11-4 熾天使
「ここはどこだ?」
天使は小さく呟いた。
目の前は森林。戦いの跡のようなものがいくつか見られるが近くに敵はいない。自身の体を見ると至る所に傷があったが、痛みは不思議とない。
頭に手を当て、何があったのか思い出そうとするが何も思い出せない。
いや、この戦いだけではない。
自身の名前。
自身がどういった者なのか。
何故ここにいるのか。
覚えているのは一人の男の顔。
その男が自身にとってどういう存在なのかも分からない。
「私は天使」
天使は呟く。
「天使は神に仕える者」
私の仕えるべき神は一体誰なのか、天使は考え始めると、ふいに一つのことを思い出す。
それはその記憶にある男が敵を倒す姿。
相手はスライム?
何故その男が私を守るように戦うのか。
その男は神ではない。もしも神ならば助けに来るはずが無いからだ。だからこそ、天使の中に一つの考えが生まれる。
何故、神に仕えるのか。
何故、神に仕えるようと思ったのか。
手駒として、使い捨ての道具として神に扱われることに違和感を覚えず、神のために死を覚悟して戦う。
これは正しいのか。
主人を思い出せないのもあり、天使はそうだと名案を思いつく。
「彼は」
天使は僅かな魔力を使い、その男を探す。
魔方陣と共に現れる鏡にその男がどこにいるのか映し出される。
その男がすぐ近くの神殿にいることが分かると、天使は二枚の翼を使い空を飛んだ。
天使がその男の場所がわかったのは、天使が持っていた僅かな魔力がその男のものであったからであり、そのことに天使が気づくことはなかった。
「私は神にはもう仕えない」
天使は呟く。
「私が仕えるべきべき相手は彼だ」
天使はそうだともう一度呟く。
天使の体は少しずつ回復していく。
そんな天使の表情は少しずつ明るく、晴れやかなものへと変わっていった。




