403話 偉大な作戦への道標
背の低い彼はさらに低姿勢でユエラとリリティアのもとへ、ペタペタと歩み寄っていく。
清涼感のある深い青みがかったショートヘアーは光を反射し、さらさらと歩調に乗って流れる。
「この度はぼくの相棒が多大なご迷惑をおかけしてごめんなさいですはい……」
まずは踵を揃えてかしこまり、1礼とともに無礼を詫びる。きちんと謝罪から入るあたり岩龍よりは常識があるらしい。
「それに外側との干渉が焔龍にバレたらオオゴトだったから、ついついぼくもとり乱しちゃった……」
物騒なことを口にして利口そうで幼げな顔を曇らせた。
輪郭が整うよりも若々しく言われなければ少女のように見える優秀な顔立ち。丸みが第2次性徴期をぎりぎり迎えていないくらいの未熟感を漂わせている。
見た目に惑わされてはならない。彼もまた大陸最強種族なのだから。
「警らの監査役といえば重責のはずです。焔龍にバレでもしたら信義にもとると即刻生贄でしたね」
めっ。片頬を膨らませたリリティアは腰に手を当てながらピンとよく反る指を立てた。
お叱りを受けたスードラは短い髪の上から頭をぽりぽりと掻きながら苦笑する。
「だって目を離した一瞬で逃げちゃうんだもん。しかも逃げたのは若い岩龍でしょ。女漁りとかしてるんじゃないかと思ってぼくも慌てちゃったんだよ」
いちおうは今回の事態を重くみて反省しているらしい。
なによりあのリリティアがまったく警戒していない。髪も金色なまま、赤くない。
ふたりの間にひりつくような緊張感はない。岩龍の襲来と比べて天と地ほどの差が生じている。
「それにしても白龍は本当に女性の姿を選んだんだね。なんだか新鮮なモノを垣間見た気がするよ」
あはは、なんて。スードラは花がほころぶような笑顔を決して崩すさず目を細めた。
女帝とも呼ばれる存在者に恐怖しているのか、はたまた達観しているのか。あるいは半々か。
とにかく彼は、はぐれ龍のリリティアと知り合いなのだ。つまり解放戦争以前からのつき合いだということ。
そんな龍である少年の横へ、空気を孕んだスカートがふわりと浮いて沈む。
「わぁ! この子かわいいし大きい尻尾まで生えてる! 私龍族の尻尾をまじまじとみるのはじめてなのよね!」
子うさぎのような身のこなしでユエラは彼の隣へと並び立つ。
そうやって並んでいると子供と大人ほどの身長差だ。ちょうど彼女の色めく胸毬の辺りに小さな頭がくるくらい。
「ありがとう。でもキミのほうがすごくかわらしいとぼくは思うけどね」
初対面であろうユエラに物ともせずスードラは、すぐさま邪を払うような笑みを咲かす。
まさに野を照らす太陽の如し。男でもぐらりときてしまいそうな愛くるしさ。
少なくとも明人の目に映る横顔だけでは、彼が龍であるととても断定できない。
しかし視線を下げれば長い尾っぽがたらりと1本。チーズの発酵臭がこびりついた手を顎に添えて大きく頷く。
――龍だな。うん、龍だ。龍に違いない。
尾てい骨の辺りからにょっきりと生えたヒレのつきの鱗尾が龍であると確信させる。
――各々に特性が異なるってことか。となると割りかし厄介だな。
とりあえず元の姿のときに翼は生えていなかったし、海龍は龍というよりというより蛇をモチーフにした竜に近かった。
そうやって明人が得た情報から考察している間にも、彩色異なる瞳がビー玉のように煌めきっぱなし。
ユエラのワクワク度を表すように長耳が上下する。前髪端で結った小さな三つ編みは元気よく揺れる。
「ねっねっ! 龍の尻尾は凄くさわり心地がいいって聞いたんだけど、ちょっとだけ触ってもいい!?」
「えっ、うん? 別に構わないけど触り心地が良いかは保証できないよ?」
わあい、なんてユエラは手放しで喜びの声を上げた。
それからぷるりと突きだされた小さな臀部。にょっきりと伸びる青い鱗の尾っぽを恐る恐るの体で手を差しむける。
「はーぁ! これが明人の言ってたぷにぷにのもちもちってやつなのねぇ!」
上質な肌触りをした尾っぽを撫でる。するとユエラは切れ長の目尻をうっとりと下げて見せた。
尾を撫でる手つきはとびきり優しく、まるで子猫を愛でるよう。
種の姿を借りてナチュラルスキンとなった龍の尾は格別なのだ。それは誰より明人が保証する。
「ご期待に添えられたのならなによりだ。それにきみはとても素敵なせせらぎを奏でる子だね」
目を滲ませ感涙を浮かべるユエラを見つめる青い瞳も、子を見る親のそれ。
唐突に述べられる聞き慣れない単語に、ユエラは尾を撫でる手をふと止める。
「せせらぎを奏でる?」
「せせらぎはせせらぎさ。低いと淀むし、高いと荒れる。だけどきみの心の音はとても優雅にせせらいでる」
とらえどころのない微笑を浮かべながらスードラは野太い尾っぽをぐねりとうねらす。
それから両目を閉じ首を傾け耳をユエラのほうへとむける。
「自分には聞こえない音だからね。心の音っていうのは客観的だからこそ嘘偽りなく聞こえるものさ」
そう言って瞼を開くと猫のようにうんと目を細めた。
見た目はどうあっても少年だが気性は穏やかで、どこか包み込むような温かさがある。好奇心旺盛で天真爛漫なタグマフと彼はおよそ真反対の位置にいるような気さえする。
「本当に安全なんだな。てっきり龍にマトモなやつはいないのかと思った」
だから明人の感想も贔屓目で、ユエラとスードラの触れ合いを心穏やかに傍観することができた。
リリティアが安全だと言ったからということもある。しかしユエラが混血であると知っていてなお話題に上げない深慮も評価に値した。
この大陸で見た目というのは信用してはならないと、彼はそこそこ学んでいる。ここエーテル領は目が痛くなるほど美男美女ばかりだし、隣国のエルフたちも上物揃い。ドワーフは筋肉だるまと幼女ばかりで犯罪指数が高い上、オカマが王をやっている。ゲイの白狼もいれば近ごろどんどん可愛くなっていく弟弟子もいたりと隙がない。
「まったくしょうがないですね。ユエラはちょろいから家族として心配になっちゃいます」
微笑ましく見守っていた明人の耳に不穏な声が聞こえてきた。
「ユエラ気をつけて下さい。海龍は物凄いナルシストでぶりっ子です。油断していると痛い目にあいますよ」
そう言ってリリティアは、はふっと小さなため息を漏らす。
尻尾を撫でていたユエラの行動もまた迅速だ。
ぎょっとした顔で僅かに肩を上下させながらすでに結構な距離をとっている。
「白龍ってば外聞が悪いこと言わないでよぉ。さすがのぼくでも外の子に手をだすような危ないことしないってばぁ」
スードラの表情はまるでつけ替えができる仮面だ。
一瞬だけしていた硬い肉を噛むような顔は影もない。ただ子供らしい笑顔が白々しくそこにあった。
腰をくねらせ尾を揺らし彼は愛嬌を振りまくような身振り手振りで抗議した。
「まあ白龍の知ってるころのぼくは確かにそうだけどさ。でも雑食だった昔と違って今はいちおう選んで食べることを心がけるようにしてるんだよっ?」
「どうですかねぇ? アナタのことだからその愛くるしい見た目を武器にあわよくば懐柔しようなんて企んでいたのでしょう?」
リリティアにアザトイぶりっ子の演技は効いていない。
旗色が悪いと察したか。スードラは途端にがっくり肩を落としす。
それから懇願するように手を結び、うるうると青い瞳をしっとりさせる。
「ぼ、ぼくだって背の高いワイルドな感じになりたかったんだよぉ……。それなのに邪龍と黒龍が無理やり勧めてくるんだもぉん……」
あまりに露骨すぎる芝居だ。しかし彼の素性を知らずに見れば心を鷲掴みにしかねない中性的な愛らしさがまた危険因子でもある。
一見すればリリティアとスードラのふたりの関係性は仲良しに見えなくもない。
しかし彼女にしては珍しい虫を見るような薄目は彼へ侮蔑の意思を示している。
とすればワケ知った友というより互いの性格などを熟知したただの知り合いという仲なのかもしれない。
なぜだか心のモヤが晴れたのを感じて明人は腕を組む。肩の筋肉が丸くボールのように盛り上がる。
「とりあえずそのへんの龍族あるある的な内輪話は後にしよう。まずはこれから岩龍の処遇について――」
このままでは埒が明かないから本題に入ろうとし、思わず彼は喉に言葉を詰まらせた。
好意でも熱意でもない別の感情が真っ直ぐむいている。純粋でオーシャンな色をしたくりくりのあどけない瞳が、逸らされることなくじっと明人を見上げている。
「なんでかな? きみから黒龍の匂いがするね。それもかなり強い……ひと晩をともにしたのかってくらいとてもとても強い匂いだ」
スードラは、まるで彼の心の奥底を読むような物静かさで呟いた。
話題に上がったのは胃の痛くなる話である。なにせ明人はセリナとワダツミの旅館で一晩の誤ちを犯していた。
ただし犯したといっても酒の誤ちのほう。そこから先は一緒の布団で一緒に寝たというだけ。ゆえに彼の体はいい年しても綺麗なままだ。
「それに白龍の心の音もだ。まるで清流のように澄み渡ったせせらぎが聞こえてくる。昔は仄暗い洞穴に溜まった汚泥くらいあんなに深く淀んでいたはず……長く生きているけどこんなことはじめてだよ」
海龍。警ら役の指導者たる彼が龍族の長に信頼され外にこうしてでている理由を、明人はなんとなくわかった気がした。
その小さな身でありながらも研ぎ澄まされた観察眼をもっている。1を聞いて10を知ることの難しさといったら才能でどうこうできるモノではない。積み重ねた経験と体験が成し得る熟練の技だ。
逃げだした龍に対して辛く当たるでもなければ、世にも珍しい彩色異なる瞳にすら触れもしない。
リリティアの言っていたマトモとはこういうことなのだと理解する。
「ぼーっと見つめ合っちゃってどうしたんです? ちなみに今のは海龍の額についている宝玉の占いなんで、あまり深く気にしないほうがいいですからね?」
黙り込んでうつむく彼を、リリティアはきょとんきょとんと体をリズミカルに左右へ揺らしながら覗き込む。
だが返事はない。代わりにいつの間にかピザ窯の前に移動していた食いしん坊がこちらに駆けてくる。
「リリティア大変よ! 茶色い肉々しいピザが窯のなかでいい感じに焼けてるわ!」
「――はっ! それは明人さんが作っていたピザじゃないですか!? 私も食べそびれていた明人さんの手料理を食べたいです!」
走り去っていくふたりの足音は、思考の迷宮に飛び込んだ明人の耳に届かない。
もしこの出会いが仕組まれたものだとすればおめおめと見逃す手はないのだから。
「もしかしたらこれでチャプター2にいけるか……? いやでもそうなると西側の戦力が偏ることになる……」
脳からあふれた文字が口の中からあふれていく。それでも戻ってこられないくらい真剣な熟考だった。
もはや癖のように大きな手で口元を覆いつくす。思考する姿はことほどさようになかなかサマになっている。
撃てる弾はいくらあっても足りないということはない。足りなくなるのは、足りないから。ならば余るくらいが丁度いい。
「リリティアは連れていけない……ユエラにもやってもらわなきゃならないことがある……」
現在は偉大なる作戦の準備段階。チャプター2の舞台は龍の住まう大陸の東側。
しかし東側に剣は立ち入れない。はぐれ龍がみすみす檻のなかに戻れば多くの龍たちによって捕獲されてしまう。
だからといって無力な鞘である彼のみがこの大陸で生き残ることはほぼ不可能に近い。人間如き弱者は魔物にとって良い餌だ。
計画によれば1回目は、まだ骨組み。対応可能か仕分けの段階となっている。そこで朽ちるのならこの世界は確実に最悪の終焉を迎えることとなる。
「戦力……魔物如きにやられない戦力……。顔がそれほど知られてないLクラス以外の……。しかも東側で充分に立ち回れるだけの優秀な戦力……」
その漏れた心の声こそが計画の真実である。
つまり明人は、リリティアという強力な守護者抜きでドラゴンクレーターに乗り込もうと画策していた。
セリナの機転のおかげで内側の龍とのコネクションが作れた。少なくともこれで内通者と口利きくらいには使える。
あと計画に必要なのは、顔の広いLクラス以外の、明人を守ることができ、多少なりとも危険に立ちむかえる、暇なやつ。
条件の縛りの多さに明人は、がっくりと両肩を落とし重いため息を吐く。
「ハァ……時間も限られてるなかでそんな優秀なやつがいればなぁ……」
弟弟子が条件を満たす有力候補だが、それは最終手段だった。
双腕の手を煩わせているのは明人だ。きっと弟弟子は師の代わりに依頼の山を処理するためてんやわんやであることが予想される。
だからといって弟弟子と同居していてLである硬くて大きもの好きは却下だ。まずもってクレイジーすぎるため手に負えない。
それ以外にもいくつかの案があるのだが、やはりどれも決め手に欠けていた。
「リリティアの優秀さと従順さが大きな壁になるとは思わなかった。……ん?」
悩める視界に、超至近距離で赤いなにかがにょっきり生えてくる。
「――うおッ!? リリティアの顔が滅茶苦茶近いッ!?」
その血の気も凍りつくような威圧感によって現実へと引き戻された明人は、飛ぶような勢いで後退した。
気づいたときにはもう遅い。目の前にはリリティアがほかほかのピザを携えて立っているではないか。
「今、明人さんは私のことを壁って言ったように聞こえましたけど……?」
ひとまずピザを皿の上に逃し、たおやかな笑みが浮かぶ。
そして次に見開かれた目には怒りと衝動の赤が灯っていた。
明人は秒速で弁明する。
「言ってないです。それよりオレの故郷の味のピザを一緒に食べませんか?」
シャルウィーピッザ。突如として現れた理不尽な状況から意味不明な英語が飛びだす。
同時に機械的でいて紳士的な動作で、壁からピザへと話題を無理やり変更させた。
皿のようにした手が差しむけられたのは皿の上。今まさに窯からとりだしたであろう明人渾身の1品が完成している。
そんなやぶれかぶれでだした手へ、そっと細くて人肌よりもちょっぴり暖かい手が添えられた。
手に手を重ねたリリティアはスカートの端を指でつまみ、深々と礼をくれる。
「明人さんのお誘いとあればそれはもう喜んでお受けします。」
明人の心の叫びが届いたのか、彼女の瞳もすっかり元の優しい色合いに戻っていた。
「でも後でゆっくりとお話を聞かせていただきますからね? 覚悟しておいて下さい」
しかしどうやら許されていないらしい。貧乳の恨みは粘り強い。
ともかく明人は頭上へ隕石が降り注いでくるような不幸から九死に一生を得ることに成功する。
「ところでコレはなんというお名前のお料理なんです? なにかこうテカテカして甘酸っぱい感じですね」
動悸する胸をおさえて呼吸を整える明人への問いかけ。
リリティアが丸い腰を突きだすと、白いカーテンのような布が顕著に丸く弧を描く。
しげしげと色味の少ないピザへ興味津々な様子だ。
「あ、ああ……これは照り焼きピザだよ」
「――てりやきっ!?」
またも横から生えてくるユエラの顔をぐいっ、と退かして明人は説明をつづける。
どうやらスードラもピザの存在が気になるようでクンクン匂いを嗅いだりと忙しい。
そうなると、和風――日本のことは伏せるべきだろう。そこまでの情報をくれてやる必要はない。
「しかもこれは照り焼きマヨネーズ――ッ!?」
照り焼きピザの説明中に突然の異変が起こった。
庭先に不自然なほどの瞬間的な暴風が突如として吹き荒れる。
その正体は渦巻き、舞い上げるようにしてピザから穏やかに立ち上っている甘酸っぱい匂いを乱す。
「突風だと!? まさかまた龍がッ!?」
視界の潰されるなか明人はユエラを守れる位置で強風を凌ぐ。
呼吸すらままならぬ暴風。ともなれば脳裏に浮かぶのは岩龍の使った翼による一撃だ。
上空に現れる逆光の巨影。そしてわっさわっさと空を押す豪快な羽ばたき。
龍の存在を確認し、最悪の日だなんて今日を呪うのも束の間のこと。明人の脳へ、やけに無気力な無声会話の音が強引に木霊する。
『む、すまない。龍の気配を察知してきてみればまさか食事中だったとは思わなかった』
「あっ、黄龍じゃないか! なんだいなんだいふたりして外にでるなんてズルいじゃないか!」
『……海龍か。ということは俺のときと同じく指導の任についたということだな』
だがよくよく見ればなんてことはない。黄色の鱗に覆われた龍が国旗の如く巨大な翼で滞空していた。
海龍スードラが、白龍リリティアと知り合いならば、黄龍ムルガルと知り合いでも辻褄が合う。
黄龍の存在に安堵した途端に、明人の足から力が抜けた。
「なんだよムルガルかぁ……びっくりしたぁぁ」
久しぶりの友の来訪を歓迎したいところだったが、明人はぺたんと尻もちをついてしまう。
彼こそが黒龍に連れられ外に逃げだしてきたもう1匹のはぐれ龍。その後は親切な聖騎士に引きとられ家で静養をつづけているはず。
逼迫した状況なだけに勘違いしてもしょうがない話ではある。こうタイミングが重なるのは勘弁願いたいものだ。
「家が壊れるから飛んでくるのはなしにしてくれ。遊びにくるのは歓迎だけど、離れた場所で種の姿になってくれないか」
『ふむ、少々配慮が欠けていたようだ。次からは気をつけ――』
さらにその低く透明感のある無声会話と羽ばたきすらも掻き消すものがあった。
彼の爬虫類の如き手より身を乗りだす影がふたつほど、そこにいる。
「ちょお、イキナリどうしたのよムルちゃん!? この高さからだとアナタじゃ危ないからもうちょっとだけおとなしく座ってなきゃ――すごい力!?」
銀糸銀燭の髪と瞳。肩から前へ垂らした三つ編みを乱しながら、小さな影をとり押さえている。
エーテル族である彼女でさえ手に余る暴れよう。小さいほうがじたばたするたび三角帽子の星がぶんぶん振り乱れる。
「まよーーー!! まよまよまよーーー!!! まよおおおおおお!!」
そしてひとりの少女から歓喜に似た叫びが森の海を割らんばかりに、放たれた。
「わあああ!? ダメッ、これ以上はもうもたないわ!? だからガルちゃん早く着陸してぇぇ!!」
『了解だ。こら、あまり暴れるんじゃない』
騒がしいカラミ家一行が、ドゥ家の敷地にやってきた。
そしてそれはこの西の地に最強種族たる龍が4匹集結するということ。
しかし明人の瞳には、龍すらどうでも良くなるほどの白く眩い光明が見えていた。
「ムルちゃん、あぶなっ――ぐへぇ!? ……うきゅ~」
白い鎧の白い騎士が着地を失敗し、晴天に尻をむけて目を回している。
そんな彼女は上位と呼ばれるエーテル族である。
さらには弟子をとりたがらない剣聖に剣術指南させた唯一存在でもある。
「そうかッ! 都合のいい暇なやつが意外と近くにいるじゃないかッ!」
ともに東へ乗り込むのであれば、聖騎士こそが最適解だったことを知る。
◎◎◎◎◎




