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誰が、フィナさんを連れ去ったのか。その理由について要約してみた。
フィナさんの家は行商の事業でその地位を確立させたらしい。行商人の娘ということだ。いや、行商というよりも流通と呼べば良いかもしれない。
日本じゃ、物の有り難みが分からないけども、この世界は違う。だからこそ、流通は儲かるのだ。
フィナさんの旅の目的は、その流通を学ぶこと。そのために世界を旅した。
そして俺と出会った。
この流通業界とは言い換えるならば命の危険がある。日本みたいに高速を運転するわけじゃない。
だから、死ぬ。当たり前のように。毎年。
日本のひとつの会社で毎年社員に死者が出るようなもの。それがどれ程異常か。
そして、恨まれる。数多くの人々から。
今回もそのうちの一つらしい。
以上。
「私は一人で探す」
シンシアさんは鎧を着ると、そう行ってどこかへと走って行った。
何処にいるのか、その後を辿ることは難しい。
ただ、シンシアさんは別みたいだ。
まるで居場所が分かっているかのように、シンシアさんは街を走る。
別行動と言われましたが、俺はその後を追いかけることにした。
しばらくすると、シンシアさんは周囲の人に聞き込みを開始。そして目星がついたらしく。
街の離れへ向かい出す。
ふいにシンシアさんは振り返る。
「そこにいるのは誰だ?」
バレていたみたいだ。
俺は物陰から出た。
「どうして後を?」
「だって、まるで居場所が分かっているみたいだったから、シンシアさんの後を着けるのが一番早いかな、と」
「別に分かってはいない。ただ、余裕が無いから」
「でも、聞き込みである程度の居場所は分かったみたいで」
そう言うと、はぁとため息をついて、シンシアさんは来いとジェスチャーをした。
「部屋の位置、聞き込みから、道の削除を行う。そうすれば、大方のルートが絞られる。そしたら、あとは運と知識だけ」
「知識?」
「この街に、お嬢様に恨みを持っていると考えられる組織はおよそ7つ」
7つ?少し多く無いですかね。どれだけ恨まれているんだ?
「私は今回の犯行はリオと推定した」
「リオ?」
「盗賊と呼べば良いのか。お嬢様の行商業の仲介役を務める者たちの一つと仲が良いことは知っていた」
「なるほど」
あれ、俺が出る幕ない気がする。
シンシアさんもフィナさん同様に頭がいい気のかもしれない。優秀な人みたいだ。
「そこまで分かっているなら、兵隊さん達にも伝えて」
「…………あ!」
シンシアさんの表情が曇る。
「忘れていた」
「ええ」
訂正。優秀じゃない。ドジっ子だったのを忘れていた。
「大丈夫。私一人いれば問題ない。お前がどれほど優秀かは知らないが、お前の出る幕は無い」
シンシアさんはそう言った。
ひとつ、俺の経験則を教えましょう。
その言葉は総じて、フラグと呼ばれています。
分かった?シンシアさん。