14‐4
「できません!」
俺よりも先にリリエルが海の女神のお願いを断った。
それに海の女神が驚いた表情をして、俺から手を離す。
「どうして?」
「ご主人様はこれから信仰を集めないといけないからです」
「信仰? どうして?」
「ご主人様の存在が知れ渡っていないからです」
「それは創造主様にも必要なことなの?」
「ええ、もちろんです」
そうリリエルが答えると、無の神が不思議そうな表情をした。
「創造主に信仰なんか必要ないことは知っているでしょう?」
その言葉にリリエルが黙った。
必要ない?
どういうことだ?
今まで信仰が必要だと聞いて、必死になって集めていたけども、そのすべてが意味がないとなると話が変わってくる。
リリエルは何を考えているんだ?
良く分からん。リリエルなりの考えがあったのだろうけども。
「あなたなりの考えがあるのでしょうけども。どうしてでしょうか?」
「それは」
「いえ、考えというよりも、自身のわがままに近いのでしょうか?」
「…………」
そんな会話をする二人。
そこで俺はふと思い出す。
そう言えば、俺には人の心を読む力があるのだった。天使の心の声も読めるのだろうか。なんて考えて実行に移してみることにする。
えっと。久々だから忘れてしまった。手順は、と。
「人の心を読むのはいけないことですよ」
すると無の神が俺に向けて指を口に当てて言った。
思わずドキッとしてしまう。
何故ばれた!
「心を読む?」
「そうちゃん、そんなことできるの?」
リリエルと海の女神が俺に視線を送ってくる。
まずい。
非常にまずい。
人の心を読む変態だと思われてしまう。
俺への感情が一転しまいかねない行為だ。どうしたものか。どうすればこの危機を回避できる。考えるんだ俺!
「いや、できないよ?」
「へぇ」
「ホントだよ。ホント」
「私はご主人様がそんなことをしないと信じています」
「大丈夫。俺は紳士な男子だから」
「少なくとも、ついさっき使おうとした時まではあなた方二人の心の声は聴いていないみたいですね」
「何で、あんたそこまで分かっているの?」
そう言って、俺ははっと気づく。
リリエルと海の女神が微妙に距離を取っている。
「まあ、していないなら。良いのかな」
「私はご主人様のことを信じ、そして愛しています。例えご主人様に心の声を読まれても、気にしません。ええ、気にしません」
海の女神はともかく、リリエルから嫌われるとは思いもしなかった。
ちょっと悲しい。
それよりも。
「あんた一体何者なんだ?」
「私は無の神です。それ以外の何者でもありませんよ?」
「いいや、違う。俺が前の創造主のことを神様と呼んでいることも知っていた。一体俺のどこまでを知っているんだ?」
「そうですね。あなたの前世までご存知ですが」
無の神がそう言って笑った。
「あなたが何故後継者に選ばれたのかを含め、私は何でも知っていますよ。あなたが知りたいことのそのすべてを説明できますよ」




