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第27話 夢をもつ人間は、輝いて見える。

……てか、いやこれ…ほんとどうしたらいいんですかね?このまま無視して逃げれるほど肝っ玉座ってないし…俺。え?じゃあ声かける?いや、無理じゃね?どうする?……とりあえず謝る……?謝るか…よし。


「あ、あの…」


ひとひらの口振りからは俺は知ってる子らしいが…距離あるしな…人だとは分かるんだが…俺目悪いし……。そんなことを思いながら近づいていくと、その人物が誰なのかわかった。


「……えっと、本仮屋…その、なんだ……歌…上手いんだな…」


だ、ダメだ~っ! 謝ると変に気使いすぎてる感じになりそうだから、謝れない…っ!とりあえず褒めてみたが、依然として歌姫こと本仮屋さんは丸くなっておられる。


「………ほんま死にたい……」


おぉ……羞恥心から素の本仮屋さんが…心中御察しします。てか、ひとひらは歌う本仮屋見せて何がしたかったんだよっ!いなくなるしっ!いやミスったの俺なんだけどさ……。


「……なんで七五三田くん、ここにおるん……?」


丸くなったまま素の本仮屋さんはそう訪ねてくる。なんな絵面的にシュールなんだけど…。


「いや、その、た…たまには散歩を……みたいな感じで歩いてたら…? なんだ…えっと、歌が聞こえてきたから…?」


なんで疑問系なんだよ…てか思わずひとひらかばっちゃったよ、アイツ今度会ったら覚えてろよ…!……いや待て、バイトは今日で終わりだし、会うことってもうないんじゃ…?


そんな事を考えていると、本仮屋に


「………七五三田くん、嘘はあかんよ…」


とド正論で返され、言葉につまる。すると本仮屋は「はぁ~…」と大きなため息をついてすくっと立ち上がり、俺の方を見た。


てか、コイツ今日メガネしてないのか…よく見ると黒目が大きくパッチリとした目をしている。なんと言うか、少し年齢よりも幼い印象を受ける。


「七五三田くん…あの、他の人とかには、その、言わんとってくださいね……恥ずかしいので…」


「いや、言わねぇけど…それに、恥ずかしがるような歌声じゃなかったぞ…」


「ははは、恐縮です」


そう話す本仮屋は、いつもの本仮屋に戻っていた。


「ところで、なんでこんなとこで歌なんて歌ってたんだよ」


「……あー…その、私って、すぐキョドっちゃったり、謝っちゃったりするじゃないですか?だから、そんな自分があまり好きになれなくて…なんとなく、歌を歌ったらスッキリしちゃって、それから癖になってるっていうか……それから続けてたら、その、なんと言いますか…恥ずかしい話…私、将来は歌をやりたいと思うようになっていたり……とか、ははは」


そう言うと、本仮屋は顔を少し赤くして、恥ずかしそうに頬をかいた。歌手とか歌い手とかになりたいってことか?ん?歌手と歌い手の違いってなんだ?まぁそこはどうでもいいか……。なんにせよ、


「……へぇ、いいんじゃねぇの夢があって」


「ははは、まぁ、親には地に足のついた事をやりなさいとか言われちゃうんですけどね…」


「そりゃ大人はな、俺等なんかより物事をよく見てきているだろうし…自分の経験や考えなんかで、子供が間違えないようにとか、いろいろ思って言うんだろう。うちの親も似たようなもんだぞ」


「そうなんですか?」


「ああ、俺が将来的には多額の家賃収入を受けながらニートやりたいって言った日なんか、家賃収入を得るまでの過程から何から説明されてな、見事に俺の夢は打ち砕かれたよ」


「ふふっ、なんですかそれ、なんで家賃収入?ふふふ…」


「……いや、なんか言葉的に楽そうだったから…?」


「なんか、七五三田くんっぽいですね」


「そうか…?」


「はい」


「まぁ、なんだ、でもな、たぶん、本仮屋は本仮屋で、人の意見に振り回されずに、その歌をやりたいってのをやればいいと思う。俺は家賃収入までの過程がめんどくさくてやめたけど、おまえは好きならそれを納得できるまでやった方がいいんじゃないかと思うぞ……他人の意見なんてのは、俺のも含めて参考程度に考えて、自分の納得できるとこまでやってみればいいんじゃないか…?ま、俺はすぐ諦めたけどな…」


俺がそんな話をすると、本仮屋はクスクスと笑って


「ふふ、ありがとうございます。なんか、七五三田くんって大人ですよね」


「……は? 俺が?」


「はい、なんか、妙に説得力あると言うか…だから、かもしれないですね」


「なにがだよ」


「あの仁井園さんや神城さんが、貴方を頼る理由ですよ」


……ん?俺頼られたっけ…?あー、まぁたまに相談とかは受けるな…てかマジか。俺にそんな力が…!ってないない。


「かいかぶりすぎだろ」


「そんなことないですよ、私ちょっとスッキリしましたもん」


「マジ? 褒めてもなんもでないよ」


「ふふふ」


そんな話をしていると、妙に視線な感じ、俺はその視線を感じた方を振り向いてみる。すると岩影からこっそりとこちらの様子をうかがっているひとひらを見つけた。


「あ…やば」


ひとひらはそう言ってまた岩影に顔を隠す。が、もうさすがにバレバレだからね?


「ちょっとひとひらさん? 見えてますよ」


俺がそう言うと、岩影から


「ぱ、パオーン…!」


と聞こえた。


「なんだ象か…」


ってんなわけあるかっ!なんで象!?なにチョイスしてんのこの子、て言うか、象がそんな岩場に隠れきるもんかよっ!あと、なんで象!?


「……ひとひら、さすがに無理があるぞ…」


「…バレたか…」


いや、バレるだろ。逆に大丈夫だと思った根拠が知りたい…っ!


「ちぇーっ」とか言いながら出てきたひとひらは、こちらへやってくると、本仮屋にも軽く手をあげ、挨拶を交わした。それから3人で少し喋って、本仮屋と別れ、俺とひとひらは二人で帰り道を歩く。


「おまえん家、こっちなのか?」


「そうだよー、この先のコンビニ曲がってちょっと行ったとこ」


空が紫色にかわる頃、車がライトをつけ、俺たちの横をすぎていく。


「……そうかよ」


「悠莉ってさ、会話続かないよねー、てか、続ける気があんまないでしょ?」


「……いや、別にそんなつもりはないんだがな…」


「えー、でもそんなんじゃ、女の子はくどけないぞっ☆」


「いや口説かねぇし…」


そんな話をしながら、俺は思っていたことを聞くことにする。


「……そういや」


「なんだね、悠莉くん」


「いやなんで急におじいさんみたいな声だしてんだよ、その、なんだ、なんで本仮屋の歌の練習を俺なんかに見せたんだ…?」


そう聞くと、ひとひらは、歩みを止め


「それはね……」












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