9-4
俺が天使とスライムの元へ駆けつけた時、戦いは終わった。
スライムの勝利の形で。
横たわる天使。
スライムが俺の方を向く。
そして静かに進行を開始する。
俺は無意識に手をスライムに向けた。
消滅の力。
これで殺せない生物はいない。
そのはずだ。
大丈夫。俺自身を信じろ。
俺はスライムへ向けて消滅の力を使った。
スライムの体、そのほとんどが消えて無くなる。そう、消滅したはずだ。
しかしそれは程なくして元へ戻る。
まるで無から有を作り出す俺の能力と変わらない様だった。
無からスライムの体が生まれたのだ。
「どういうことだ?」
「転移魔法」
ふいに天使が口を開いた。
転移魔法?
瞬間移動させる魔法のことか?
「転移魔法は効かない。上級スライムもまた使えるから」
「どういうことだ?」
意味が分からない。
俺は消滅の力を使ったはず。これは消滅の力ではなく転移魔法ということこ?
あ、そういうことか。
これは消滅の力じゃないのか。
相手を強制的に移動させる力か。
だから消滅したようにスライムたちは消えて行ったのか。なるほど。
いや、それよりも。
つまり俺は上級スライムに勝てないということになる。
「参ったなぁ。今度こそ死ぬかもしれない」
「お前は死なない」
「うん?」
「神様の加護があるからだ」
神様の加護?
それってどっちの?
というよりも、天使は俺が神様の後継者だと知っているのか?
「いや、それよりも」
進行を始めたスライムをどうにかしなければいけない。何故か、俺たちを無視している。
「良い案がある」
「ん?」
「魔力を私にくれ」
天使がそんな提案をしてきた。




