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【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
7章 あの子は大きい この子も大きい そしてオレはもっと大きい

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141話 とっても残酷で救いようのない未来へ

ひとりのエルフがいました

彼女は村の薬師でした

とても好かれて人気者でした

とても楽しく暮らしていました



その日までは

 エルフ領南端の海が見える村に、とある女性のエルフが住んでいた。

 気立てもよく、拙いながらも親身になって治療してくれる。そんな村にたったひとりの薬師。村のエルフたちからは、たいそう可愛がられ重宝されていた。 向上心が高く、守るべき者たちの笑顔に囲まれながらも切磋琢磨する居心地の良い幸せなエルフ。しかし、そのときは訪れる。

 ここまでがおそらくは導入なのだろう。


「だがな、薬草の採取中に魔物に襲われたんだ。ま、よくある話だな」


 上着を脱いで半裸になった明人の背にチャルナが緑色の薬を塗りたくる。

 抱えた壺いっぱいにすり潰した青臭い薬草が詰まっていた。

 対して明人も治療中の身であるため、暇つぶしがてらに依頼者の話に耳を傾ける。


「ただ、ちっとばかしさらったのがヤベー魔物だったんだ」


 女性エルフをさらった魔物の名は、オーガ。

 知能はなく、4メートルほどの巨体で豪腕を振るう魔物だった。

 剣聖の庇護下にある明人にとっては、晩ごはん。しかし、大陸でいえば上から数えたほうがいいくらいには恐ろしい魔物だという。クエストの斡旋所にオーガの首ひとつもっていけば2年は遊んで暮らせるほどのハクと額がつく。

 オーガとは捕らえた獲物の両足をまずへし折って巣にもち帰る習性がある。さらわれた女性は、のべつ幕なしに孕み袋へと堕落する。

 汚れは、決して獲物を殺さない。内側から養分となって獲物を生き長らえさせる。永遠に。獲物が死ぬまでは。

 通常であれば、悲惨な未来を思い描き、舌を噛むなりして死を思う。もし死ねずとも、その時点で時計が寿命の秒針を刻みはじめる。


「でも、そのエルフは違ったんだ」


「違った……?」


「死を望むことを拒否したんだよ。しかもどんでもねぇ精神力でな」


 チャルナはせっせと治療を施しながら続きを語っていく。

 そのエルフは違った。望まぬ行為に汚されながらも生きつづけたのだ。

 そのせいでオーガが産まれ増えつづける。それでも少女は憎悪を畏怖の感情を滾らせながらいずれくるであろう助けを、希望を待ちつづけた。


「当時エルフとドワーフは戦争の最中だった。そのため村には、なかなか救出隊は派遣されない」


「……よくあることだからか?」


「そうだ。魔物の誘拐話なんて国が動くほど大きな事件でもねーし冒険者に任される」


 繰り返される暴行と出産。

 彼女は心が挫けそうになりながらも、村で過ごした幸せな時間を糧に耐えつづけてしまった。

 そのまま150年の時が過ぎ去る。


「オレだったら誘拐された瞬間に舌噛む自信があるぜ」


「ま、実際舌を噛んでも人って死なないらしいけどな」


「自害の遠回しな言い方だっての」


 深刻そうな顔をしながらチャルナは、手際よく明人の体に清潔な包帯を巻いていく。

 対して明人は、予想以上にヘヴィーな話だったため依頼者に悟られぬよう眉をひそめた。

 国が兵を寄こした理由は、オーガの異常繁殖を感知したから。それはもはや戦争ですら手につかなくなるほどに。

 村の近隣で薬草を採取していた女性エルフ。無論、近場にオーガの巣穴がある。

 当然、村の被害は甚大だった。


「そういうパターンって今までなかったんだ。魔物に捕まったら自死、それが常識ってやつよ」


 壺のなかを指でひとすくいしたチャルナは、それをパクリと頬張って、咀嚼する。

 唾液と混ぜることによって伸びをよくしたり、薬草を水で溶くという工程が省けるらしい。

 その楽する姿勢を明人は、見たことがあった。


「……その方法、チャルナがユエラに教えたのか?」


「ひらへーよ。かっへにまねひてるだけはろ」


 別にいいかの精神で明人は、黙ってチャルナのもぐもぐを見届けた。

 幾つもの死を重ねて救出された女性エルフは、治療を終えて村に帰った。自身が産んだ子供によってボロボロになった村に。

 村人たちは、彼女を蔑み罵倒した。飛び交うのは、なぜ諦めなかった、なぜ死ななかった、などの心無い言葉だけ。それは覇道の呪いが関係のない、同種に対しての純粋な差別意識だったのだとか。

 孤立無援となってしまったエルフの女性は悲しんだ。悲しみに喘ぎながらも傷跡の残った体を治癒するために腕のいい薬師を探した。


「んで、遠縁のコネで王族のお抱え薬師だったオレに出会うわけだ」


「そりゃ不幸な話だな」


「バカ。こっからが不幸な話だっての」


「ここからもの間違いだろ……」


 んべっと吐きだした草色の液体を明人の右腕、にゃにゃにゃ戦での負傷跡に塗りつける。

 大雑把さはユエラと似ているが、治療は手慣れていて痛みはない。明人は、安心して暮れゆく空を見つめた。

 長期的な治療によってもとの美貌をとりもどしたエルフの女性は、感動のあまりにチャルナへ弟子入りを申し入れる。

 戦争によって負傷者が後を絶たないためチャルナも喜んで薬師の育成を受け入れた。


「それが……間違いだったんだ。150年だぜ? 精神的に壊れててもオカシクない。でも、そんな気配は毛ほどもなかったんだよ。もし、知ってたら……薬の作り方なんて教えなかった」


 治療の手が止まり、チャルナの長耳がしおれる。悔しさを噛みしめるようにギリリと奥歯を鳴らした。

 弟子入りした女性は、とても気さくで、とても熱心に薬学を研究した。

 しかし、その裏に凶悪な目論見があることを後に知ることとなる。


「あんにゃろう……自分の住んでた村に薬学を応用してできた強烈な毒を巻きやがったんだっ!」


 顔を中央によせるようにしてチャルナは、憎々しげに喉の奥から怒気を絞り出す。


「……ふーん」


 なんとなく先の読めてた明人の感想は、特になかった。

 ただただ治療の終わりを待つだけ。思い当たるエルフもすでに頭のなかでせせら笑っている。

 生き残った村のエルフによれば、村の民たちは寝ている間に溶けたのだという。

 捜索隊が毒の有無を確認して村に入ると家々には、ぐずぐずに赤黒く染まったシーツの染みだけが残っていた。

 それ以降、おぞましい過去を残した海の見える美しい村は、閉鎖されている。


「これが……海辺の村1つが消えた真実だ。そしてオレの犯した罪の……懺悔だよ」


 そして、エルフの女も姿を消した。

 ティルメル・アラック・アンダーウッドは、二度と師であるチャルナの前に姿を現さなかったという。


……………



 治療を終えた明人は、包帯でぐるぐる巻きになった体に衣服を羽織った。

 辺りはすっかり暗くなって月の光が苔生した村道に斑点を作っている。


「オマエ……ユエラのいった通りマジで過去とかに興味ねーのな……」


 チャルナは、疲れ顔でため息をついた。

 店の品をごっそりとシートに包んで巾着のように結ぶ。なかで瓶が窮屈そうにぶつかり合う。

 それを横目に明人は、ぼくとつとした調子で答えた。


「まー、知ってても知ってなくてもやることは変わらないしなぁ」


「ストイックなやつ……。オマエ、商売に向いてるぜ……」


 微かに香る青臭さは、報酬の先払い。明人は、チャルナの依頼を快諾した。

 内約は、ティルメル・アラック・E・アンダーウッドを、(ゆる)すこと。

 ティルメルによってチャルナは利用されたが、己の愛弟子であった過去を忘れられず。

 しかし彼女の実行した復讐は最悪だった。だが、150年の拷問に村からの迫害されるという辛辣な過去も知ってしまった。

 弟子に与えてしまった力。チャルナはその罪の意識はあるため都を離れ、この村で小さな商売をしているのだという。

 赦す。つまり、この依頼は、騙されたことへの復讐や恨みの類ではない。


「酷な役を押しつけて悪いが……アイツを恨みつらみから開放してやってくれ。もう……誰も苦しまずにすむように」


 チャルナは、自身の胸元までよれた服の襟をきゅっと掴んだ。

 こちらを見上げる滲んだ瞳が微かに揺れる。その願いが深いことを明人は、襟を正しながらも知る。

 しかし、すでにはじまっている救済の導討伐作戦に変更はない。上手くいっているのであれば、もうティルメルすらこの世界にいない可能性もあった。

 ティルメルに負けず劣らずの残酷な方法によって人間は、勝ちを得ようとする。

 今回の策は、それほどまでに凄惨なものだった。


「……ん?」


 ふとここで、見慣れたものが明人の前に現れた。

 叩けば長く響きそうな重々しい見た目の梵鐘なる大扉の魔法である。

 同じく横でそれを見ていたチャルナは、ピコリと長耳を揺らして縛っていた布をもう一度広げ直した。


「あー、忘れてたぜ。そろそろ染色剤がなくなる頃だもんな」


 そう言って、乱雑に散らばった商品のなかから小瓶を拾い上げる。

 なかにはイカ墨の如く黒々とした漆黒色の液体が詰まっていた。

 仰々しく居座った大扉が、太くて低い音を鳴らしながら中央から開いていく。


「お、おい……。お、オマエなにやってんだよ……」


 明人の行動に不審を覚えたか、チャルナは慄きながらも小首を傾げた。

 無視して明人は、扉の向こうに広がったうねる闇に、躊躇とまどううことなく左手を突きだした。

 なかからはふたり分の足音と女性の声が響いてくる。


「クックック、貴様もこの色に拘るとはなかなかにいいセンスだな」


「フフッ、漆黒……胸が躍る色。私の象徴。暗黒は、現世ですらを塗りつぶす」


 愉快げな笑みと接近してくるヒールの音だった。

 そして、暗黒の笑みを浮かべた明人の手がむにゅうっという大福餅のような感触を覚える。


「――ぴっ!?」


「《マナレジスター》!!」


 叫ばれるより先に薬指の根本で蒼が展開した。

 弾け飛ぶ。ベルのような前開きのスカートが特徴的なモノクロ色のドレス。剥かれた下には雪のように白い肌と抑揚の激しい肢体が広がっている。

 相手の体内マナを散らせる銀を基調としたブルーラインの入った呪いの指輪。まなまなちるちるではなく、《マナレジスター》。別名、魔装散る散る。


「チッ……はずしたか」


 明人は、標的が違ったことで舌を打ち、白く柔らかな胸から手を離した。

 被害者であるエリーゼ・コレット・ティールは、短く鳴いて、固まったまま動かない。

 僅かにぷるぷる震えて、その動きに合わせて両端で括った長い銀の髪も小刻みに揺れた。

 闘ったのはもはや過去の話。現在、明人によって救済の導を思い出すなという魅了をかけられたエリーゼは、エルフ女王のもとで楽しく暮らしている。


「ムッ……? な、なぜ貴様がここにいる!?」


 後からでてきたヘルメリルは、村にいるはずのない明人の顔を見てすくみあがった。

 その髪は、普段と違って美しい若葉色をしている。キューティクルが綺麗な纏まった髪。

 瞳も血のような朱ではなくてエルフの特徴である黄緑色だった。


「オマエ……染めてたのか……。どうりで……」


「ち、ちがっ――違うぞっ! 今日は、たまたま男にはいえないようなそういう日なんだっ! わかるか!? 説明は、NPCが男だからできんが、そういう日なんだっ!」


「どういう日だよ……。別にその色でも可愛いからいいけどさ」


「きゃっ、きゃわっ!?」


 油断しきっていたのであろうヘルメリルは、明人がぽろっと溢した本音を聞いてわたわたしはじめた。

 気を動転させるように慌てふためく女王、剥かれて下着姿もまま佇む上位種エーテル族の女。そして、意に介さない人間。

 そんな異色極まる光景を前にしてチャルナは、小さくため息をついた。


「ああ、ここまでユエラの言った通りだったとは……。マジでオレの遠縁の雇い主をおもちゃにしてらぁ……」



○○○○○

一切戦争の役に立たない継ぎ接ぎがいる語らずのSSコーナー

……………

「そ、そそ、そんなことはどうでもよいわっ!」ビシッ


「お、持ち直したな」


「なぜ貴様がここにいるっ!」


「ここにいる理由は、オレも知らないんだなーこれが」


「むぐぐっ! ブラッドクロスよ! なぜ貴様がNPCの治療をしている!?」


「明人には依頼をしてたんだよ。ちょっとしたね」


「ぶ、ぶらっどくろす? なんだその名前?」


「むん? ブラッドクロスは、光輝たる威厳に満ちた女王である私の遠い親戚だ」


「そゆことだ。オレは、語らず様のお抱え薬師だったってこと」


「ほーん。だからチャルナ・オン・アンダーウッドか。オンだかアンダーだか訳のわからない名前な」


「クククッ、そういうことだ。女王である私の血筋はすべてそうなる」


「地球と違ってイマイチ名前のシステムがわからん……。いやまあ、地球の画家とかもたいがいだったけどさ」


「そういや明人よぉ。語らず様って叩き上げなの知ってたか?」


「……マジで? 女王に叩き上げ!? すごすぎんだろ!?」


「平民から努力し――」


「天性の神がかった才能としたたかな柔軟性のある対応力による賜物だっ!」


「あー……へいへい。いつもよりも反骨心が旺盛のようで」


「あっ、そうだ。ヘルメリル」


「むっ? なんだNPC?」


「ちょうどいいからリリティアたちが戻ってきたら大扉で家まで送ってってくれないか?」


「フフンッ、構わんぞ! もっと私を頼るといいさ!」デン


「そういうとこ憎めいないよな、オマエ。ともかく、さんきゅーな」


「……また、胸の触られ損……」プルプル

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