14‐5 神様の独り言5
「まずいわね」
神様はその境目で、無の神が現れたことに対して言った。
無の神。
その存在は神様が生んだものではない。
「太陽の神、月の神ならまだ計画に問題はなかった。でもあの子が出るとなると話は変わってくるわね。あの子は私の制御の外にいるから」
あちらの世界の神はすでに帰っている。
だから独りぼっちで。
神様は自身の髪をかきあげる。
「仮に私に名前を付けるとするならば、私は有の神。この世にすべてを与える存在。でもその子は違う。私の対極の存在。この世からすべてを取る存在」
ふいに。
無の神がこちらを見た。
誰にも気づかれないはずの千里眼が彼女に気づかれたわけである。
「人の心を読むのはいけないこと、ね。それはもしかして私にも言っているのかしら?」
無の神は神様と違い、神たちと友好関係を気づいている。
だから厄介だ。
「ねぇ、無の神」
神様は続ける。
「私たちはかつて一つだった。でも何時か、私たちは離れ離れになってしまった。私たちがそれぞれの手でこの世をより良くするために。でもうまくいかなかった」
神様は静かに涙を落とし。
「私はもうこの座にいたくない。私はもう傷つきたくない。あなたもそれは同じでしょう? それなのにまた私の邪魔をするの? どうして? 一体私が何をしたというの? どうして私は我が子たちから嫌われなくちゃいけないの?」
神様は膝を抱える。
「この世界は腐っている。だから滅ぼさなくてはいけない。そして新しく世界を作り上げなくてはいけない。そのために、私は後継者を必要とした。そしてこれはあなたも望むはず。それなのにどうして邪魔をするの?」
無の神はその神様の言葉に反応し、千里眼で見る神様の目をしっかりと見て口を開いた。
それは私の仕事です。
そう無の神は話した。




