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第35話 人間は他人の事ならすぐに考えて助言とかできるが、自分の事になると、急にわからなくなる。

その日の夕方、俺達は無事レクリエーションを終えた。その後、バーベキューをするとの事なので、その準備に取りかかる。女子は食材を切りに、俺とギグスは炭焚きを始めた。


俺が無言で炭をくべていると、着火材を取りに行ったギグスが戻ってきて、「悠莉、どうした、考えて事か?」と、訪ねてきた。

ってか、コイツ気遣いできるのか……とか失礼なことを思ってしまう。まぁ、根はいいヤツなのかもしれない。だが……


はたして、今俺が悩んでいることを、コイツに話していいものだろうか?下手したらごちゃごちゃとなる可能性もおおいにある。

コイツの心配(?)はありがたく受けとるが、やはり人間、選択と言うのは、慎重に行うべきだ。とりわけデリケートな問題なら尚更である。


どこぞの漫画の主人公のように、俺は声をかけてくるヤツ全員を"信じる"なんてことはできない。


疑わしい行動を取られれば、疑念は生まれるし、不安になる言動をされれば、警戒してしまう。


「……いや、別に」


俺がそう言うと、ギグスが


「美羽のことだろ?」


と、図星をついてくる。が、そこは俺、全国の非リアぼっちを代表して簡単に動揺したりなんかしない。マジ、超クールにやりすごす。


「は、は? な、なんのことだよ?」


すみません、無理でした。たぶん、今、めっちゃ目泳いでるわ…。


「どうした悠莉? 目が金魚みたいだぞ」


どっかで聞いたようなこといいやがる。そんな感じで、俺が困っていると、先生の友人のリサさんがやってきた。


「ヘイ、ギグス、悠莉、調子はどう?」


やったぜ、グッジョブリサさん!俺はこの状況を体よく使うことにする。まぁ、話をそらすにはちょうどいい。


「……あ、今から火をおこすところです」


俺がそう言うと、リサさんは


「あら、そうなの? ところでギグス、あっちでマシューが呼んでたからいってあげてくれない?」


と言って、ギグスは「御意っ!」と言って走って行ってしまった。御意ってなんだ。するとリサさんが、


「火を起こしながらでいいから、少しお話しましょ」


と言ってきたので、俺は頷く。


「悠莉、孝輔……えっと、貴方の先生に聞いたわ。おもしろい子がいるって、悠莉、貴方一緒に来ている女の子の為に頑張ってるそうね」


……? なんのことだ?


「……なんの話ですかね?」


俺がそう言うと、リサさんは


「あら?」


と言って、少し考えるような仕草をする。そして「…なるほど、そう言うことなのね。ふふ、無自覚か…」と、独り言を呟いた。


「…?」


「いいわ。 たぶん、孝輔も貴方のそう言うところがおもしろいって言ったのかもしれないし…」


「……そうですか」


「……。」


それから、少しの沈黙のあとリサさんが


「……で、悠莉はどっちの子が好きなの?」


とニッと笑って話を変えてくる。これ聞かれんの何度目だっけ?とか思いながらも、さっきの神城の台詞がチラつく。


―――『……別に、勘違いしてもいいもん』


―――『相手が七五三田だから止めたんだよ』


……この発言の意図が俺にはわからないからだ。これだとまるで…まるで…………いや、そんなはずはない。なにより、俺と神城じゃ釣り合わなすぎる。それに、神城はもともと勘違いさせがちと言うか、あざといことは知っていたはずだろ。変に期待しても傷つくに決まっている。


そんなことを思っていると、俺を見ていたリサさんが


「悠莉…今、悩んでるのね?」


と言った。


この人には話しても大丈夫だろうか?…そんな風に思いながらも、


「……えと、まぁ…悩むと言うか…分からないと言うか…」


と、言葉を濁してしまう。


「悩むのは良いことよ、悠莉、たくさん悩みなさい。ただ、忘れないで欲しいんだけど、貴方があの子達の事で、今本気で悩んでいるのであれば、それはもう、あの子達が貴方の中で"大切なもの"に変わっている証拠よ」


「……はぁ…?」


「わからないかしら? 貴方にとって、あの子達はもうすでに特別なのよ、だから悠莉は今、悩んでるんだわ」


……言われてみれば、そうかもしれない。俺が神城の発言を気にしているのは、きっと、無意識に期待しているからだ。そうあればいい。そうあってくれたら嬉しい。……では、なぜ俺はそう思うのか…?


その答えを導きだすには、まだ少し…時間がかかりそうだ…。


認めてしまえば、楽なのかもしれないが、認めてしまうと、怖くなる。きっと、今までのようには接する事ができない。


それに、何かあった時に、咲来のようにいなくなるかもしれない…無駄にそんな事を考えてしまう。たがら俺は、苦笑して


「ははは、えっと…ま、そうかもしんないです…」


なんて適当な答えを返した。すると、野菜組の方から仁井園がこちらへと歩いてきた。それを見たリサさんは、「ま、沢山考えなさい、またね」と言って、どこかへいってしまう。それから、すぐに仁井園が俺のところに来て、


「調子はどう?」


と聞いてきた。なにこのデジャブ。今しがたそんな話しかけられ方をしましたよ。まぁ、そんな事言っても仕方ないので、


「……見ての通りだよ、もうボチボチ火も落ち着くだろうから、食材もってきていいぞ」


俺がそう言うと、仁井園は


「そっか…」


とこぼす。が、一向に戻る気配がない…。


「仁井園、その…なんだ、火はもう落ち着くから食材…」


と言うと、仁井園が


「七五三田さっ!」


と急に大きな声を出したので、少しびっくりする。


「うおぉ…! びっくりした…な、なんだよ」


「……えっと、週末って空いてる?」


え?なんだ急に…?てか、なんでこいつちょっともじもじしてんの?何……?ああ、なるほど……


「おまえ、トイレいきたいなら早く行った方がいいぞ」


俺がそう言うと、仁井園は


「……は?」


と、少しだけ威圧的な返答をする。え?なんでちょっと機嫌悪くなったの?トイレとか言ったから?いやでも、なんか申し訳ないじゃない?俺と話すのでトイレ我慢してんだったら、済ませてきていいよと思うじゃん?だって無理な排尿の我慢って、膀胱炎の原因になるらしいし…え?なに?これ俺が悪いの?とか思っていると、


「はぁ…」


と、今度はため息をつかれる。なんなんだマジで。


「……で、週末、あいてんの?」


……こいつはなんでこんなこと聞いてきてんだ?疑問に思うこともあるが、とりあえず正直に答えてみる。


「ま、まぁ、予定とかはないけど……」

そう言うと


仁井園は、「そ…」と呟いて、一瞬間を開ける。そして、


「じゃあさ」


「うん」


「……花火いかない?」


「……は? 花火…?」


ああ、神城と三人でってことか? コイツ本当にこっち側になっちまったんだな…可哀想に…お痛わしや(泣)とか思いながら俺は普通に言葉を返す。


「神城にはもう話したのか?」


俺がそう言うと、仁井園は


「……美羽には言ってないよ」


「……? まだ?」


「まだじゃない」


「どういう事だ?」


「……アタシはアンタに行こうつってんのっ! ほんっと、にぶいんだからっ」


「………は?」


おいおい、神城もそうだが、仁井園までどうした…?何?そういうお年頃なの?







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