2-1 フィナ視点
私は一人、森の中で迷子になりました。
付き添いの方達と逸れてしまったのですからまあ大変です。
しかも、付き添いの方達と約束させた規則がまさかこんな形で仇となるとは。今頃、彼たちは私を探すことを諦めてカロの街へ向かっていることでしょう。
危険な森の中、やっとで見つけた川を頼りに、私は家に帰ろうと思いました。
その時です。
私は驚きました。
何がですって?
空から人間が降ってきたのですから。
不思議な道具を使い、空高くから静かに降りてくる渋い顔の格好良い男性は川から這い上がりますと、ブツブツと独り言を言います。
そんな男性に私は勇気を持って話しかけます。
「…………あの」
「いや、俺は神様だからな。ただのモンスターに負けるわけがない」
気づいてくれませんでした。
それよりも、神様?
妄言、虚言を吐く癖でもあるのでしょうか。何にしろ自身を神様と例えるのは感心しません。
なんて思っていると男性は見たこともない魔法を使いました。
そう、無から、服を作りました。
錬金術のような。いえ、錬金術よりも更に高度です。何故なら、魔方陣や素材を必要としていないように見えたからです。
仮の話ですが。
本当に魔方陣と素材が必要ない時の錬金術にかかる消費魔力はとんでもないことになります。おそらく、本来かかる魔力消費の五倍、いえ十倍でもおかしくないです。ありえません。そんな魔法をいとも簡単に使えることが。
その後、男性が服を着替え始めました。見たこともない不思議な服です。
チラッと体が見えます。ガッチリした男らしい体でした。
はっ!
はしたない。
取り敢えず、目をつぶりましょう。
これは私は悪くありません。私に気づかない男性が悪いのですから。
着替え終わった男性にもう一度話しかけてみます。
「…………あのお」
「待てよ」
また男性の声に邪魔されてしまいました。気づいてくれません。どれだけ周りが見えていないのでしょうか?
男性は手に持つ服を地面に置き、両手をその服に向けました。
魔法を使おうとしているのでしょうか?
ですが魔力を感じません。
何も起こらない時間が過ぎ、男性は諦めたように服をまた手に持ちます。
何がしたかったのでしょうか?私には分かりません。
男性はまた魔法を使い、今度は鞄を作りました。そしてその鞄に濡れた服を入れます。降りてくるときに使った不思議な道具は畳んで隅へ。
そして、辺りを見渡します。不思議と私がいる方角を除いて辺りを見渡します。
「あの!」
流石に我慢の限界になった私は大きな声をあげます。はしたないですが仕方がありません。
男性は私の声にギョッとしたように体を震わせました。
「やあ」
と男性は挨拶をしてくれます。
それにため息混じりに私は言います。
「やっとで気づいてくれました。はい。初めまして」
「どちら様でしょうか?」
「フィナと申します」
これが彼との最初の出会いでした。