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おもてなしとは何なのだろうか。
一体何をされるのだろうかと思いながら、俺はよく分からない部屋へと連れていかれた。
その部屋を一言で言うと、普通の寝室だ。ベッドがあり、テーブルと椅子があり、ソファがあり。良い物を使っているのは何となくわかる、そんな少し豪勢な部屋。
そんな部屋の椅子に座らされ、俺の周りに可愛い聖女たちが立ち並び。
俺の頭はさらにこんがらがる。
何でベッドがあるのでしょうか。
「何でもお申し付けください」
ルルと呼ばれた聖女が俺にそんなことを言ってきた。
「なんでも?」
「はい。私たちは神に仕える身ですから」
「でも、それは太陽の神であって俺じゃないだろ?別にそこまでする必要は」
「確かに私たちは太陽の神に仕えております。ですが、だからと他の神を蔑ろにすることはできません。全ての神は兄弟なのですから」
兄弟?
この世界にいる神たちは皆兄弟なのか?
でもそれは、多分。俺は違うと思う。俺はその神の家族の一員じゃない。
だけども、それを言えば面倒な事になりそうだ。ここはご厚意に甘えるべきだろう。
「分かった。じゃあ」
ふと、おもてなしの言葉を思い出す。
どれぐらいのことまでお申し付けできるのだろうか?
飯を持ってこい、ぐらい?
「どのぐらいのことまで」
「可能な限りです。それこそこの身をご自由にお使いください」
この身を自由にお使いください?
だからベッドがあるのか?
あれ、俺が望んだ夢じゃないか?
(そのような不誠実な行い、身近の方にバレたら蔑まされることになります。お辞めになった方がいい)
俺の中の天使が言った。
(大丈夫。バレやしないよ。なぁに少しだけすれば良いさ)
俺の中の悪魔が言った。
「あの、?」
「ちょっと待って。今心の中で天使と悪魔が戦ってるから」
一旦気持ちを整理しよう。
正直に話せば手を出してみたい。
しかし手を出したらアウトだ。
(欲望に忠実になろうぜ)
(いいえ。欲望をコントロールしないのは猿も同然です。抑えなさい)
ええい!
何で俺の心には天使と悪魔がいるんだ!悪魔だけでよかったのに。
(そう思うなら手を出せよ)
なんか悪魔が呆れてる。天使が悲しんでいる。
「ふふ!」
するとルルちゃんが笑い出した。ルルちゃんの笑顔は初めてみた。
「面白い方ですね。ここまで悩まれるとは思いもしませんでした。あ」
そう言って、口に手を当てる。しまったと言った様子だ。
そんなルルちゃんに笑いかける。
「良いよ。むしろそっちの方が気が楽だから。暇だから一緒に話そう」
「はい!」
ルルちゃんはそう安堵したように答えてくれた。
ヒロインズがまた空気になりました。




