14‐1
設けられた場。
月の神、その天界の湖。そのはるか底に、満天の星が輝いている不思議な世界があった。
出されたテーブルと五つの椅子。
月の神、そして二人の女性が順に座り、俺も椅子に座ることにする。リリエルは座らず、俺のすぐ隣に立っている。
「まず、自己紹介から始めましょうか。私は無の神。こちらの方が月の神。そしてこちらの子が海の女神です」
「はあ」
無の神と名乗った女性はすぐ隣に座る海の女神と瓜二つである。
というか、無の神って。
なんだと無の神って。何を象徴しているんだよ。月の神とか海の女神とかもっと分かりやすいものにしてほしい。
まあ、そんなことは良いとして。
それよりも。
「もしかしなくても、無の神さんはその隣の海の女神さんと双子だったりするのですか?」
「まさか」
無の神が否定する。
なんだ違うのか。
「私は姿を見せることが出来ません。ですので、近しい誰かの姿を真似るのです。何時いかなる時も」
「そうなのか」
「ねぇ」
そこで初めて海の女神が口を開いた。
無の神の裾を引っ張る。
「この男は誰なの?」
「彼は創造主様です。いえ、創造主様の後継者が正しいでしょうか」
「創造主様? 何それ? 美味しいの?」
「食べ物じゃありませんよ」
月の神にしろ、この無の神にしろ、どういうわけか、簡単に俺が創造主の後継者だとばれてしまった。
人間からしたら神も創造主もそこまでの違いはないけども。神からしたらその差は大きく、すぐにわかるのだろうか。
本当に良く分からん。
「創造主様は神を作り出した立場です」
「へぇ」
「聞いておいて、興味なさそうに」
「興味ないからね」
じゃあ、なんで聞いたんだ。あんたは。無の神がかわいそうだろ。
というか、海の女神?
神とどう違うんだ?
俺からしたら目の前に並ぶ美少女たちはみんな女神みたいなものだけども。やはり明確な違いがあるからこそ別けて呼ばれているのだろうか。
「彼女、海の女神は海の神の妻です」
「ああ、なるほど」
隣で俺の気持ちを察したリリエルが教えてくれる。
「無の神」
この場に来てから、まだ口を開いていない月の神が口を開く。
「何故、我らが憎むべき創造主と仲良くする必要がある」
「分かりませんか?」
無の神が月の神に対してそう問いかけた。
どうも月の神は俺のことが嫌いらしい。いや我らと表現したから、他の神も同様に嫌いなのだろうか。
「彼はあの創造主様とは違うからです。今の内に私たちの仲間に取り入れるべきではないでしょうか?」
無の神がそうはっきりと言った。
仲間に取り入れる?




