17‐2
呪いの力。
神様は俺に対して美女と遊べない呪いをかけたとかどうとか言っていたっけ。実際にそんな呪いが掛かっているのかどうかを確かめる術はないし、神様に合えない以上真実かどうかは分からないままだ。
でも関係ない。
使うんだ。
今ここで。
俺は立ち上がりながら、呪いのことだけを考える。
「諦めたのかい?」
「残念ながら俺の辞書に諦めるの文字はない」
「へぇ」
呪いの力が効くかどうかは分からない。
もしかしたらあがきになって、結果的に負けるかもしれない。
それでもいい。
それでいい。
諦めてはいけない。
「そろそろ攻撃を再会するよ」
海の神は手を上に向けた。
水の槍ではない。
魔法ではない。
それは神の力。
今この時点まで、海の神は一度たりとも神の力は使っていなかった。それはどちらかというと俺が使う力に近いもの。
小さな灯の中、現れた水色の火が海の神の周りを漂い始めた。
「何それ」
「水の火だ」
「…………?」
「これは水だ。これは火だ。冷たくもあり、熱くもある。液体であり、気体であり、個体でもある。そんな不可思議な物体さ」
「そんなものが攻撃に使えるのか?」
「ああ、もちろんだとも。だから使ったんだ」
海の神はその一つを俺に向けた。
ゆっくりと飛ぶその水の火は俺のすぐ目の前まで来る。その瞬間、音なくその水の火ははじけ飛んだ。
巨大な爆風と熱を放出し、咄嗟に作った壁をいともたやすく粉砕し、海の神のすぐ目の前まで巨大な水のドームを作り上げた。
俺ははるか彼方へと飛ばされた。
なんだよ、あれ。
地面を転がりながら、俺は思う。
体はもう思うように動かせない。意識も少しずつ遠のいていく。
そんな俺のすぐ目の前まで来た海の神が教えてくれる。
「あれでも、小さな灯さ。大きな灯になれば、今以上の力も発揮できる。これでも手を抜いているのだよ?」
俺はそんな中でも、呪いについて考えるのを止めなかった。
体は思うように動かない。
でも絶対に負けない気持ちでいる。
諦めたりはしない。
俺はゆっくりと海の神に向けて手を動かした。




