10-5
レナは今の現状にビクビクしていた。
逃げ込んだ神殿、そこは街の人々で溢れかえっていた。神殿の中には収まり切らず、神殿の外も同様である。膝をつきお祈りを続ける老婆から泣き叫ぶ子供。
ラルの力を借り、レナとフィナ、そしてシンシアの三人は神殿の奥。人のいない部屋を借りることができた。
そこからが問題だった。
外はまだ危険な状態だと言うのに、フィナにとってはそれよりもこちらの方がはるかに大切なのだろう。
「それで、結局の所。レナさんは彼とどういう関係なのでしょうか?」
フィナによる一人の男との関係の問いただし。
フィナの目は何一つ笑っていなかった。
「夫婦、みたいなもの?」
「夫婦? つまり結婚を?」
その質問にレナが首を横に降る。
「みたいとはそういう意味ですか。では次の質問です。レナさんと彼は今までどこにいたのですか?」
「私の家」
「監禁?」
またレナが首を横に降る。
「介抱してた」
「ああ、なるほど」
シンシアが口を開いた。
「お嬢様。あの日、組織が壊滅したことが分かった時、あの男はどこかへと向かいました。その後にあの男は途中で力尽き、彼女に助けられたのでしょう」
「どうして力つきるのですか」
「その日は様々なことがあったでしょう? 体力に限界が来ていてもおかしくないかと」
「なるほど。うん?」
フィナはそうなると、一つの結論に至る。
「つまり、彼はずっと同じ街にいた? 治った後私のところに来なかったのは、つまり」
「お嬢様、そういう事です。あの男のことは諦めましょう」
「いや、でも。レナさんが監禁していた可能性がささやかにあるかもしれません」
レナが必死になって首を横に降る。
フィナは少なくともこの女にそんなことが出来る度胸がないことは分かっている。そして仮にしたとしても彼ならば脱出できることも。
少しずつフィナの目から正気がなくなる。
「後で彼を問い出しましょう」
「…………お嬢様」
その時だった。
戦いの終結。
それに三人は気づくことはできないが、少なくとも元聖女であるレナは神殿の奥地、大聖女が神と会話する間に誰かが来たことが分かった。
それはほんの少しの違和感であり、確証はない。
「あの」
「何ですか?」
「奥」
「奥?」
「奥に、行きましょう」
「どうしてですか?」
その問いにレナは答えられない。
事情かあるいは何かあったのを感じ取ったのかは分からないが、ここはレナの言葉に従おう。
と、それまでのフィナには考えられない結論に至り。
「分かりました。奥に行くのですね?」
フィナは頷いた。




