゃんはおまえの事ちょっと怖いよ……てか、こいつの旦那になるヤツとか絶対苦労するだろ……ド正論並べられて精神追い込まれそう………いや、でもまぁコイツ顔は可愛いからな。どんな男かお兄ちゃんもしっかり見極めなきゃなっ!…て話脱線しすぎた。


そんな事を考えていると、菜衣子が荷物を見舞い用の椅子に置き、何故かベッドに腰掛ける俺の隣へとわざわざ座った。


「……いや、椅子に座れよ」


「えー、いいじゃ~ん! 兄妹じゃ~ん」


「狭いんですがね…」


「えへへ、近いね♪」


………なに?なんなの?コイツ何企んでるんだよ…お兄ちゃん怖いよ、警戒しちゃうよ?それともなに?マジで心配からの甘えんぼさんなの?……え?マジなの?だとしたら可愛いとこもあるじゃないか、マイシスターよ。とか思っていると、急に菜衣子が


「ていっ」


と言って俺の脇腹をつつく。


「いてっ」


「へへへ~、昔よくこんな感じでじゃれたよね?」


ああ、じゃれた。まだコイツが幼稚園から小学生にジョブチェンジ(?)した時くらいまでよくやっていた。菜衣子がつついて、俺が堪え、何回もしてきたら"こしょぐりの刑"に処すのだ。だが、もうおまえも小学も高学年だ。こんな遊びなんてものは……


「ていっ! ていていっ!」


「……」


「ていっ!」


「いいかげんにしろよ、このやろう!」


「きゃーーーーっ!♪」


俺は菜衣子をベッドに押し倒し、上にまたがって昔と同じようにこしょぐりの刑をする。菜衣子はきゃっきゃ♪と笑い、俺は少し痛む体に頑張れと心のなかでエールを贈りながら、昔を思いだし、この懐かしい一時を―――――



―――――ドサッ…!


ん?今なんか落ちる音がした…? 音的に菜衣子の持ってきた買い物袋だろうか?と俺は妹を(くすぐ)る手を止め、振り返る。



するとそこには、呆然と立ち尽くす神城とめちゃくちゃドン引いたお顔をしていらっしゃる仁井園さんが立っていた。ってなんでこいつらいんの?てかなに人のハートフルな場面見てそんな顔してんだよ。と、俺はなんとなく菜衣子に目を向ける。


そこには、俺にこしょぐりの刑に処された為、服は乱れおへそを放り出し、はいていた短パンは少しだけずれて腰骨が見え、「はぁ…はぁ…」と息をあげて頬をピンクに染めている女児が転がっていた。………って、ん?


――――服は乱れ、短パンもずれている小5


――――男に跨がってマウントをとられ、目に涙を浮かべ、息をあげている。


「…………いや、違うぞ」


俺はそう呟いてもう一度振り返る。


しかし、仁井園が


「……アンタ、心配して来てみれば……最低……」


とこぼすと、神城も


「……七五三田…その、二人は兄妹なんだよ?」


と、困惑しつつも、俺に正しさを諭すような言い方をしてくる。って違うからね?これはただのハートフルな場面の再現であって、過去にセピア色にしてしまったそれを慈しむと言うかですね……っ!


俺は一度、菜衣子の上から退いてベッドに腰掛け直す。そして、未だ人のベッドに横たわる妹を指差して、もう一度しっかりと二人に伝える。


「違うからな」


だが、仁井園が


「何が? 童貞が女児押し倒して上にまたがってるとか…犯罪の臭いしかしないでしょ……てか、七五三田、アンタはそんなヤツじゃないと思ってたのに…」


おおおおおいっ!何勝手に人を犯罪者にして自己完結しようとしてんの?!やめてよねっ!だいたいこいつ妹だからねっ!?あと、俺は年下より上が好きです!


具体的には、21歳くらいの大学生で、母性に溢れ俺が疲れてるといつも優しく声をかけて、おまえみたいに固定概念なんかで人を決めつけたりしない巨乳で優しい……っ!……あれ?ちょっと神城っぽくね?とか思っていると、菜衣子が体を起こす。


すると、すぐさま神城が


「なえちゃん、おいでっ!」


と言って、両手を広げる。すると菜衣子は一瞬俺を見て、何かを企んだ顔をすると、すぐに


「美羽ちゃぁ~んっ! 悠莉くんが…っ 悠莉くんが無理やりぃ~」


と言って、神城の胸へと飛び込んだ。って菜衣子てめぇっ!


昨日から踏んだり蹴ったりである。








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