12‐3
リリエルが地上に飛び降りて、およそ一時間が経った。
ふむ、暇だ。
久々に天界に戻ってきたが、刺激しかない地上と比べて本当に暇だ。
昔はここで、ご飯を食べるのにも苦労したっけ。そして神様から臭いと言われて風呂に入ったりして。その時に俺の顔が違うことにも気づいたよな。
「フィナさんたちと離れ離れになったけども、今度はレナちゃんと離れ離れになり」
いやフィナさんは俺から離れたのだ。
そういえば、どうしてレナちゃんから離れようとは思わなかったのだろうか。レナちゃんの好意に気づいておきながら。
いやでも、はっきりと言われてはいなかった。
フィナさんと会いたくないと思ったのはシンシアさんからはっきりと言われたからだ。
うーむ。自分自身の気持ちが良く分からなくなってきた。
正直な話。レナちゃんと離れ離れになって正解だったかもしれない。
「というか、本当にいい加減に神様と会いたいな」
天界に来てから、その気持ちが徐々に強まってくる。
出会ったとしても暴言吐かれるだけだろうけども。
俺に好意を寄せてくれる人ばかりだから、神様とかシンシアさんみたいな人と出会って俺がそこまでできた人じゃないと再確認したい。
そうでないと、可笑しくなりそうだ。
外見が変われば中身も変わるなんてことなく、前と性格はなんら変わっていない。でも外見は変わっている。外見が変われば周囲からの視線が変わるのだろう。
日本にいた頃とのギャップが激しくて、それについていけない。
決してMというわけではない。多分。
「ただいま戻りました」
なんて思っているとリリエルが戻ってきた。
俺の前に膝をついて、必ず下から俺に向けて話す。
「おかえり。何をしに地上に行ってたんだ?」
「チラシを配って回っていました」
チラシ?
「信仰を集めるにはまず認知されることから必要です」
「いや、ちょっと待って。え、神様の信仰ってそうやって集めるものなの?」
「私にできることはこれぐらいなのです」
「あ、そうなんだ」
いろいろと言いたいことはあるが。
リリエル、ポンコツ。
ちょっとだけリリエルへの印象が変わった。




