428話 そして井の底で笑えたとするなら 2
丁寧に下処理を施された湖沼の魚が串に刺されて焼けていく。
表面を白くなるほど塗りたくられているのは塩。焦げの色と粉雪のようなモノクロの色合いが見る者たちを魅了してやまない。
円柱のような形をした調理器具のなかで煌々と炭が滾っている。そこへ身から吐きだした脂がしたたるたびじゅうじゅうと音を奏でて炭と旨味を立ち昇らせた。
この光景はさながら毒だ。タグマフは今にも食いつかんばかりに尾を立て前傾姿勢をとっている。
「おい兄弟! もういいよな!? もう食ってもいいんだよなぁ!?」
やはり龍とは猛獣の類だ。口端にしたたるヨダレを拭いながら鼻息荒く是非を問う。
そんなギラつく猛禽類の如き視線に貫かれても、彼は冷静に制す。
「ダメだ、まだ臭みのある水分が抜けきってない。七輪の上で炭火と遠赤外線をじっくり浴びせてエグみを絞りだしきるまで我慢だ」
この場でもっとも権力をもつ者。それは料理をする彼だ。
いつになく堂々と構えながら食欲に滾るタグマフをひと睨み。
「あと……まだなかが半ナマだから食べちゃダメ。川魚は寄生虫とか色々怖いんだから内蔵を抜いてしっかり火を通すのっ」
するとギリギリと鋭い牙を見せながら尾がゆるりと垂れ下がる。
「く、クソォッ! オレっちらは龍だから虫如きに負けやしねえぞ!」
「……そういうやつがフグ食べて手遅れになるんだよ。先人に学ばず悪しき歴史を繰り返すんじゃない」
タグマフが逆らうような素振りを見せるたび、「めっ!」。
彼はたったの指1本を立てるだけで、あの龍を撤退にまで追い込む。
この湖畔では現在コックである者が最上だ。こればかりはいかに最強種族とて太刀打ちできない。
エスナも四つん這いの態勢ですでに虜となっている。
「はっ、はっ、はっ! なにこれなにこれ! いい匂いすぎて鼻でお魚食べてるみたい!」
犬のように細かく呼吸を刻み、すんすん鼻を鳴らして湯気を吸いとった。
それからうっとりと目尻を下げてほふぅ、と限りなく平坦な胸元を撫で下ろす。
もはや天龍や巨龍どころかフィナセスとムルルも目を輝かせながら、ゴクリ。口内にじんわりと染み渡る甘い生唾を飲み下している。
そうやっている間にもしたたった脂をかけられた炭火が炎を巻い上げた。
音が聞こえてくるのはなにも下からだけではない。焼かれた身がプツプツと脂の気泡を立てて弾けるのだ。
今か今かと待つヒヨドリのヒナたち。腹が不満を奏でる音なんてすでに聞き飽きている。
そして彼はすぅ、と息を吸い込む。
「海腹川背って言ってだな……海魚は腹が旨い川魚は背が旨いなんてな。そんな言葉がオレの国には言い伝えられているんだよ」
全員が構えながら言葉に耳をかたむけた。
早く、早く。彼の口から食事の許可が下りるの一心不乱に待つ。
「だから――背中からカブっといけぃ!」
彼がそう発破をかけた刹那、導火線の真に火種が届く。
まるで鬱屈していた不満を爆発させるかのような勢いで、全員が一斉に手を伸ばす。
己の1番近い場所で焼かれていた魚を毟りとるようにとりあげる。そして遮二無二構わず齧りついた。
「ッ――ッ!? ――ッッ!!」
「あむっ――まぐまぐっ! まぐまぐまぐっ!」
言葉はいらない。なにせ今の対話相手は塩焼きにされた魚なのだから。
皮は薄くほのかに甘く、焦げ目もカリッとクリスピー。炭の奥深い香りが染みて包む皮ですら食感と風味のダブルパンチな旨味を秘めている。
さらにメインの肉なしでこの料理は語り尽くせぬ。
噛むたび新鮮かつ上質な脂が口のなかへ広がって乾いた大地を潤すかのよう。脂身にコクがあるのに対して白身部分はあっさり。
香りがほぼない塩は舌に旨く風味を主張させている。生臭さを吐きだした魚本来の旨さを鼻腔いっぱいに押しだしてくる。
とにかくただガツガツと貪り食うだけ。そんな光景を彼は兄のように優しい顔で見つめていた。
「――マヨはっ!?」
「マヨネーズはないけど、昨日の風呂に使わなかった柑橘と醤油ならあるよ」
そう言ってムルルの食べかけの焼き魚に茶褐色の液体をひと垂らし。
それから半円上に切った緑色の果実を絞って全体にかける。
少し残念そうに眉をひそめていたムルルは、一転してぱちくり目を瞬かせた。
そしてそのアレンジされた魚を小さな口でぱくりと噛みつく。
「おいしいっ! マヨがないけどすごくおいしい!」
彼女にしては珍しい大きな声。
琥珀色をしたビー玉のような目を零れんばかりに丸くして魚を掲げる。
たまらずフィナセスも食べかけの焼き魚を彼へしむけた。
「ダープリ! それ私のやつにもかけて!」
「オレっちにもくれ! つーか1匹じゃ足りねぇからもっと焼こうぜ!」
「わたしもわたしも! はあん……こんなに美味しいものがこの世にあるなんてぇ……幸せすぎぃ……」
「あぐっ、まぐっ。こんなお魚がそのまま泳いでれば毎日食べられるのにぃ」
それを皮切りに、山に響き渡るこだまのようにぞくぞくと注文が殺到した。
三者三様に生やした鱗の尾っぽが縦横無尽にぶんぶん振られる。
フィナセスでさえも尾っぽがあったらきっと振っていたことだろう。
外で新鮮なうちに食べるということもあってか、簡単な料理なのに一段と美味に感じてしまう。
そしてなにより大勢で食べることがスパイスになって食が進むというもの。
するとなかなかにあったはずの魚がみるみる減っていく。
「チッ! しゃあねぇ釣り直してもっとタラフク食ってやるぜェ!」
いの一番に駆けだしたのはタグマフだ。
エスナも跳ねるようにして彼の後へとつづく。
「むふふっ! 海龍には申し訳ないけど、この湖の魚ぜーんぶ釣り尽くしてやるもんねっ!」
「おっ、いいなそれ! じゃあどっちが多く釣れるか勝負といこうじゃねーか! 負けたほうが次の儀式で動く側な!」
「いよっしゃっ! その勝負受けて立つわよ!」
どうやら魔法や自力で捕獲するということは頭からすっぽ抜けているらしい。
釣れれば焼いて、焼いたら食べて、また釣って。
遊んで、笑って、騒いで。龍たちは楽しいことだけをいっぱいに詰め込んだループをはじめてしまう。
「ふふ、元気にはしゃいじゃってまるで子供みたい。私たちが恐れてたはずの龍って実際に会ってみるとこんな感じだったのね」
「百聞は一見にしかず。龍たちが本当に未来へ生きたがってるのかを確かめにきたかいがあったよ」
フィナセスは虚を突かれた。同時に腹をさすっていた手をピタリと停止させる。
龍たちの姿を眺めながらなんとなく漏らした呟きに、思いもよらぬ答えが返ってきた。
真意を問いただしたくても彼は魚の焼くのにてんやわんやの大忙し。
料理係とフィナセス以外が次々に往復しながら死んだ目をした魚たちを置いていく。
「魚釣りのコツを掴んできたぜ! どんどん釣ってくるからあとはよろしく頼んだ兄弟!」
「岩龍なんかに負けてらんないわ! ダブルスコアで勝ってひんひん泣かせてやるんだから!」
白熱するタグマフとエスナはまだマシ。
問題なのは巨龍が元の龍姿に戻っていることだ。
頭部には豆粒のように小さな影を乗せている。
「お口にいっぱい水を含んだら水だけだす」
『ミ、ズだけダ、す』
頭に乗ったムルルの指示に従って、巨龍は湖の水を口に含んだ。
そして牙の隙間から滝のように水を吐きだす。ノズルのある面長だから含める容量は果てしない。
しかも彼女の巨躯はしばらく聖都に居座った巨大建造物――モッフェカルティーヌに負けずとも劣らないのだ。
水をだし切ったのを身を乗りだして確認したムルルは、静かに告げる。
「口に残った魚をふにーに、ぽいっ」
大仰な鱗に包まれた長首が彼へむかってぬるりとうねった。
もちろん横でくつろいでるフィナセスをまとめて影で包み込んだ。
生暖かい鼻息が直に吹きつけられる。そのつどぐるるという喉を震わす振動が全身を叩くかのよう。
見上げれば龍だ。巨龍の顔によって日が遮られ空を覆われてしまう。蛇に睨まれた蛙の気分を味わえる機会なんてそうそうありはしない。
「ムルちゃん1回でいいから本気で考え直して!? きっと1回でも考え直せばどうなるか予想がつくはずだから!?」
「なるほど巨龍の口を漁網のように応用したのか。それでムルルのやつ……はは~ん? 今からオレたちをかまぼこにしようって魂胆だなぁ?」
魂を抜かれたように見上げていたふたりは同時に危機を悟った。
このままでは巨大な質量によって押しつぶされる未来しかない。
「ダープリもバカなこと言ってないで逃げるのお! なにうんうん感心しちゃってるのよ!?」
「さすがヒューム族だ。一瞬でも世界を股にかけたひらめきの特性は今なお顕在ってことか……」
そして『ふに、ぽい』。天から生臭い魚群が解き放たれ、地上のふたりは埋もれる。
先ほどまで水の中を泳いでいた新鮮な魚たちだ。とても活きが良い。
このように生態系を脅かしかねない速度でどんどん魚が釣られていく。山のように。
加減のない大変な乱痴気ぶりだった。羽目を外すとはまさにこのこと。
多少の難はあれども、とにかく笑う。
運命に従っていたら決して出会わなかった種と種が交わう。踵を鳴らして両手を叩いてともに歌う。
運命は慈愛に満ちているが、ときに残酷だ。彼らもきっと理解して笑っている。
結末は遅かれ早かれ、だ。
ルスラウス大陸に生まれ住まう種族たちならば、とうに気づいているのだ。
創造神は聖戦に確定的に敗北する。そうなると神の創造せしルスラウス大陸もやがて消滅する。
月と月が頂天で出会った瞬間に、運命の采配がはじまる。
大量の龍族を封じた龍玉が紅の月に奪われた。つまり魂の欠片で種を創造するルスラウス神の御力が削がれた。
片翼の神、そしてさらに力の大半も失った。もはや成す術はない、道理と理が曲がらぬように運命もまた同義ということだ。
しかし出会わなければ良かったなんて、フィナセスは間違っても思わない。
彼らとも、彼とも。出会ったからこそ深い闇の底でもこうして並んで笑っていられるのだから。
「…………」
すると楽しいのさなかに黙り込んでいる者がいた。
こっちが楽しくしようと躍起になっているのに、うつむく無粋者がいる。
被り物から伸びる綿毛のような2つが微風に揺り動く。
手にしているのは口に刺さった焼き魚だ。その齧り口に濃いグレーの瞳を落としてぽつりと、呟く。
「……オレっちらって屍かい? ……こんだけ必死こいて生きてんのに木偶にも劣るってかい?」
雰囲気にそぐわない酷く寂れた声だった。
やいのやいのと騒いでいた女性陣も、ふとタグマフのほうへ耳と頭をかたむける。
「オレっち……自由に生きれる世界なんて知らねぇよ。生きたいと願うヤツが生きることが許された大陸って……どこにあるってんだよ……」
被り物からはみだす鼠色をした前髪と襟足が紅に染まっていく。
ひょろ長い手首の先には、震え硬く握られた拳が。
噛み鳴らした歯の隙間からときおり引きつった音が漏れ聞こえる。
「ずりぃよ……! なんだって裏切り者のはずの白龍があんな自由にしてやがんだよ……! クソドブみてぇな場所にいるオレっちらのほうがよっぽどがんばってんのにオカシイじゃねーかよ……!」
それが英雄に憧れた青年の本音なのかもしれない。
その実、彼の願いもまた誰かのため。
タグマフは、誰かの幸せを願うフィナセスを、よくわからないと言った。
しかしタグマフの願いもまた誰かの笑顔を導くことだった。
情熱を押さえきれぬほど若い。そして愚かで、優しい青年なのだ。
「しょうがないよね。わたしらは龍なんだから……きっとそのうち岩龍にも理解できる日がくるはずだよ」
「だんだん理解する、頭と体が勝手に。そうなるまでは辛いけど、そうなったらもう苦しくない、抗わない」
凍える肩へ、ぽん、と。エスナと巨龍が手を添えて微笑む。
なんとかなる、大丈夫。そんな在りきたりで下らない夢を見せるような、とり繕う言葉は決してかけてやらない。あくまでただ目の前の現実を突きつけるだけ。
この光景をだけでも、フィナセスには幾度も繰り返されてきたものなのだとわかった。
「近くにいた龍が突然次の日になっていなくなっちゃった経験がアンタにはまだないからしょうがないね!」
「だからねらぐぁの死も誰かのための死になる。寂しくない、悲しくない、泣いちゃダメ」
2匹は、空想の夢を見せるよりも甘きときに身を委ねさせた。
巨龍はうつむくタグマフの頭を己の胸に引き寄せる。なんどもなんども優しく撫でた。
天龍も彼の腕に温もりを伝えるくらいしっかりと絡みつく。彼の震える背中を優しく叩いてやる。
すると握られていた串がパキリと折れた。
「ほ、かの……ヤツラ、にも……うめぇメシ、食わしてやり、てぇな……」
フィナセスのいるところからタグマフが泣いているのかはわからない。
なにしろその頭が巨龍の洒落にならないほど豊満な房にまるっと包まれてしまっている。
しかし鼓膜を揺らがした彼の声は「ふぅっ、ふふ、ぐっ……!」と、確かに涙を流していた。
「泣くな泣くな! 男の子でしょ!」
「天りゅー違うよぉ。いっぱい泣いたらいっぱい笑えばいいんだよー!」
きっと龍たちにとってはいつものことなのだ。
きっとこのドラゴンクレーターでは幾百幾千と命の数だけ繰り返されてきたことなのだ。
ただ1点だけ今日はいつもよりもほんの少しだけ異なる。
「じゃあみんなに食べてもらえばいいじゃないか」
その在り方に皆が唖然としても構いはしない。
「これだけ大量の魚なんてどうせオレらだけじゃ食べ切れないでしょ。だからといってこのまま魚を腐らせるなんて八百万の神に叱られる」
彼だけは目尻にシワを集めて歯を見せながら無邪気に笑っている。
立つ。たとえ嵐舞う荒野であっても、砂塵如きたかが砂粒だと言わんばかり。
堂々と。それはまるでここが世界の中心だと言わんばかり。
勝手気儘に、わがままに。
「……う、そ!?」
嘘なんてつかれていないのはフィナセス自身がよく知っている。
だが彼自身も、彼の行動そのものも、嘘の塊みたいなのだから自然とこぼれてしまう。
そしてここでもっとも適切な表現は、嘘ではなく、冗談じゃないだ。
場にいる全員が悲しみにくれることすら忘れて喫驚し、息を呑む。
「ま、マジかよ!? い、いったいなにがどうあってあんなことになってるってんだ!?」
「ほぇ~……なんかすっごいことになってる? やばいこと、大変なこと?」
「地龍と海龍に頼んだことって――こういうことだったってわけ!?」
そしておそらくすべては彼の仕組んだもの。望んだこと。
重力に引かれるように――世界の中央に惹かれ求められて。ここを目指し、遠方より無数の粒が飛来してくる。
影はまばらでとても小さい。なのにみるみる間に、膨れ、羽ばたき、空を統べる。
どれほどの数が集っているのか。あの1つ1つが大空の覇者というありえない現実に目を奪われてた。
大陸に住まうものにとって信じがたい出来事が押し迫ってきている。
『ふにゅうくーん! きみの命令通り手ごろでちょうど良さそうなヤツ連れてきてあげたよー!』
透けるような青空と見紛う青い鱗が日に照ってなめらかにうねる。
短い手足に胴長は他の龍に紛れ込んでも良く目立つ。龍の姿をしたスードラが先だって無数の龍たちを率いる。
『ちょーっとなにをやってるのか気になった野次馬連中もついてきちゃったけど……――ゆるしてねっ☆』
地上からも、そう。
大陸が揺らぐかのような地響きとともに数種の龍が世界を鳴らす。
『ハッハッハッハッハッ! いやはやなんとも末恐ろしい事態とになってしまいましたなァ!』
聞き覚えのある慎み深く、さも愉快を歌う心の声は地龍グルコか。
体躯は巨大だが、それより両手はさらに歪。両手先の4本の指から伸びた爪が異様に長い。ひっかくことに特化したような見た目をしている。
『ご注文通り大量の食材をばご用意させましたぞ! 集めた貢ぎ物が天龍に届かず途方に暮れておりましてな!』
参った参った! 匍匐前進を試みるような腹ばいの態勢で爪を使って這う。
地上をあたかも水中であるかの如く、グルコは両手爪を回してこちらへやってくる。
あの決闘のときのように龍たちが群がってくる。
蛾は光を求めて灯りに集う。そしてその偽りの光によって身を滅ぼす。
だが構成されるすべてが炎を恐れぬ龍だ。炎を愛してやまぬ存在者たちだ。
龍たちの目指した先には彼がいる。
「…………」
その夢のような光景を前にしたフィナセスは、短い夢を見る。
偉大なる王。グラーグン・フォアウト・ティールが救われたあの運命の夜明けが不思議と重なる。
夜に命が惑い、朝に魂が降り、日と月の狭間に還った。聖都の民に見送られる覇道の意思の余韻を確かに見た。
「ほら、タグマフの願い事がもう叶った。数も揃ったし食材も集まったからこれから忙しくなる、ぞ?」
彼は得意げにしたり顔でそちら側を振り仰ぐ。
そしてそのままつづきを語らず。しばし龍の群れを仰ぐこと数秒ほど。
「うーわっ!? オレの想定してた20倍くらいの数が集まってるッ!?」
龍たちの到来を、一党のなかでなぜかもっとも険しい顔で迎えた。
伝達ミスではなく、スードラがいたずらに増やしたせいで想像以上の数が集まってしまったらしい。
なにせ仕方がない。龍たちは炎と同じくらい種を愛してやまないのだから。
それからムチのようにしなる蹴りが炸裂し、遅れて弾けるような甲高い音と嬌声が響き渡る。
「大事にすんなっつったべやあああ!!」
「――ひはぁんっ!?」
彼が策略を練るのであれば、彼もただでは転ばないということ。
へなへな、と。小ぶりな尻を天へ掲げて力が抜けるみたいに地に崩れ落ちる。
「えへ、えへへ、えへっ! お仕置き貰っちゃったぁ……」
スードラは他の龍の視線を浴びながら、しばらくの間うっとりと頬を赤らめていた。
荒ぶる彼とは違って、とても幸せそうだった。
「どうしてくれるんだよぉ!? この全員分だったらそうとうな資材が必要になるぞ!?」
なにはともあれ。なにかが動きだそうとしている。
とてつもなく壮大で無茶苦茶な計画が始動する。
……………




