3-5
逃げました。
頑張って逃げました。
シンシアさんに刃物を突き付けられて、何とか回避して、脱衣所まで逃げました。
幸運にも、というよりもシンシアさんはドジっ子属性があるらしく。
「待て!」
と格好良く叫んだ瞬間、風呂場で転んで頭を強く床にぶつけていました。
あ、下着が見えた。
眼福。眼福。
じゃなくて、逃げないと。
服を着て脱衣所を出た俺は、沢山の使用人に囲まれた。
全員女性。男の兵は別の建物にいるらしい。
それはシンシアさんが男を信用していないがために、フィナさんを守るためにしているらしい。
「何用ですか?」
俺は使用人たちに聞いてみる。
すると、誰かが言った。
「シンシアさんは?」
「風呂場にいますよ」
「私が行ってきます」
一人の使用人が急ぎ足で風呂場に行く。
ちょっと違和感。
この人たち、シンシアさんみたいに俺を殺すつもりなわけじゃ無いみたいだ。
もっと別の。緊急の用事だろうか?使用人たちから焦りの表情がうかがえる。
「お嬢様が」
「フィナさんがどうしたのですか?」
「いなくなりました」
いなくなった?
その言葉を少し考える。
「どこかに買い物にでも」
「連れ去られました」
「へ?」
俺は使用人の言葉に間抜けな声が出た。
連れ去られた?
拉致?監禁?
「兵の者たちにもお願いしました。ですが、兵の者たちでは不十分です。どうかお願いします。お嬢様はあなた様のことを優秀な魔法使いと仰っていました。どうか、お嬢様を助けてください」
使用人一同から頭を下げられる。
ああ、なにこの状況。頼られている自分がいる。すごく嬉しい。
だから、元気に頷いた。
「喜んで!」
まあ、嬉しかったのもあるが、それとは別に。
気がかりがある。
今日、フィナさんと出会ってからまだ1日も経ってない。どうしてこうもいろんな事が今日に集中しているのか。なにか理由がないと納得できない。
だから考える。
そして、ひとつの答えにたどり着く。
神様。あんたの仕業だろ!