序章~其処までに至る回想~3
ああ、何ですかね。結局、意識を手放すのですか。はあ。
でも、誰かは知らないはずですけど作ってくれた時間を有効に使わないとね。
とりあえず、どこまで思い出していたかな。
たしか。
あ、忘れました。
ええと。あれがあって。そこから憂鬱な状態であの人達と再会したよね。それから、ううん。なんか思い出すのが億劫になってきたような。
そうだ。あれだ。たしか何か行事に出ろ。とかで秘密の通路を通ってその後また妨害があって。対処して・・・・・。
その後かな。
で、僕は正確には僕達は襲撃してきた人達を適当に縛り上げ、僕の説明で絶望した人も含めて完全に車両の一部に放置して、目的の駅に着きました。
そう言えば此処まで凄い時間が掛かった気がするけれど。まあ良いかな別に。
それでも間に合わなくて、行事が大分進んでから学園に着いたんでした。
と言っても正門じゃなくて、隠し門なんだけど。
そう言えば何で隠し門なんかに案内したんだろう。
どうでもいいかなこの状況なら。
僕はそこから舞台袖まで待っていた運営委員の人に案内された後、舞台上を見ると慌ただしく生徒らしき人が所々詰まりながら場を繋いでいたなあ。
その生徒の視線が此方に注がれると凄く安堵した表情を一瞬だけ見せて話を早々と切り上げ、袖に引っ込んできた。
近づいてきて、始めて気が付いた。
あの胸糞悪いこの島の権力者の次島主様であるアホウだ。
それで理不尽に殴りかかってきたから避けて足を引っ掻けて派手に転んでから起き上がると睨んで、何かを思い出したかのように僕と背後を指し示した。
つまりは、出ろ。と言いたいらしい。
僕は皆さんの意見を参考にしたくて振り替えると、誰も居なかったのです。
後で知りましたけどあの人達は学園の敷地内には一切入れないのだそうです。
へえ。まあ、犯罪者も居ますからね。元ですけど。
とか思い浮かべながら背を押され舞台に立つ羽目になりました。
その瞬間、歓声が響いて祝福の声が鳴り止みませんでした。
何か妙に居心地悪かったですね。
とかなら良いのですが、実際は、憎悪や恨み怒りを伴う野次や罵詈雑言の羅列。
何かその中には関係ない言葉も含まれていたような気がしましたけど一々覚えていませんね。
廻りの本来なら諌める立場の教師達も黙っていました。
だからどうしたのか。こう言いましたよ。
『ああ。僕は皆さんに言いたいことがあります。でも実際はありません。なぜなら僕はこんな下らないことに巻き込まれて迷惑千万。なのですから。今年入ってきた人達は編入生やその他諸々の人達も含まれているのでしょうか。そうですね。少し確認させてください。ええと。うん、去年のあの行事は今年もあるのでしょうか。あ、ある。そうですか。ならこれが終わってううん。そうですねぇ。2日、そうです。2日の間に僕を殺すか行動不能にするか、それとも膝まずかせるかをすれば今年度の授業単位と高位待遇をお約束しましょう。その代わり、その2日を過ぎて僕にそれらを出来なかったら、学業時間を切りが良いので十倍にしてもらいましょうか。
この罰の対象は僕に攻撃を加えた人達とそれに荷担した人関連者全員です。
あ、そうそう。その間の僕に対するあの約束ごとは停止してもらいますから安心してください。
それとこの権利は今年度入学者。つまり、新入生限定の軽いあの行事の前哨戦です。
て、事なんで停止をお願いしますね。これをしないと後であれを開催しなければいけませんから。では、終わったらえと、君にお願いしますね、次期島主さん。』
小さくお辞儀をして舞台袖に戻りました。
まあ、胸ぐらをを掴まれて軽い説教されましたけどね。
「でもさ、もう引っ込みつかないでしょ。」
そう舞台袖からも聴こえる大歓声。殺気が乗っていました。
ニタニタする僕の胸ぐらを離して怒りながらも舞台に立ち、何か細かい説明をしていたなあ。
突然の僕の独り善がりの一方的な行事にそこまで対応できるのは正直驚いたけどそれだけでなんですねぇ。その後はその場というよりその建物から外に出ました。その日は珍しく気候が安定していて島を象徴する花が満開になっていました。
涼しい風が心地よく、僕はそのまま帰ろうと、もとい島を出るために港に行こうかと思ったのですけどね。
「あ、待ってよ。」
とまあ、呼び止められ、声のする方へ向くと、何か見知ったような顔が直ぐ近くに。
「うあ。と」
とかそんな驚いた声を出したかと。
「君はもしかしてこのまま島を出る気なのかい」
「んん。ん。うんそうだと良いな。」
「その言葉は望んでいるだけで」
「うーん。誰かに阻まれるだろうなとは。思ってみたり、もしくは無かったり。」
「そうかい。なら話は早い。君には、これより2日限定で教寮に戻ることを禁じられました。上も承諾してます。」
「え、それはつまりまさか。」
「ええ、そうですね。あの懐かしの寮で2日だけですけど居て貰います」
嫌な顔をしたと思ます。
だって悲鳴というか絶叫というか、そんな声が僕の口から出ていましたから。
連れてこられたのは懐かしくとも思わない。思いたくもない生徒専用寮。去年僕が数日か数ヵ月か忘れたけれど住まわされたあの寮。の部屋じゃなく完全な個室だった。
それでも中は簡易な机と質素なベッドのみ、後は何もなく吹きさらしのような印象を受けた。
「2日だけどね。この部屋に住んでもらえるかな。あ、そうそう君の事は一応聞いているよ。まあ、今日の式の後本当なら島主様や幹部方主催の豪華食事会を催すはずだったんだけどね。君の宣言で全てぶち壊しだよ。」
肩を竦めて、力を抜くと僕の肩に手を置いて出ていこうとする。
僕はこの時一つの疑問を相手に聞いてみた。
結果は驚いた表情をしていました。
「ねえ。一つだけ聞いて良いかな」
「え、うん。良いよ。何かな」
「君は誰かな」
「え、ええぇ。」
いやはや、僕はこの相手の事を全くと言っても過言ではなく、覚えていませんでした。はい。
そう言えばどうして忘れていたのかな。この生徒の事を。
制服の袖に腕を隠して寮の廊下を歩いていると近くの扉が勢いよく開いて、僕を襲ってきた生徒を、正確には新入生の協力者を適当に相手をしてそのまま廊下に叩きつけ、捩じ伏せて、変わらず歩いていった。
「あっついですね。今日は異常なんじゃないかな。」
空を見上げて照りつける太陽に辟易しながら、汗を手の甲で拭った。
2日間だけど異常な気温の上昇が世界各地で観測されたとか後で聞きました。誰に聞いたのかな。忘れたけど。
「う、ううん。はあ。良い運動に成りました。皆さん有り難う御座いますね」
振り返り、目に入ったのは寮の玄関前から続く死屍累々の道。
それに対して深々とお辞儀をしました。
それから手を前に伸ばして、袖から手を出して肩の力を抜いて首を回して、
「さて今日も頑張りますか。」
「何を頑張るのかな君は」
意図しない返答と頭に受けた衝撃。
痛む所に手を当て見ると、
「あ、二木さん。もう赴任したんですね」
「そうね。赴任したわ。でも、何故君はこんな面倒な事を自分で起こしているの。上も随分と慌ただしかったし」
「ああ。それは知りませんけどね。まあ、強いて言うならば、ですけど。」
「なに。」
「去年の仕返し、ですか。」
二木さんはこの意味を瞬時に理解してくれて、呆れ果て、嘆息してから降り注ぐ太陽光を手で遮り仰ぐ。
「少年。それで」
視線だけを戻して
「どうするのかな。聞いているよ。今回の事を」
その意味は僕の仕事内容。
「本当は今日出ようかなとか思ってたんですけど。全然聴いてないんですよね僕。」
「そうかい、まあ、今日の式内容に関しては本来、前年の優勝者からのお言葉を、てのが通例らしいけどね。今年は運営委員会が提案したんだとさ。番狂わせのあの者に任せてみるのは、とかさ。」
その詳細を聞いたら、あの島主の子供、僕を色々な面倒事に巻き込ませた奴の一声で通らせたと。そう聞きました。
「何なんですかね、アイツは僕に恨みが有るんですか、それともただの嫌がらせですかね。」
「はは。大部分は嫌がらせだろうね、あの坊っちゃんは。」
「ですか。はあ、なんで僕を、と」
脈絡もなく無数の虫が僕を襲ってくるけど綺麗に割れて僕を避けて熱射の空に消えていった。
僕と二木さんは不思議に思いながら今の事を考えたけど答えは当然出るわけもなく。二人傾げながら学園から出る。
あの入学式に儲けられた規定は2つ。
1:目標であるスワ・コウマの行動範囲は学区内含めた半径七キロ圏内とする。
2:方法は如何なる手段を用いても構わない。が、極力被害を出さないように尽力すること。
と、この二点のみ。それ以外は決まってなくて、だから。もう。
「あのう二木さん。」
「な、んだい少年。」
「い、て。い、今から、後悔しても、と。良いですか。」
「知らないよ。少年。巻き込まれてるアタシにそんな事を、て聞くのかい」
「ああそうですね。なら、後悔は止めて」
この時は、そう集団という位を越えて群衆に追いかけられていました。
始めてみたものの、時間を置かずに終始襲ってくるので何ともはや、切りがありませんでした。
なので僕は全員を相手にせず、近くまで来た人だけを相手にしていって最後は何処かの廃墟だったかと。
そんな場所で気がつくと二木さんの姿が消えていました。
いつの間にはぐれたのか、それとも単に帰ったのか。
まあ、今なら判りますけど、帰っていましたよ。寮に。僕は正直焦ってました、この時は島内活動中は力が制限され、有力者であってもあの時より格段に力が劣っていたから。
まあ、最後には徒労に終わったんだけど。
まあ、省こう。
それで、どうしたのか。
廃墟に着いたとき、追いかけていた新入生は大半が脱落、もとい僕が行動不能にしていましたよ。
誰かが言ったと思いますけどね。
言わなかったかも知れませんけど。今更ですし。
「こんな人気の無いところに誘き寄せたと先輩は思っているのでしょうが、はは。残念」
乾いた音を鳴らして、陰に隠していた存在感を一気に発露させていました。
まあ、隠れていた人が出てきたんですけどね。
誰かが笑ったような気が。誰かは知らないですけど。それで、
「さあ、最後です。殺して差し上げます。」
すると、
『あ、ああ。君達は何をしているのかな。』
拡声器で聞いたような声が聞こえてきました。
当然、その中で誰かが言っていた。
「ええ、おじさん知らないんですか。この人を見て、僕達を見て分からないなんて、」
一人が笑いだすと大半とは言えそれでも相当な人数が居たから、大きな笑いが起こった。
その笑いに聞いたことのある声が一喝しました。
それに抗議する新入生達。
僕はこの時を待っていて、
「新入生諸君。1つ良いかな。それからなら別にどうなっても僕にはどうすることも出来ないけど。」
全員の視線が僕に注視する。
「有り難う。そうだね。確かにこの状況だし、気が流行るのも判るけどね。後一歩だし。でもね良く周囲の状況を見て欲しい。分かるかな」
新入生達の視線が僕から周囲へと移って、状況を確認していました。
何人かが気が付いた。
「え、そんな何で」
「え、どういう事」
「そ、んな」
「気が付いたのは少し、かな。」
僕の問いに困惑が浮かぶ。
「気付いたなら早く戻りなさい。そうすれば今回は見逃してくれるかもしれませんよ。」
涼やかに答えてあげました。
気付いた新入生の一人が駆け出すと、それに合わせて廃墟から疲弊しているはずなのに全力で戻っていきました。
少しの時間戻る新入生達の背を見送ると、僕はその場にへたり混みました。
本当は僕も疲れて大変だったんです。
両手を後ろに着けて空を仰ぐと太陽が傾いていました。
確かですけど。
そんな物を見ていると一人が僕の側に来られたのです。
「で、お前さんは、何を呑気に地べたに座っておるんだ。」
太陽に向けていた視線をその人物に合わせました。
「いえ、この辺りがまあ、学区内から近かったので」
「ああ。それは此方も通知が来ている。だがな、規定違反じゃないのか。ん。」
「え、それって、あれでしょ。僕の行動範囲は。とかでしょ、でもですね、僕がその範囲から出ないとは言ってませんよね。」
顎に手を当て。
「ふむ、確かにそのそうだがなあ。それでもこの場まで来るこたあないだろう。」
「ええ、そうですね。でも、あれをずっと続けるのも本当は疲れますので。ていうのは建前ですけど、本当の目的は貴方に会いに来たんですよ。」
僕は懐からある品物を一度確りと見せて渡しました。
「なんでもこの区域の警備担当責任者に直接必ず絶対に渡して欲しいと頼まれまして。」
「ふむ、聞いても」
「言伝ては、『なあに何時もの事さ』です。」
影になっていて相手の顔が見えませんでしたけど、それでも小さく笑ったように見えました。
返答が「そうか。」だけだったので少し訝しみましたけど、お腹も空いていたので僕は近い出口を聞いてその場を後にしました。
それから町を歩いていると道という道をー正確には裏路地とか脇道とかなんだけどー埋める人が僕を睨み、歯痒さで襲い掛かってくる人もいたけど、何処に隠れていたのか警備員が直ぐに現れて道を塞いでいました。
僕はあの区域から出て一番近くの店で適当に買った食べ物を食べながら歩いていました。
あ、そう言えばこの時、アイツが来たんだっけ、すごい剣幕でだけど。
胸ぐらを掴まれた第一声は、確か。
「お前はボクを遊んでいるのか。」
だったかな。
この言葉の意味は規定を無視して学区内から出てしまった僕に対して言ったらしく、この時僕は。
「はは。何を言っているんだい君は。遊ぶも何も相手にしてないでしょ。」
この言葉にアイツは切れました。
今判ったけどこの言い方だと僕がアイツを相手にしてないように聞こえますね。反省。
アイツのその次の行動にその場にいた全員が驚愕していたと、思います。
だって僕を力の限り鳩尾を殴りましたから。
正直、死ぬかと思いましたね。
息、出来ませんでしたから。
その場に踞る僕を更に感情に任せるままに罵っていました。
言っていた内容は覚えてませんけど。
もう一度殴り掛かろうとしたのか頭の上で僕に対しての言葉ではなく誰かに対しての言葉だと顔を上げて知りました。
基本、自分本位で、世界は基本的に自分中心と略々考えていたアイツが簡単に爆発させて一撃を入れたのです。
顔を上げると僕の視界にはアイツと知らない誰か、ではなくアイツを連れ戻せと言っていたあの人が居た。はずだ。多分。うん。絶対かな。
まあ、過ぎたことだし、良いかな。
まあ、考えたら違うかも。
「どうして邪魔をする。僕に対しての言葉ではないなら誰のだ」
「はあ、すみません。いえ、私の上からの指令でして、あなた様のご命令は絶対ですがその上には逆らえないのです。」
「それが、どうした。ボクの」
「あ、ごめん。言葉を挟んで良いかな。否定されても挟むけど。あのね、僕に対してのあれは現在停止されているからこの人が僕に何をしても何もないとなっていますから。停めなくて結構。です」
それにアイツが更に切れて、僕を一蹴り。
お陰で口を切ってしまいました。
意識は手放しませんでしたけど、痛かったなぁ。
んで、その後どうなったかと、いうと、ううん。正直、この辺てそんなに重要じゃないからなあ。どうしよう。
まあ、思い出すためだからなあ。
僕はアイツが悪態をつきながらそれでもたぶん普段のアイツからは想像も出来ないだろう暴言を浴びて、えと範囲内に戻りました。まあ、その瞬間に襲い掛かって来た新入生を返り討ちにしましたけど、ね。
さてあの新入生限定の僕を目標にしたこの結果は。僕の余裕の逃げで幕を閉じました。
正確には僕がその新入生を全員気絶させて終わらせたんだけど。
後でやりすぎだ。と、怒られました。
んで、その日の夕方。
僕は学生寮の用意された自室の机に居ました。
「ああ。本当に疲れたな2日だけど。」
「ふふ。君は本当に胸くそ悪いね。その物言いは」
「そうかい。まあ、僕も君を相手にしているからかもね」
二人で意味なく笑いました。
「ねえ。何時、行くの」
「さあギリギリかも知れないし今すぐかも知れないし。まあ僕の気分次第か、それとも」
最後まで言い終わる前に酔いどれ魚咲さんが何の遠慮もなく扉を開けた。
「やあ。元気かい。久方、ではないけどね、光魔君。積もる話もあるけれど、君にお客さんだよ」
といわれて通されたのはあの、四人だった。
「うげ。」
見た時にそんな、言葉が出たと思います。
「な、なんで皆さんいるんですか。たしか」
「ああ。教師とか、まあ学園関係者の許可があれば簡単に入れますよ元主よ」
二人から疑問の言葉が出たけど軽く無視。
「それで、どうして来たんですか。て言うかこんな場所に来ても良いんですか。」
「がはは。気にするなボウズ。そっちのが言ってたろ。許可が有るからな」
「いえ、別段それは良いんですよ。僕が言いたいのは」
「き、きへへへへへ。なんだい。私ら自身の事を言っているのなら心配無用だ。」
四人が懐から取り出したのは一枚のカード。
「それは、何ですか」
「ああ。そうだねえ。これは一時的に我々の全てを保証するための品物。かな」
「そうだなあ。まあ、極端に言えば、だがな。」
「はあ、そうですか。なら良いです。で、それを見せるために来た、なんて事は無いですよね」
「察しが良くて相変わらず助かる。そうだ。君が始めてしまったあれは終わったのだろう。なら当初の予定通り行こうじゃないか」
と僕は頷いて机の上から中までの、多くない荷物を適当に集めて箱に入れるとそのまま部屋を出ようとしたんだけど、はは。なんと言いますか、タイミングが良いよね。
部屋の出入り口に固まっていたのも有るだろうけど、誰かが通報したのかな。
「どうして関係ない人達がいるのか説明して貰いたいですね先生。」
その声の主はアイツだった。
後で知ったけど寮長をしているそうだ。
僕には関係ないけど。
「あ、これはこれは。次期。これには深い理由があり」
「無いよそんなもの。だって。僕は今からこの島を出ますから」
「は。何を言っているんだ。そんな許可は出していないぞ」
「え、許可なんているの。それは知まりませんでした。」
本当に知らなかった。
「君は、ボクを」
その先を制して、
「あのですね。君の許可とか何だとか、僕には現状関係ないと言った方が正しいですね。どうしてかというと。」
僕は自分の端末を出して少し操作。画面を見えるように差し出す。
「このように僕には今から仕事がありまして、これは、見たところ貴方より強い権限を持っていますよね。」
ここで一区切りして視線をアイツに向けると面白い表情をしていたと思う。
直ぐに視線を外して見てなかったから知らないけど。
「だからですね。これから港までこの方達と行こうとしていたんですよ。」
軽く肩を落として、
「本当は行きたくはないんですよ。だって、今年の授業に出れないですし、出席日数もねえ。」
ここで何かを思い出したのか、魚咲さんが割って入ってきた。
確かこんなことを言っていた、と思います。
「ああ、それに関して校長から預かりものが有ったんだった。」
端末を操作して僕にデータを送信してきた。
開くと何か記されていた。
『2565,4,10より当該生徒の本年度の授業日数及び単位を全て課外授業扱いとする。
報告は年度末提出を厳命願いたい。
該当生徒名:スワ・コウマ
以上。
尚、返信は不要とする。』
と書かれていた。
ちょっと、待って、下さい。とかそんな事を魚咲さんに言ったと思いますけど。
端末をマジマジと眺めてから
「ああ。だから教頭とか主任とかが渋い顔とかしていたのね。」
一人で納得してから自然な動作で何処かへ行こうとしてたので直ぐに止めました。
何。とか言う前に聞きましたよ。その返答が僕の斜め上処か別次元の返答が返ってきましたけど。
「ああ。それの出所はね現島主を介してもっと上からの通達らしいわよ。詳細は知らないけどね」
おう。今此で思い出しましたけど、此を出したのは結局誰なんでしょうね。
ふう。その後はアイツが何処かに連絡をしている間に出る準備をしてポケットから一組の手袋を出して嵌めました。
それで玄関で待っていると、轟音を響かせながら空から何かが落ちてきました。地面に穴を開けて咳き込みの声をさせながら土煙から出てきたのは、僕と同じか少し上の少年だった。
「ぐへっげほっ。たく、もう少し穏便に出来ないのかね。お、なあ、そこの少年確認したいんだけど、」
「・・・・・」
「あれ、聞こえているよね。おおい。もしもうし」
「・・・・・・・」
「はあ、まさか状況把握ができないのか。たく説明するのもめんとどるぶうあ」
話が長くなりそうなので、一発殴りました。
「時間がないので簡潔に行きましょうか初対面の方。取り合えず貴方は敵ですか味方ですか。それだけは教えて下さい。」
口を押さえながら起き上がっていた気がしたんだけど、どうなんですかねぇ。
「ふ、ふはふぁ。くふ。何かを聞かずに殴り飛ばすなんて全く。なんて無礼な」
「五月蝿いです。黙れです。僕の質問に答えてください。敵なら気が済むまで殴り続けます」
「まあ、待て。味方だ。証明なら出来る」
端末を取り出すと操作をして軽い音が鳴る。
すると僕の端末に何かを受信した音が鳴った。
開いてみると、あ。開かずに消したんだっけ。
「ちょ、何で消すの。」
「んん。僕の何かが訴えてまして、開いたら僕の端末は二度と使えなくなるんじゃないかと」
舌打ちしましたよ。
「ひは、ひははははははっ。やはり侮りがたし。小僧。お前の勘は当たっている。あれを開けていれば瞬時に侵食され使い物にならなくなっていたろう。それからわかるな」
「決定ですね。」
「あ、はははははははは。驚いた。此方の仕掛けを壊されるなんてね。まあ、良いや僕の役目は終わったしね」
寮の窓が割れると相手の側に何かが降りてきた。
それは、アイツを咥えた大きな獣。フサフサの毛に覆われた四足歩行の唸る獣。今時珍しい軍用だ。
「はははは。もし、返してほしけれ、ばらぶらべあ」
最後まで喋らせずに顔の中央を殴り抜きました。
強く殴りすぎたので結構の距離を飛んでしまいました。
まあ、それは気にせず唸っていて威嚇をしていて、たぶんあれの何かなのだろうけどその一瞬の出来事に追い付かなかったのか唸りを止めて、硬直している間にアイツを強引に引き離してその獣の腹の側面を渾身の一撃の下に蹴り飛ばしました。
自分の端末を使わず元船長の端末を使わせてもらって何時もの所に連絡をしてから港に向かう前に、一人と一匹は縛って適当な場所に隔離してもらって、運んでいた乗り物の残骸は出来るだけ拾い集めてもらってから一ヶ所に置いてもらいました。まあ、そんな事をしていたら日も傾いてきて港に向かうのを翌日にしました。
次の日の早朝、僕は車両に乗っていました。
それは当初の目的通り港に向かうためです。同行するのは初日の人達とおまけが二人。
一人はアイツで。もう一人は元同室の人。名前は忘れたけど。何故か同行していました。
「で、僕に用があって来たんだよね。」
「ああ。1つ、頼みたいことがある。勿論謝礼はする。」
「受けなかったら。去年みたいな」
「それは無い。心配するな」
「そう、か。なら何かな」
「簡単だ。ある人に、そうある人に会えたならで良いんだけど伝言を頼みたい。」
「んん。それなら、まあ。」
「ほ、本当か。なら願いたい。」
そうしてアイツの頼みを引き受けたんだっけ。まあ、まだ会えてないけどね。
「おうボウズそろそろ港に到着するぞ」
僕は頷いて荷物を背負ったり持ったりして降りる準備をしました。
案の定、ははは。襲撃されました。
車両もかなりの速度を出しているのに、よくまあ窓を突き破ったり天井を壊しながら入ってこれるなあ。
「はっはー。はじめましてらばりゃあ」
間を置かずに僕が、じゃなくアイツが乗り込んできた人達を瞬殺しました。
ああ。楽だったな。
あ、今更だけどアイツも連れていけば良かった。戦力に絶対なるし。
で、前回と同じように車両の隅に固める前に色々と質問して、今回はなかなか喋らなかったけど、最後は虚空をみつめて全てを話した。
これで元船長の地盤が固められたのかな。
そうして港駅に着いて襲ってきた人達を引き渡してから僕達は港へと向かったんだっけ。
着いたら着いたで島内警備の一部が虚空を見ながら襲ってきました。
ああ。これは正直面倒に思いました。
アイツも含めて全員で対処してその場は収まりました。
「あ、そうだ。君の頼み事の対価だけどね此を現島主様に届けてくれないかな。勿論、本人に直接渡してほしいんだけど」
「そ、それを報酬とするなら喜んで引き受けよう。」
眩しすぎる笑顔だった。
正直にいうと引きました。吐き気もついでに。
そうして僕は、元船長。幻術師。元最重要危険人物。後の先生(あ、この場合は教寮の専門医師だけど)。と一緒に用意された船に乗りました。
元船長が操縦して港が遠ざかって行きました。
まあ、感慨に耽るとかはありませんでしたけど。
はっきり言って行きたくなかったですね。ホント。
はあ。まともな生活は望めないのかなあ。
え、あれあれええぇ。