8-2
「やっぱり!私の考えは間違っていなかったね。シンシア」
フィナさんはそう言って喜んで、それでと隠れきれていない怒りをレナちゃんに向けて聞いてきた。
「その隣の子は誰ですか?」
「私は…………」
「レナちゃんだ」
人が苦手なレナちゃんに変わり俺が答える。すると俺の方に鋭い目つきを向けてくる。
「あなた様とどういう関係ですか?」
「妻」
俺に向けられた質問をレナちゃんが答える。
それはしてはいけない返答だ。
「妻?妻ですって?どういうことですか?」
「違う。妻じゃない。街で倒れた俺を助けてくれたんだ」
妻を否定すると、それはそれでレナちゃんが頬を膨らませる。
「それに、どうしてあの時、いなくなったんですか?」
「それは、その。いろいろ理由がありまして」
「どんな理由だと仰るのですか?」
「お嬢様!」
フィナさんの質問責めにシンシアさんが痺れを切らす。
シンシアさん、グッジョブ!
「聞きたいのは分かりますが、今ここは危険な場所。すぐに避難しましょう」
「そうですね。では無事に生き残った暁に、質問責めをしましょう」
そう言って、神殿の方角を目指そうとする。
俺たちが着いてこないことに気付いたフィナさんが立ち止まり、俺の方を向く。
「あなた様、逃げないのですか?」
「俺はあのスライムを倒す」
そう言って、巨大なスライムに指を向けた。
するとフィナさんが驚いたように。
「無理です!逃げましょう!」
みんな無理というな。
「貴様は知らないのかもしれないが、あれは中級クラスのスライムだ。あれに敵う人間は国に数えるほどしかいない」
「そうなのか?」
レナちゃんの方を見るとレナちゃんも小さく頷く。
「大丈夫だろう。俺は強いから」
「呆れて物も言えないな。貴様が強いのは知っている。だが、あれは無理だ。何故、倒せる自信がある」
「俺はあのスライムを倒すためにこの世界に来たからさ」
俺の言葉に三人が目を丸くする。
「シンシアさん、レナちゃんをお願い。あいつは俺一人で倒しに行くよ」
「待て」
そう言い残して、止めの言葉を無視して、俺はあのスライムに向けて走り出した。




