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「お嬢様はお部屋にしばらくの間閉じこもってもらった。お嬢様はおまえにご執心のようだから」
「そうですか。それよりも、まずどうしてシンシアさんがここにいるのか聞きたいのですが」
「それはどうでも良いだろう?」
いや、良く無いです。
とは言えない。シンシアさんが怖い顔をしたのが背中からでもわかる。
でもね、シンシアさん。俺の心の声聞いてください。俺も意味がわからないんです。
どうしてシンシアさんが風呂に入ってきたの?何で俺の背中を洗っているの?
それはまあどうでも良い。いや、良くないけども、優先順位的に二つ目だ。
それよりも、はい?
「フィナさんがどうしたと?」
「だから、お前にご執心のようだと」
「つまり、それは」
「お前の事が好きみたいだ」
好き?
そんなそぶりあった?
無かったですよね?
おかしくないですが?
シンシアさんの言葉には矛盾があると思います。そんなことありえるわけがない。俺が言うんだ。間違いない。
だって、まだ出会って1日も経っていないよ?
「そんなバカな」
「お嬢様は、告白したと仰っていたが」
「それこそ、ないない」
告白されたら、さすがにわかります。バカな俺でもね。
「あなたに出会えて本当に良かったと仰ったと」
「それは言ってました」
スライムを倒した時だ。
うん?
「え?あれ告白だったんですか?」
「まさか、知らないのか?」
「はい」
「出会えて良かったは古くからある告白の言葉だ」
なるほど。毎日味噌汁作れと同じか。
そんな告白の言葉がこの世界にはあるのか。覚えておこう。
でも、まさかなあ。
モテない男筆頭の俺が、好かれていたとは。なんて勿体無い。何より、まだ神様の呪いが消せてない時に。
もしも手を出したらどうなるのだろう?
案外、神様のあの言葉は嘘だったりして。
「そうだ。どうして私が背中を洗いにきたのかと聞いたな」
少しだけ、シンシアさんの声のトーンが下がった。
「はい」
「無防備なお前を殺すためだ」
その言葉とともに、冷たい刃物が首筋に当たった。
あれ、なにこの状況?