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8-1

何体倒しただろうか。

無尽蔵の魔力があれども、体力は無尽蔵ではない。

人々を襲うスライム。

それを止めようと必死になって戦う兵士。

兵士の死体の山が次第に増え、それと同時に兵ではない人々の死体も増えていく。


「悪夢かよ」


俺は呟くことしか出来なかった。

スライムの数は人の数と比べるとささやかなもの。二千か三千ぐらいか。

仮に相手が人ならば、対処はここまで難しく無いだろう。それほどの数の兵が少なくともこの街にはいる。


「レナちゃん、こっちにおいで」


俺はレナちゃんと手を繋ぎ、走る。

レナちゃんは素直に言うことを聞いてくれた。

たまに見かける強力な兵や魔法使いがスライムを倒したりするが、数体を同時に相手した時、何も出来ないまま殺される。


一匹のスライムが俺を襲おうと、その巨体を大きく見せた。

咄嗟に力を使う。無から有を生成する力。巨体な壁を作り、スライムを隔離する。

しかし程なくして、その壁は朽ち果てる。

その朽ち果てるまでの時間に俺は魔法を唱えた。

突風の風でスライムの体を遠くへ押し返す。スライムの体はバラバラとなり、辺り一帯に散らばる。

爆発よりもこちらの方が攻撃と防御を同時に行うことができることに気づいた俺は風の魔法を使うことにした。


人々を助ける力はない。

助けるには俺一人では対処が追いつかない。

その一番の原因は少し色が違うスライムの存在。


「あそこにもいた」


巨体なスライムが姿をみせる。建物よりもでかい。そのスライムが動くだけで沢山の人々が死んでいく。

何より厄介なのは殺した人の体は吸収し大きくなる。そして途切れた体の一部が小さなスライムとなりそれもまた人々を襲うのだ。


「あれと戦うの?」


レナちゃんが小さく呟くようにして聞いてきた。

それに頷くとレナちゃんが頭を横に降る。


「あれは無理」

「大丈夫。俺も強いから」

「でも」

「レナちゃんを守るためには戦わないといけないから」


レナちゃんは口を閉じた。

スライムがいないことを確認しながら、あの化け物に近づいていく。


ふいに。

逃げる人とぶつかってしまう。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫、だ」


聞きなれた声。


「貴様は!?」

「あなた様!?」


シンシアさんとフィナさんがそこにいた。

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