3-1 神様の独り言
神様は退屈そうに天界で地上を見ていた。
見ていたのは、後継者に選んだ人間。
神様は、意地悪をした。
本来伝えるべきだった事実の多くを自身の都合で伝えないことにした。
どうして彼の顔は、体は変わっているのか。
どうしてこの世界の言葉が話せるのか。
神様の役目とは。
鍛錬とは。
「あの女の子、彼に惚れたかしら?本来普通の人間は神様に問答無用で惚れるものだけど、だいぶ時間がかかったから。まだ、力が完璧に現れていないのかな」
神様は小さく呟いた。
「それにしても、あの子。私が寝てると本気で信じていたみたい。寝てたら、呼ばれても行かないことぐらい分かるでしょうに。頭が悪いくせして、妙に優秀だから困る」
神様はまた呟いた。
「ああ、嫌だ嫌だ。どうして私はあんな子を後継者に選んだんだろう。もっと相応しい人間は多くいたのに。もっと優秀な人間を選べば、悩む必要は無かったのに」
神様は思う。
この力を使えたらいいのに、と。
神様に出来ないことはない。
その気になれば、この世の全てを破壊することも、そして破壊した世界を元に戻すことも。
万物から、時間、時空、はては常識、価値観といったものまで、すべてを操ることができる。
だから、悩む必要は無いはずだ。その悩みを解決する力があるのだから。
「さあ、もうそろそろしたらカロの街ね。気をつけてね。しばらくすれば、あなたに最初の課題が突きつけられる」
神様はそう言って、静かに見守り続けるのだった。