3-2
「ここがカロの街です」
無事到着したカロの街はレンガ造りの綺麗な街並みだった。
時間は、多分五時ぐらいだろうか。この世界に時計があるか分からないけども、夕日の沈み加減はそのぐらいだ。
綺麗だ。素晴らしい。こんな街に一度は住んで見たいものだ。
何より、夕日で赤く染まるフィナさんがより一層綺麗に見える。これが夕暮れ効果もとい放課後効果か。
「この街に別荘があります。今日のご恩をお返ししたいです。どうか、来てくれませんか」
「わかった」
別に良いのに。でも、断るのも気がひける。
というか別荘があるのか。つくづく、フィナさんの金持ちぶりに驚く。
別荘は街の中央近くにあるらしく、その別荘に到着すると、フィナさんに気づいた使用人の一人が別荘の中へ。そして、違う女性が出て来た。
これまた綺麗な。フィナさんは綺麗な茶色の髪。神様は金色。そしてこの女性は神様同様金髪だ。
その女性はフィナさんへ詰め寄り。
「お嬢様、ご無事でしたかっ⁉︎」
「はい。ご無事です。シンシア」
「其方の方は?」
多分シンシアという名前なのだろう。そのシンシアさんは俺の方を睨んでくる。
おかしい。感謝されども、睨まれるようなことはしていないぞ。多分。
「彼は私の命の恩人です。もしも彼に出会わなければ、ここまで帰ってくることができませんでした」
「まさか、この男と二人きりで森を抜けたのですか!」
「はい」
「何故、見ず知らずの男を信用なんかするのですか!」
酷い言われようだ。
まあ、正しいと思います。はい。
「とりあえず、そこのお前。ここに金貨が10枚ある。お嬢様を助けていただき感謝はしている。だが、これ以上は」
「シンシア!」
フィナさんが今までに聞いたことがないような大声をあげる。
「命の恩人を無下にするのは、我が血の恥となります。彼におもてなしを」
「ですが」
「良いから」
「分かりました」
シンシアさんが渋々といった様子で、頷く。
そして最後にもう一度睨んでくる。
何だろう。睨む顔も良いものだと思って来た。俺はエムかもしれない。
あぁ、蔑む目が、素晴らしい!
「今日はよろしくお願いしますね。あなた様」
フィナさんがそんなことを言った。
よろしく?
あなた様?
何か良くないことが起こる気配がする。