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「へい、そこのあなた」
「黙れ。お前はただの人質だ」
「いや、俺にその価値はないからさ。それでつかぬ事をお聞きしますが、あなたは魔法が使えますか?」
ボスは人質の男の発言に怒りを見せた。
何より、何故恐怖を見せないのか、それが不思議で仕方なかった。
その質問に答えず、部下たちがあの女を殺すことを待つ。
はずだった。
「なるほど、これが魔法か。やっとで魔法がわかったぞ。なるほど、魔法が使える人間はこの世界に少ないのか。魔法が使える者と使えないな者はだいぶ差があると」
瞬間、ボスの体に大きな風穴が空いた。
一つの疑問があった。
無から有を作る力は、目の前に壁がある状態で、巨大な物を作った時どうなるのか。
それの答えは何も起きないだった。
無から有を作る力はあくまで無から有を作るだけ。有を無に出来ないため、何も起きないのだ。
だからこそ、一定の空間を必要とする。
仮にそれが出来れば、風穴を空ける事は容易だった。
それが出来ないから、だからこそ、人対人で勝つ自信がなかった。
でも今は違う。
倒れたボスの腕から出ると、男は周りを見て。
「魔法って便利だな。理解すれば、なんでもできる気がする。というか、シンシアさんが優秀だった。シンシアさんの知識量が素晴らしい」
「…………何が起きて」
男の一人が理解できず、呟く。
魔法が使えても、体に風穴を開けることがどれほど難しいことか。
この結果は、男が無から魔力を無限に作れるからこそ出来たに他ない。
三人の男は、相手を変えた。
今殺すべき相手が分かったからだ。
だからこそ、死ぬのは定めだった。
三人の遺体が床に転がると、男はシンシアの元へ近づいた。
「やあ、シンシアさん」
「お前、何をして?」
「魔法を使った」
魔法とは、魔方陣と魔力が組み合わさった結果として 生まれるものである。
決して、魔方陣を介さずに使うことは出来ないはずなのだ。
それなのに、何故男が魔方陣なく魔法を使ったのか。それが理解出来なかった。
「少なくともお嬢様は、幻覚を見ていたわけでは無かったのか」
「俺への評価改めた?」
「ああ」
そう言うと、男は笑った。




