18-1
「ご無事でしたか。ご主人様」
フィナさんたちの場所へ戻る時、リリエルが上空から降りてきた。
リリエルは俺が戦っていることは知っていたが、海の神の力によってあの空間に入ることはできなかったらしい。
だから戦いが終わった俺の下へ一目散にやってきたのだ。
「うん。大丈夫」
「まさか海の神を倒されたのですか?」
「まあ、俺の力じゃないけどね」
「流石です」
「ありがとう」
どうも、リリエルは俺が神様と出会ったことは知らないみたいだ。
神様が会いたくなかったのだろう。だから何かしらの力で出会いを防いだみたいだ。
フィナさんたちの場所へ到着するとリリエルは海の女神を見るや否や嫌そうな表情をする。海の女神が俺に対して心配そうに言った。
「海の神は?」
「倒された」
「倒された?」
「そう。戦うことになって、負けて、そしたら助けられた」
「誰に?」
「さあ?」
海の女神は意味が分からないと言った様子で首を傾げる。
真実は伝えない。神様は多分、言いふらされるのは好まないと思ったからだ。
「腑に落ちないけども。良かった。無事で。そして、ありがとう。つまり、私は自由ということよね?」
「そういうことじゃないか?」
「やったー!」
海の女神は万歳して喜ぶ。
なんて分かりやすい喜び方だろう。
「そうちゃんとともにいれば大丈夫とは思っていたけども、まさか倒してくれるとは」
「だから俺が倒したわけじゃない」
「でも、そうちゃんがいなかったら倒されなかったでしょ?」
「まあ、そうなるな」
「ふふん」
海の女神のそんな声に起こされたのか、フィナさんが眠たそうに起き上がる。そして見計らったかのようにシンシアさんが戻って来た。
「今戻った」
「お帰りシンシアさん」
「何かあったのですか?」
「ううん。別にないよ」
「そうですか」
フィナさんは不思議そうにそう言った。
するとシンシアさんが俺のすぐ隣まで近寄ってくると、耳元で俺に向けて囁く。
「海の神はどうなったんだ?」
「シンシアさん、やっぱり見てたのか。いろいろあって、倒された」
「倒された?」
「うん。倒された」
何とも曖昧な返答にシンシアさんもまた不思議そうな表情だった。
これで良いのだ。
これで。
すぐ近くでレナちゃんが何も知らない無邪気な顔で可愛らしく寝息をたてていた。




