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第18話 気を抜いた時に、予想外なことが起きると、悪いことしてないのにドキッとする。

仁井園の彼氏のフリとおんぶ事件の翌日、俺はいつも通り学校へ行き、自席にて荷物をぱっぱと整理し、イヤホンをつけてマイワールドへトリップを試みる。


最近のお気に入りの音楽は、一昔前のRPGのサントラ…ではなく、最近は普通に某動画サイトで"あなたへおすすめ"に出てきたバンドがちょうどハマり、それを聞いている。音楽は良い。音を楽しむと書くように、その世界に入れば余計な事を聞かずにすむ。と思っていた矢先、ちょっと激しめにイヤホンを外される。


「いてっ」


何事かとそちらを向くと、仁井園が立っていて


「おはようつってんじゃん! 挨拶シカトするとキレるのはどこのどいつだったっけ?」


と笑顔で強めの挨拶をかましてきた。って言うか、マジか…コイツ普通に絡んできたじゃん。


「お、おう、おはよう…」


「は? なんでちょっと引いてるわけ?」


「……いや、引いてねぇよ、ビビってんだよ…」


俺がそう言うと、仁井園は「あっそ…!」と言って、自分の席へと去っていった。なんだったんだよ…マジで…それから少しして神城がやってくる。


「七五三田、おはよう」


「……おう」


「あれ?今日はイヤホンしてないんだね?」


「…あー…いや、まぁな」


「……?」


そんな感じで席につくと、神城は荷物の整理をはじめた。そして、それを終えると、声をかけてくる。


「ねぇねぇ、七五三田」


「……なんだ?」


「真理子の件、私考えたんだけど、今日はお昼誘ってみようかな?…って思っててさ、良いかな?」


「……?なんで俺の許可がいるんだよ」


「だって、七五三田って真理子苦手じゃん」


「え?それ俺も一緒に食うって事なの…?」


「当たり前じゃん!」


マジか…仁井園と二人で食うのかと思ったわ。いやだって、そうすれば元通りな訳で、俺は必要なくなるじゃない?でもまぁ…


「別にいいんじゃねぇの? 普通に、おまえが食いたいヤツと食えばいいんだし」


「ほんと?えへへ、なら七五三田の事も今予約したからねっ!」


と言って神城は「へへへ」と笑う。なにその笑顔素敵。100点!


……なんて…やる気に満ちた顔で、「よし!」と気合いをいれる神城を見ていると、まぁ…うまくいくといいな、とか思ったりする。



―――で、昼休み。



中庭のいつものベンチで、俺は神城を呆れた顔で見る。


「……おまえ、結局仁井園の席の周りをうろうろするだけで、何も出来てないじゃん…」


「うぅ…だ、だって、声かけづらいんだもん!」


いや、もうほんとただの不審者だったからね?仁井園少し引いた目で見てたからね?このポンコツめっ! と言ってからふと、ある事を思い出す。あー、そう言えば…


「でも確かに、勾玉作りでもお互いチラチラ見るだけで一切会話無かったもんな…」


「そ、それはだって…ねぇ…?」


いやなにその察して!みたいな目。やめなさい、そんな目で見ても何も変わらないんですからね、と言うか、俺ジッと見られんの苦手なんだってば!ほんと、人の目ってたまに言葉よりも辛辣だったりするから、無駄に相手の思うこと深読みしたりしちゃうだろうが!とか思いながらも俺は冷静を装いこう言う。


「……ま、地道にやればいいだろ。飯食おうぜ」


俺がそう提案すると、神城は「明日こそはがんばってみるよ!」と言って弁当を食べはじめた。俺はパンをかじりながら、なんとなく周りを見渡す。すると、いつもの時計台横にいた成功者(笑)達がいないことに気づく。


(……あれ? いつもの「あ~ん」する人達いないな…と言うか、まさか別れたのか?……マジか、きっとLINEとかで夜喧嘩して、もう知らない!みたいにお互いがなって、今頃別のヤツ等と食事しながら、お互いが、お互いの悪口いってんだぜ?やったね☆)


なんて思っていると、神城に


「七五三田、なんでニヤニヤしてんの…?」


と若干引かれる。おい、引くなよ。


「……そんなニヤニヤしてた?」


「うん。正直キモかった」


「……気を付けるわ」


それから、食事を終えて教室へと戻っていると、急に知らない男子が神城に声をかけてくる。


「あ、あの! 神城さんっ!」


呼ばれた神城は立ち止まり、相手を見る。その相手は何故か俺の方を見てくる…って、あ。なるほどね…


「……神城、先戻ってるぞ」


俺はそう言ってその場を離れようとすると、神城に制服の裾をつかまれ、それを阻止される。そしてそれを阻止した神城は、その男子に、


「何かな?」


と言うが、その相手は明らかに俺がいることを気にしていた。ってか、これどう見てもあれでしょ、俺この人にとって邪魔でしょ、なんでコイツは俺をここにいさせんの?ここはこの男子君の為に空気を読んであげようじゃないか。


「…神城、俺トイレ行きたいんだけど…?」


俺が神城にそう言うと、神城は、一瞬俺をジッと見て、「わかった」と言って手を離した。


それから、先に教室へと戻り、午後の授業の準備をしていると、神城が戻ってきて、何故か不機嫌そうに俺の机の横に立ち、腕組みをして


「七五三田、私は怒っています」


と、現在の自分の感情を報告してくる。いや、知らんがな…と言うか、


「……なんで怒ってんの?」


「それは、七五三田が先に行っちゃったからです」


「いや、別にそれは良くねぇか? それに、明らかにあの人俺がいるの嫌がってただろ」


「そんなの知らないよ、なんでそれで七五三田が気を使うの?気を使うの下手くそなくせに…!」


「……ぐぬっ…よ、余計なお世話だよ、で、なんか言われたの?」


「……言われたよ」


「……そうか」


「うん……てか、そんだけ?」


「要点を得ないな、何が言いたいんだ?」


「別に…っ! 七五三田のバーカ! もじゃもじゃ!」


んなっ?! 別に頭もじゃもじゃは関係ないだろうが、って言うか、マジでなんで不機嫌なんだよ…?女子ってほんとそう、うちの妹もそうだけど、意味わかんないことでキレるし、ヒスるし、すぐ叩くし。変なところで笑うし、可愛いし、良い匂いするしっ!あと柔らかいしっ!……ふと、昨日の仁井園をおんぶした時を思い出す。


………いや、うん。悪くなったですよね、ほんと。女の子意識させられましたもん、あの時。最高かよっ!って思わなくもなかったですからね、正直。とか思いながら、とりあえず何言われたかくらい聞いとくことにする。


「……んで、なんて言われたんだよ…」


「冷たい七五三田には、もう教えませーん」


と言いながら、「ふん」と神城はそっぽを向いてしまった。いや、て言うかマジで女子ってなんなの?聞いて欲しいんじゃなかったの?やっぱ聞いてほしくないの?どっちなんだよ…。


そして、本日最後の休み時間、神城は俺をチラ見したあと、べっ!と舌を出してどこかに行ってしまった。俺は別にすることもないので、イヤホンをして音楽を……と思った矢先、仁井園が声をかけてくる。


「……アンタ、美羽と喧嘩でもしたの…?」


「いや、してねぇよ、なんか一方的に怒ってんだよあっちが…」


「……アンタ胸でも触ろうとしたんじゃないの?」


「おまえ人の話聞いてた?今、俺一方的にっていったよね?」


「どうだか、昨日散々人をおぶってドキドキしてたくせに」


と言って、仁井園はニヤリと笑う。……バレておられましたか…と、そう言えば、


「おまえ今日足引きずってねぇけど、もう大丈夫なの?」


「あー、うん。朝にはそんな痛くなくなってたし、今はもうなんともないかな…?」


「……そっすか、良かったね」


俺はそう言って、イヤホンを着け直そうとすると、仁井園が


「ねぇ…七五三田、その、今日…一緒に帰らない…?」


と言ってきた。俺は驚いて仁井園を見る。すると、仁井園はそわそわとしながら「な、なに?」みたいな顔をする…。


「その…なんか話でもあるのか…?」


「ま、まぁ、そんなとこかな」


「なら、別にいい…」とここまで口にして、神城が俺達を見ている事に気づく。そして何故か、それを見て俺はドキッとする。いやほんとビックリしたんだけど…。


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