556話 【龍VS.】棺の防衛戦 時の女神クロノス・ノスト・ヴァルハラ
宵闇を切り裂く金の筋が降り注ぐ。
どれほど斬り結んだだろう。そんな粗末さは初撃からすでに頭から抜け落ちていた。
肺を満たす、手にした剣で命を繋ぐ。不自然な呼吸とはいえ乱せば脳が回らず反応が遅れて押し負ける。
「っ、ハッ!」
闇に堕ちた死線に鉄と鉄のぶつかり合う火花が踊った。
僅かな光でも網膜が染みつく。暗闇に無理やり慣らした瞳の奥に赤い残光が焼きつく。それでも剣を踊らせねば、次が来る。
リリティアは舞うことを理不尽に強制されていた。
「次、来ますッ!」
前髪が汗を吸って束になって重ったるい。体捌きで勢いの乗った3つ編みの先端がくびれた脇腹を叩く。
気が抜けるわけがない。気を他所にやれば魂が現世から離されてしまう。
目標はなにもリリティアでけではないのだ。棺の間に残された龍族全員が対象となっている。
「次ってなにさ! もうずっとだよ!」
「ひぃひぃ! もう疲れたぁ! 休みたいぃ!」
蒼い円の中央で龍たちは文字通り必死に踊った。
泣き言を叫びながらも生に縋る。休むことすら許されず悲劇の舞台で降り注ぐ攻撃を避けづつけた。
ディナヴィアが、肩と喉で息をするスードラとネラグァを鼓舞する。
「まだだッ、まだ落ちるなッ! 汝らも龍ならば踏みとどまってみせろッ!」
すると闇のなかまたも豪雷の如き金十字の剣が現れる。幾百の金筋を生みながら龍族たちへ放たれた。
直線的な動きで軌道は読みやすい。しかしあまりに数が多すぎる。点で構成された面の攻撃である。
そこでリリティアは、勇敢にも仲間を背に剣風の吹く風上側へ、飛ぶ。
「ッ、《暴風効果》!!」
ひと振りの刹那にマナを凝縮させ風を呼んだ。棺の間に横殴りの風が突風の如く吹き荒れる。
容赦ない暴風に当てられた金十字の剣は、攻撃の方角を曲げて明後日のほうへ向きを変えた。
しかしこれは決断である。疲弊した仲間たちを守る代わりにリリティアがジョーカーを引かざるを得なかったのだ。
その証拠にストラップサンダルを履いた足が、円の外へ踏みでてしまう。
「――ぐぅっ!?」
結界がリリティアを襲った。
両肩へと襲いくる重圧が上から彼女を押し潰す。まるで翼をもがれた鳥のように膝が絨毯へと吸い込まれていく。
円の外側に1歩でも踏みだせばこれだ。蒼の外は《留置式制約結界》の範囲である。黒き靄に侵されてしまえば途端に行動という選択肢が奪われてしまう。
自由を奪われたからといって容赦はない。膝を落とし剣の振るえぬリリティアの頭部目掛けて金十字の剣は狙うように降り注いでいく。
「巨龍、白龍を引き戻せ! 《プロミネンス》!」
白炎の招来だった。
赤をも超過した白き火炎が金十字の剣を触れた端から消し飛ばす。
「白りゅー! こっちこっち早く戻ってぇ、帰宅推奨!」
ディナヴィアの作った隙を縫ってネラグァが長尾を翻す。
リリティアの足を長い鱗の尾で巻きなんとか引き戻すことに成功した。
龍の剛力によって引き戻されたリリティアはずささ、と靴裏で赤い絨毯の上をしばし擦って、即座に体制を整える。
「はっ、はっ、はっ! 助かりました感謝です!」
九死に一生を得た。
だからといって無策無謀であのような行賭けにでたわけではない。
ディナヴィアは白艶の手から未だ白炎を吐きつつ、紅玉の瞳でリリティアを僅かに睨みつける。
「なにを言う。発つ直前、眼差しをこちらへ送ってきたのは汝の側よ」
楔は打っていたということ。
リリティアは仲間を守る代わりに仲間に後始末を任せて飛翔したのだ。
「信頼の証というものです。事実、焔龍は私の期待にお見事、答えてくれました」
ふふ、と汗に湿った頬をほころばす。
それを見てディナヴィアもまた口角を微小ながらにもちあげる。
「同種の期待に応じてこそ女帝たるもの。少なくとも今現在の在りかたではあるがな」
轟々、と燃え盛る光の炎が、飛来する剣を発射前に溶かしていく。
だが剣すら溶かす白炎を吐きつづけるのも楽ではない。種の身体に慣れていないということもあってかディナヴィアの身体はリリティア以上に汗で濡れそぼっている。
白炎の白光に照らされた赤いドレスは汗に滲んで色を濃くしている。潤沢な肢体に薄布が貼りつき、それをディナヴィアは煩わしそうに開いたほうの手で剥がす。
「それと、もうこの場で礼は口にするな。汝がおらねばとうにこちらは全滅している。救われていることに妾が気づかぬとでも思ったか」
「それはこちらも同じことです支え合うことが欠かせません。生きるための手段として美しいものですね」
2匹の瞳はすでに紅と紅で彩られていた。すでにどちらも臨戦態勢。
そうなりつつも互いの笑みを横目で確認し合う。
「ふたりして硬い友情を確かめ合うのは良いんだけどさ! この飛んでくる剣をなんとかしないとそろそろ限界だよう!」
額の宝玉を赤くしたスードラが手にした三叉の槍で金十字を弾く。
「怖いよう疲れたよう! もう休みたいよう、休憩希望ぅ!」
ネラグァも武器こそもたぬ身であるが、長く鋭い尻尾を駆使して攻撃を辛うじていなしていた。
2匹とも、リリティアのように上手くはない。飛来する剣のすべてを弾けるわけではないらしく、代わりに足と体捌きでギリギリ、負傷を避けている。
そうなると体力の消耗も顕著だろう。弱音を吐き、汗だるまとなり、終わりの見えぬ防衛戦を強いられていた。
――確かにこのままではまずいです! なんらかの打開策を編みださないと、もたない!
言われるまでもなく状況は刻一刻と悪いほうへと移り征くだけ。
正味リリティアとて無限に剣を振りつづけることは不可能だった。このままこの剣の豪雨に晒されつづければやがて死ぬ。
かすり傷から瓦解がはじまることだろう。その後は想像に安すぎるため考えるまでもない。
だが龍たちに思考する間は与えられず。次なる金十字が強襲を企てるように中空で切っ先を一党へと定めていた。
『ンッ、まだやってたんだぁ? フフッ、ずいぶんとがんばるのねぇ?』
蒙昧な闇の向こう側から無声会話が脳へ直接響き渡ってくる。
『面倒だしぃ、心を折ってから手に入れようと思っていたのに。このままだと痛めつけて侵食する以上に時間がかかってしまうわあ』
退屈であるという感情を隠そうともしない。
こちらがぎりぎりを掻い潜る死線でも、あちらからすれば間延びなのだ。
それでもクロノスの姿を現そうとは絶対にしない。だからといって蒼い円の外へ捜索にでもでようものなら結界によって行動を縛られる。
耐えて死ぬか、諦めて死ぬか。龍たちは蒼の光に縋りながら最悪の2択を迫られていた。
「そう思うなら姿を見せなよ! いつまで裏からチクチクと嫌がらせをつづけるつもりだい!」
これには堪らずスードラが虚空へと叫んだ。
三叉の槍の先端でむかってくる剣を強引に捻り、そして弾く。
簡単ではない。容赦のない剣の雨を弾きすぎて手に甘い痺れが残っているのだろう。弾くたびに目端をすぼめ表情を歪ませていた。
『ンンラララ~♪ ラ~ラララ~ラ~♪』
こちらからどれほど呼びかけたところで無駄である。
クロノスにはじめから対話なんて上等なものを交わすつもりはないようだ。
そうなるとスードラの怒りの声はただ悲しく「ああもう!」闇の奥へ消えるのみ。
これでは観賞用の魚である。仕切られた空間でのみ泳ぐことの許された不自由存在。大空の覇者と讃え畏怖される龍たちがコレとは笑い草も良いところ。
不十分な水槽のなかでじわじわと体力と精神を摩耗し、やがて泳ぐことを諦めれば、待つのは望まぬ終焉だ。
「全員余力は残していますか!?」
リリティアは疲労による熱のなかにぞぞ、という寒気を覚え、仲間たちへ尋ねた。
すると待たずとも懸念は杞憂であることを知らされる。
「当然だ! アレが姿を現すまで、その首に牙を突き立て灰にするまでは死ぬるものか!」
「まだ大丈夫! 心配無用ぅ!」
そんな未来なんて冗談じゃない。口にせずとも伝わってくる頼もしさ。
龍たちの目は闘志を滾らせ腸を煮えくり返しながら豪華の如く燃えていた。
――明人さん! ユエラ! お願いですから無事でいてください!
なにより生きねばならぬ。生きて再会を果たさねば死ぬに死にきれぬ。
リリティアは薄い胸の生地をきゅっ、と掴んで家族の安否を憂う。
――きっと……きっと私がこの場を乗り越えて助けにいき、ます、から!
両名が生きていると信じるしかなかった。
これが希望というものか。こんな死の淵に立たされていても絶対に生き残ると、そして救いに行くと縋る。
もし、なんて。考えれば剣が鈍る。とにかく生きづつけることこそがリリティアの戦う理由だった。
『ふぅん? それにしても……結界を無効化する聖域が気に食わないわね? あの御方の創造した神具の結界すら無効化するソレはいったいなんなのかしら?』
クロノスの言うソレとは蒼の陣のことを指しているに違いない。
「…………」
リリティアは問いの答えを知っていた。だが教えてやる理由もなかった。
答えるだけ時間の無駄だからだ。今は少しでも自分ともども仲間たちも息を整える時間が欲しい。
それを見越したように変わって別の声がクロノスへ対応する。
『とある力を神聖マナによって増幅させたました。この力が結界を否定することでこの者たちを侵すこと事態を禁じているのです』
リリティアにとっても聞き覚えのある声が棺の間に響き渡った。
しかし今の音色に甘さや幼さは微塵もない。当然、あのフザけた語尾もだ。
審判の天使エルエル・ヴァルハラの無声会話の音が戦の音に混じって聞こえてくる。
『これはワタクシにとってでさえ容易なことではありませんでした。ですので種の方々には失礼ですが範囲を絞らせていただいております』
猫をかぶることをやめたのか、はたまたこの場では必要がないと判断したのだろう。
いつもの審判の天使ではない天使然とした美しくも冷たい声だった。
『あらあら! まさか主様の瘤が降臨していただなんて――光栄なことだわァ!』
対してクロノスはエルエルの声を聞いて歓喜を奏でる。
だが笑っているようで、そうではない。高く鼻にかかるような声のなかに狂気という明らかなものが秘められている。
『アナタが降臨をしたということはまさかぁ……? クヒッ、ヒヒッ! 定められし運命を変えられるとでも考えておられるのかしらァ!?』
「くっ――剣の勢いが増したッ! 注意してください!」
クロノスの感情の起伏に同調するようにして金十字の嵐が威勢を増す。
リリティアたちが決死の思いで捌くのを嘲笑うが如く、クロノスは嬉々と狂宴を喉で歌う。
『ヒ、ヒヒッ、それはあの御方の存在そのものを否定する行為に他ならないと知っていて!? 不貞を見せるなんて1等級天使も落ちぶれたものよねェ!? アーッハッハッハッハッハ!』
周囲の目を気にせず腹を抱えて笑う声とでも言おうか。
姿は見えずとも光景がチラついて不愉快極まりない。
『提示された運命の天使の予言は必ず近い未来に訪れます。知覚された未来線がどのようなものであれ実行されることは確定方角へと収束をつづける。それが運命の天使たる現主フィクスガンド・ジアーム・ルスラウスの偉大なる御力です』
『ヒヒヒッ! 理解してなお逆らうというのなら愚かしいことこの上ないわ。私の行動を確定させたのは誰でもないアナタの生みの親であり私の創造主でもあるあの御方の予見という御力なのよ』
天使と女神の対話を彩るように剣の舞う音がけたたましい。
そうしている間にも龍たちはジリジリ追い詰められていく。
他種族が巻き込まれでもしたならこうはいかなかっただろう。創造神の産みし恵まれた才覚あってこそ、この始末である。
たとえ大陸最強の龍族であっても天との力の差は歴然だ。だからといって安安葬られてやるわけではないが。
「つッ――ハアアアアア!!」
金十字の剣が巻う、それより早く剣風を舞わす。
紅の三つ編みが生を得るため藻掻く。生きるという当然の権利は天にすら否定させはしない。
もはや金十字の剣は1匹の長龍の如く形を揃えて蒼を射抜いてくる。それでも抗う術がある限り時を得るため墓剣ヴェルヴァは奮われる。
与えられた舞台はあまりに狭すぎる。両翼を広げていっぱいいっぱいなんて窮屈で仕方がない。
『我々は一縷の望みに賭けているのです。たとえそれが不定形で不確定な波打つ未来であっても、運命の子たちは運命のその先に光ある存在を信じているのです』
エルエルの指すそれを運命というのであればきっと一枚の光である。
頼りない小さな小さな光。閉ざされた空間に押し込められてしまったことにより――今の自分たちのように――翼を広げられない可愛そうな光がある。
その蒼の光の上で龍たちは舞い踊りつづけている。
『この私が生まれたことですら既定路線でしかないのですもの。だから運命は決して帰らないし変えられない。こぼれた魂が同じ器に戻らぬのと同じ道理なのよ』
クロノスの微笑とともに金十字の雨霰がふと静止した。
生むも自由消すも自由。そうやって高みの見物とはさぞ気持ちの良いものだろう。
龍たちはひとことも言葉を発さず。アイコンタクトのみで互い互いの安否を気遣う。そして全員の瞳まだ生きられると告げるのだ。
与えられた猶予。心のなかで時の女神が語る運命を否定するには十分な時間があった。
「僕、らは……はぁ、はぁっ……諦めないよ。君がどれほど大陸の破壊を志しても……はぁ、はぁ……選びかたを僕らはもう知ってるからさ」
「妾たちは己の行動で未来が開けると知った。信じられないような小さな分岐すらも見逃さず、正解さえ引けたならば……こうして望んでいたものを得られることを学んでいる」
スードラとディナヴィアは隣り合いながら互いのサポートをすることで生き長らえていた。
この2匹だって龍族のなかではかなりのやり手だ。なによりこうして今の今まで生き残っていることが証明だろう。
スードラは涼しい格好だがディナヴィアはやはり衣服が煩わしそうだ。それでも着衣を乱しながらも初めて着飾ったドレスを脱ぎ捨てるようなことはしない。
なぜなら彼女にとってそれこそが得たもののはずだから。物ではない。もっと大切なモノ。檻の外で得た形のない宝物。
リリティアのすぐ隣で膝に手をつき腰を折っていた巨大な体躯が吠える。
「生きるよネラグァたちは! もうネラグァたちの運命を知らない誰かに渡したりしないもん!」
ネラグァも顎先からしどと汗を垂らしつつ生き残っている。喉で呼吸を刻みながら冗談ではない大毬を弾ませていた。
リリティアの援護があってようやくといった感じ。それでもまだ戦えると美しい夜色の瞳がそう語っている。
一致団結した龍は欲望にまみれていた。なにせまさに今日というきっかけで生きるという喜びに触れてしまったのだから。
もう岩の檻には戻らない。赤き牢獄だって入ってやるものか。これが終わればまた聖都で旅行が楽しめるのだから。
リリティアは素振りをしながら宣言する。
「アナタはもうなにも得られませんよ。手にしている数少ない成果だけがアナタのすべてです。もう私たち龍は、たとえ神が相手であっても決して譲らない」
つづけて「オマエに渡すものはなにもない!」と。突きつけてやった。
一致団結したのはなにもこの部屋の龍だけではない。蒼の光に集ったのは大陸種族のすべてなのだ。
そう、それこそが運命の辿った道筋である。目の前に存在しうる絶対悪に立ち向かうためルスラウス種族はひとつになった。
すると僅かばかりの静寂が棺の間へ帳のように落ちる。
『……。私の糧になる分際で威勢のよろしいこと。なら次は同じこと言えないように真の絶望を与えてあげましょう』
そして闇のなかになんらかの気配が増えた。
リリティアも、全身に電流を流されたかのように刹那に震え、整える。
「――ッ!? なにか……くる?」
なにかというのはオカシナ話だ。
なにかではない。奥底から信じたくないものと形容すべきだろう。
龍たちは紅の瞳を刮目しながら現れた闇の奥にいるモノを待つ。
「Grr……Gッ……Gaaa……」
「ああ……そういうことするんだね……しちゃうんだ僕らにこんな仕打ちを……」
ズズン、ズズン、と。彼の存在が蠢くたび世界が揺らぐ。
影が鮮明になっていくにつれスードラの表情からすぅ、とイカサマ臭さが抜けていった。
「Brr……Giッ……Rrr……」
「ならば……迎えてやろうではないか。生きて彼奴の頭部を踏み砕くまで……いや、外道には死すら生ぬるいか」
とてつもなく巨大な前足が一党らの視界に入る。
同時にディナヴィアが好意的ではない戦闘的な笑みで牙を尖らせた。
「GRRRRR……! GRAAAAAAAAAAAッ!!」
見紛うものか。それは己と同じ龍の爪、鱗の大足。背には大翼を生やして、森すらなぎ倒す強靭な尾っぽが生え伸びている。
龍族たちが本気になるには十分な手合いだった。なにせ時の女神が仕向けてきたのは同種の龍なのだから。
「《龍の血脈効果》」
リリティアとて例外ではなく、紅のオーラを全身にまとう。
感情を伝えるのは言葉ではなく行動である。
「《光刃効果》」
剣に聖なる光をまぶす。青いリボンをほどき、墓剣と手を結ぶ。
すると解かれた髪の1本1本が線のようになって燃え盛る。
この仕打ちは下策も下策。なにせ狂った目をした龍を全員が知っているのだから。
誰かにとってかつては友であった龍かもしれない。
誰かにとってかつては親であった龍かもしれない。
誰かにとってかつては兄妹だった龍かもしれない。
それをこのメンバーと戦わせるというのであれば、戦争に発展させるのと同義である。
「日輪の栄光を求めるのであれば待つのは自戒よ! 向かうかこの身に、焔たるこの身にィ! ならば後悔を抱いて去ねッ! 凛剣――《ザ・サン》!」
全力で送ってやらねばならぬ。
「僕らをバカにするのもそのへんにしておけよ? 生命の胎動、命の暴動、海槍の濁流――《ネプトグランデ》!」
それが生き残った者たちの役目なのだ。
「アアアアアアアアアアアアッ!! もう誰も悲しい思いはさせないからネラグァの盾で守るんだ!! 《陰々滅々の反故と保護》!」
その剣で、その羽衣で、その大盾で。この哀れな同胞の葬儀を執り行ってやらねばならぬ。
龍たち全員が、もっとも得意で下すことにむいた魔法と闘志を完成させた。
これは防衛ではない。時の女神への執行である。命の冒涜と罪の精算は安く済まさない。
龍血を煮えさせた報いを受けさせねばならないのだ。
☆☆☆☆☆




