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突然のことだった。
スライムが自身の体を大きく見せたかと思うと、俺とフィナさんを覆いかぶさろうとする。
フィナさんを引っ張り、寸前で回避する。
そして二人して逃げる。
何事も逃げの姿勢が大事だ。それが人生をうまく渡る力になる。
なんてまあ、軽く考えていた自分がいた。
スライムは俺たちを追いかけてくる。その速度は俺たちよりも早い。
まずいな。すぐに追いつかれる。
「フィナさんは逃げて。俺が囮になるから」
だから、俺はスライムの標的になるために立ち止まった。
するとフィナさんも立ち止まる。
「ダメです。一緒に逃げましょう」
フィナさんは逃げない。
どうして走ってくれないの?
こう言う時は素直に聞いてほしい。物語のキャラの心情がよくわかる。
追いついたスライムがまた体を大きく見せた。
突然ではないため、その回避は簡単だった。
不思議な感覚だった。体が軽い。まるで自分の体じゃないとかそんな言葉があるけども、まさにそれだ。俺ってこんなに運動神経良かったか?
まあ、良いや。
仕方がない。スライムを倒そう。
勝てるか分からないけども。
地上を支配するモンスターなんだろ?
全力でいかないと。
スライムが俺を覆いかぶさろうとする。
無から槍を生み出し、そんなスライムを突く。狙うは脳のような場所。
しかし。
「あれ?効いてない?」
感触はなかった。脳も液体だった。スライムの攻撃は止めれず、また寸前で回避をする。
気づいたら槍は手の中になく、スライムの体内に取り込まれていた。そして、それは徐々に溶かされていく。
なるほど。
クソ強いな。槍の攻撃は無効にし、強力な酸持ち。どうやって倒すんだ?魔法は効くのか?でも俺は魔法使えないし。
いや、魔法に近いことはできる。そしてスライムの体は液体だ。
爆発四散すれば良い。
俺は銃は作れない。電子物同様、構造を理解していないからだ。
ただ、簡単な爆弾を作ることはできる。
ニトログリセリンを染み込ませたオガクズと、筒。導火線。
これらを組み合わせた状態でイメージを行うと、爆弾が完成した。
でも、これをそのまま爆発させると俺も巻き込まれるからな。何か盾が必要だ。
俺は火を生み、導火線につける。
「フィナさん、伏せて!」
そう叫ぶと、意味が分からないといった様子ながらも言葉通り、伏せてくれる。
それを確認した後、俺はスライムに爆弾を投げた。それと同時にフィナさんの元へ走り、周りに巨大な鉄の壁を作る。
爆弾はスライムの体内に入る前に、空中で爆発四散を起こした。
爆音が辺りに響く。
砂けむりの中、むせながら俺はフィナさんを抱きかかえ、場所を離れる。
フィナさんは何が起きたのかわからず、不思議な表情で俺に話しかけてくる。
「スライムを倒したのですか?」
スライムがいた場所を見ると、スライムの体の一部があちこちに散らばり、それぞれが木や土を溶かしていた。
壁が無かったら、爆発に巻き込まれなくても危なかったかも。
「ありがとうございます。お強いのですね」
「いやあ、それほどでも」
「あなたに出会えて本当に良かったです」
我ながら格好良く行けたと思う。これは、フィナさんとフラグを立てれたのでは。
いや、そんなことはないか。フィナさんみたいな美女なら彼氏もいるだろうし。
はあ、そう考えると彼女が欲しい。フィナさんみたいな。
「あれ、もしかして知らないのですか?」
「何がですか?」
フィナさんの唐突の意味の分からない質問。
フィナさんの表情が微妙になる。どういうことだ?何が知らない?
まあ、大したことじゃないだろう。