終章~逃亡と契約~
目を開けたら世界は日常を謳歌していた。
当たり前である。
誰かに突っ込まれたような気持ちがあるのだけど無視し、どうにかして帰還できたことで蓄積していた疲労一気に表れたのだろう。久方ぶり地面へ足を着けた所までは覚えているのだが、後の記憶はない。
そんな事を考えながら蓄積した疲労の重い体で歩く先には見たことのある建物。一年近く見ない間に随分と変わったな。
目下のところそれを考えないようにして視線を外して近くの建物に入った。
自動で閉まる扉。
壁に這わせた手に何かを認識して軽く押し込んだ。
駆動音と同時に淡い光に照らされていく。
内部には横たわる人。
入れ物として存在を許されていたもの。
神と呼ばれる存在二つをその身に宿した選ばれた人。という器に選ばれた存在。
今は静かに眠っているように見える。
その傍らに一匹の獣。と黒い塊。
半身にして本体とも呼ぶべき神の成れ。
獣に近づいて足で小突くと微睡みから覚めて小さく欠伸を飲み殺した。
此方を認識して大きく跳躍すると威嚇の意味を盛大に込めて吠えた。だが首に嵌めた拘束の衣服により大の字になって床に貼り付けられ、同時に小さな悲鳴をあげていた。
ため息を吐きながらまた近づいて目線を合わせる。
その目には憎しみと恨みと悲しみが同居していた。
複雑だなと思いもしたが簡単に霧散させ本題に入った。
時は戻って。
世界と同期してから何日かは戦後の処理等々に追加で当たっていた。
その中で気になる事を忍ばせていたのだが答えは見つからず仕方なくある方々の助力を乞うことにした。
複数の端末で情報を送信すると予想外に直ぐ返信がきた。
その内容は理解したけど時間を貰うというもの。
それでも翌日には端末に事の詳細が厳重な鍵を掛けられて送られてきた。
解除に1日費やして内容を読んでみても掴み所がなく、最後には次に会ったとき細かいことは説明すると書かれていたので、速攻で追加処理を終わらせて帰路に着こうとして問題が発覚した。
いや発生していた。
『ああ。存在してないという事になってるから表で堂々と帰れない。なら裏路で帰るしかないな。』と諦めと慣れにより片手間で手配した。
その手配は意図的にか判らないけども数々の妨害反感最後の戦場を過酷に上書きされて悲しみと恨みと怨念を合わせて生成したものを召喚という形で現されて最後は。
数日も費やして手配がなんとか整い厳重梱包した荷物。行き先は他国に渡り色々な手続きを得て最後には属島へと搬入される手配になっていた。
だが小さな手違いにより梱包された荷物は無事であるが光魔は複数の更なる面倒に巻き込まれたという形をとって納入され想定よりもっと遅れて島へと帰還した。
それが疲れの一因。
複雑に絡んだ因子が結果として今でも疲労という形で居座っていた。
目を覚ました時に自室であることに安堵したけど、どういう風に帰ってきたのか記憶になく、考えようとして端末に通知の音が鳴った。
内容は簡単な説明と目的地までの地図。
疲労の
体を起こして適当な服を来てから目的地へと向かった。
衣服の力を少し残して解除し獣を人の眠る台の側に移動させて自分は適当な場所に腰を下ろす。
「ふぅ。イタイケではないけど一人に処理させる分量じゃないよな。はは。まあ終わったことだから良いけど。疲れた。」
「ふふ。そう良いながら随分と無茶をしたわね。」
「ん。居たんですか。でどうですか。」
「なによその返答は。少しくらいは驚くとかしなさいな。」
「そうですよ。無茶な手配をさせるんだから。少しは反省しなさい。」
「はっ、反省て。そのせいで要らない作業をする羽目になったんですけど。まあ箱が落ちてたらもっと最悪でしたから。それが無かったことは良かったですよっ。」
「へぇ。でどんなだったんだい。それは聞きたいな。細かく。」
「気が向いたら話しますよ。さて。目下はこの人です。前に教えてもらった事ですけどなんか要領を得ないんですよね。何なんですか。始まりが不明て。」
「そのままの意味よ。どんな人間であっても始まりはあるものよ。消したとしても痕跡を簡単には消せない。相当に上手く細工しないとね。でも、この人物はその痕跡どころか出生場所すら不明なの。」
「それじやあ何者なんですか。」
「それを聞きたいのは私達の方。もっと詳しく話しなさい。」
「そうですね。一番は数百年もの時間を生きた存在。でしょうか。それ「ちょい待ちなさい。」て何ですか。」
「今、なんて言った。、数百年とを生きると言ったのか。」
「ん、えぇ言いましたよ。あれ書いてなかったかな。」
「書いてないわよ。はぁ一番重要な部分を忘れていたのね。」
「いえ、省きました。無くても調べられるかな。と思ったので。」
全員から深くため息が。
「他には省いた部分があるのか。」
「そうですね。言いかけましたけど、僕を見た時に誰かと勘違いしましたね。誰と勘違いしたんでしょうか。後はぁあないと思いますけど。」
「調べ直すわ。少し待っててくれる。」
少しというのは人に依りけりとは言うものの分も経たずに戻ってきた。
「当たったわ。驚いた。その人物に関する情報への接続には最深度の先までかと思ったけど何とかあった。それで結論からいうとこの人は人の形をした何か。それも生物という群ですらないかもしれないわね。それとこれ。勘違いしたと言っていた理由が有ったわ。現存している媒体は此だけど。詳しく調べたら結構な大物みたい。五、六百年前の人物だけどね。」
「へえ。そうなんですね。」
「なんだ驚かないのか。」
「まあ、それの記憶を何度か見てますから。その中で一番強烈な印象を持っていたんでしょう。それで昔の人だとは知ってましたけど、そんな古い人とは思わなかったですね。」
「なんだよ。記憶て。」
「夢と表現した方が的確ですね。それで何度も見ていたんですよ。まさか実在してたとは思わなかったですけど。」
「くく。それで何者だ。」
「特別急襲部隊特別隊総隊長。とこれは最終階級ね。この人と関わったのは分析班護衛の任務に着いていたときらしいわ。その時にこの人を見つけて保護、同時に側にいた獣も一緒にあ、その獣君ね。」
「へえ、で名前は。」
「それがね。名前だけ消されていたの。どう調べても見つからなかったわ。もしかしたら先に在るかもしれないけど。簡単には行かないわね。」
「そうですか。まあその人の事は今も先もどうでもいいです。で、本題ですが。この人、の形をした何かは何ですか。」
「実験体『名も亡き集合体』と言うらしいわ。詳しくは、ご免なさい、それも消えていたわ。」
「それもですか。では詳細は本人を見てみましょう。」
「見る。てどうするつもりだ」
「普通に隣で眠って共有するだけですよ。ではお休みなさ、い。」
倒れて頭を打ったが何ともなく只々、眠っていた。
速いなおい。という言葉は皆が呑み込んだ。
もし、誰かに、始まりは。と聞かれたなら。幾つもの管に繋がった大きな入れ物に入っていた。と答えるよ。
色々な何かを集めて満たされた入れ物に幾度もの痺れる感覚は自分の何かを呼び覚ました。
それが〈自我〉だと理解したのは何時からだろう。
入れ物では何もできずただ揺蕩うだけで何も感じなかったのは〈感情〉が無かったから。でもたった1つの記憶が1つの感情を生成していた。
《恨み》。
その感情は記憶からであるけど唯一の感情でそれ以外を知らず日々募るもの。
限界は直ぐにきた。
周囲に同じく漂う何かが自分に集まって形成していくとそれまで感じたことの無い痺れで意識を失いかけた。が出来たばかりの目を閉じながら意識を保っていく。
次に目を開けると自分はそれまでより小さな入れ物に入れられていた。透明な壁の向こうに何かを認識しても感情は恨み1つ。のはずなのにどうしてか恨み以外の感情が芽生えていた。
意識に言葉が流れてくる。
それによると実験の過程で偶然作成された個体だそうだ。数々の実験の副作用なのか様々な感情が発露したらしい。
それでも自我を確認したのは随分と経過してからだとか。
その時に意識したのは何だったかは覚えていない。目を開けている間も瞑っている間も感情というものに良く理解していなかったから。
月日は流れて外に出ることができた。
一人だけだったけど大人達が相手をしてくれていたから寂しさはなかった。
大人の一人。マーレリアは特に相手を頻繁にしてくれていた。
前に読んだ情報に照らし合わせると親とはこんな感じなのかと思ったもの。
でもある日を境に来なくなった。
不安は募ったけど痺れの後はマーレリアのことを忘れていた。
思い出したのは、忘れた。
その後は数えきれない実験をやらされて最終処分という段階まで来ていた。
不安。は無かった。感情が芽生えて情緒不安定な時期もあったけど感情を死滅させる事を覚えてたから。
受け入れていたのか。
と聞かれたら否定するよ。
受け入れとかじゃなくて知らなかっただけ。だけで後で知らされて絶望、した、あれ誰にかな。
でもこうして生きているなら処分を回避したんだろうな。
その理由が。
研究所を所有する地区の強襲。
それと運命の出会。
あれは理由の説明もなく入れられた容器で眠っていた時。外の様子は知らなかったけど揺れは感じていたから何か話さないのかあるんだろうと。それと最後なんだな。と考えていた。でも容器は揺れに耐えきれず破損して強制排出された。
ん。あれ。何か。
そうだ。倒れたのはそうだけど。狭い道を通って誰かに会ったんだ。
会ったのは人。違う。獣。違う。あれ。なんか記憶が。
混乱というより人柱となって記憶が統合されたんだろう。
え。
よう。
な、ななな何で。
それぁ潜ったからな。
も、潜ったて。
うん。誤魔化してもあほだろうから言うとこれは貴方の夢だ。
夢っっ。
現実では研究資料として眠り続けていますよ。
ちょ、ちょと、それって私の存在が危ういんだけど。
そうかね。元々終わっているのに長らえたんだし、違うね永らえた方が的確か。まあそれでも五体満足で起きる気配無し。
さてアレを覚えてるかな。隔離空間と世界への同級と同期。なんでか貴方は発見したときに眠っていました。まあ簡単に収容できず多方面から非難の嵐を無駄に受けましたけど。さてと終わりたくなかったら目覚めようか。でも簡単に起きるなんてのはないよな。だって現実を見たくないから感じたくないから知りたくないから逃げに徹底するため眠りを選択してたんだよ。ではそれを全部抜きにして聞かせてもらおうか。
な、何を。
決まってるだろ。全てだよ。全てをさらけ出そうか。
ふふん全てと言われても何を求めてるのかな。
そうだな。では。
説明する。
んなっそんなことで精神世界の夢へと入ったのか。
まあそうですね。あ、これは内緒で内密で秘匿にお願いしますよ。もしばらしたらね。
ぐっ。
解ったなら教えなさい。てか教えろ全部。小さな事でも手懸かりにはなるしな。
はっはは。それが君の本性か。
ん、さぁどうかな。
いつか潰して悪い永久を知りなさい。
一息。
では、何からどう語りましょうか。
そうだな。ではその研究とやらの詳細を知っていて理解している範囲で。
そうですね。研究の目的。・存在の確率を上げる事・。
その確率は確立ではなく。
そう確率をもって数をこなして確立させる。そういう研究の1つとして産み出された数多くの実験台。それが《無限増殖の遺伝子》という途方もない馬鹿の様な研究。その果てに産み出された私が最後の究極とされていたらしい。
へえ、長いのか。
記録では数百年とも。
ふうん。それでその研究が果たされた場合は何があるのかね。
さあ其所までは知りませんね。記録でも最終の項目には顕現の完了としか。
そか。では別の話を
ええ。どうぞ。
と言っても関係しているのだが、貴方を救出した人は何者ですか。
名前は知らない。調べても何も出なかったから抹消されたんだろうと。何かをやらかして。
へえ、そうですか。なら別の話。どういう経緯で神の真似事をした存在と出合ったのかな。
それは。
知らない間に肉体が変異していた。その形は1つの突破を容易にした。その先には神を内包した存在が同じような容器に収まっていた。
な、なんで知っていいる。
動揺するな面倒になるから。
く。そ、そうだ。ふっ、そして対話無き対話を済ませていたからこそ契約したよ。
その場でですか。
そうだ、と思う。その辺りは上手く説明できない。
そうですか。それで、どうやって脱出したんですか。
うん。確か嗅覚を鋭敏に強化して危険を避けながら安全な道を通って外に出たんだと思うよ。
その時に誰かと会ったんですね。
あ、そうだ。あの人。そう君に似ていたあの人。自分を助けたけど、その事で報告しなかったらしい。
秘匿してどうするつもりだったんだろうな。切り札として上に昇るためか。それとも他の何かを目的としたのか。
いや、それはない。だって何処かの施設に預けられてから一度も会ってないから。
それは、まあ複数の可能性を考えるよな。
ああ。全部調べたよ。
それで。
うん。最初に言ったけど何も残ってなかったよ。あの人に関した情報は全て、消されていた。
そうかい。それは面白いな。ある存在にとっては。
おまっ、ああその言葉に他意はないのだろうな。
さあどうだろ。
で他に何が知りたい。
救出された後。どう生きたのか。とか。
少しの間だけ平穏に暮らしていたよ。でも、何処で嗅ぎ付けたのか、関係者が来たよ。多額の寄付と引き換えに売り飛ばされた。まあ施設は倒壊寸前だったから渡りに船だよね。お釣も何れだけか。その後、幾つもの研究施設を変えて最終的には長い眠りに着かされたよ。
ほうっ、それで何時、目覚めた。
さあ、それは判らない。
気づいた時にはもう揺れを感じていたし、知らない知識も在った。
ちょい待て。揺れと眠りは違うのかよ。
そうですね。眠りは夢を、というより記憶を生成して神様の記憶を知ってから長い間に矛盾を孕んでいると知っても流してました。
はははは。お前は。何者だと誰かに言われたか。
さあ記憶に記録はないけど。それでも恐怖は嫌に当てられたよ。
それで契約してからどうしたよ。
それからは複数も転々として最終的にさ、誰にも知られない単一の軍に配属されて、様々な線上を通って戦場を見てきたよ。
汚く醜くエゴをまざまざと見せられたか。
何でも知っている口振りだな。そうだよ。肉体的には契約できた疲労知らずで無休無眠で働かされても、全ての手柄は上官の。それで暴動が起きた時に紛れて。
偽装したか。
そうだよ。それからまた平穏な時代を生きたけど、また駆り出されて転々として、君に出会ったよ。
は、それは知らんな。会ったのは片割れの繭状態。それ以降はまあ知ってるかな。
ああ、同期したときに。
それで会ったかな。
惚けるなよ。貴様のせいで僕と神様の縁が切れたんだぞ。しかも再会したときには神様はお前に何かを溜めていた。
ああそれはお前を心配したんだろ。まあ神としては失敗してたけどさ。それでも契約してたとして個を心配するて馬鹿だよな。なあ世界創造を知ってるかな。
知るわけないだろ。
そうだな。世界を、無から造り出すなんてのは途方もないというより終わりが見えないよな。それでも神とやらは途中までやり遂げてたと思うよ。じゃねぇとよあれ程の完成度を維持するなんてのは不可能だよな。まあ優秀だから妬まれてあの結果を選ばれたんだろうけど。
それはもしかしなくても縁の崩壊と世界の強奪かな。
知ってるなら話が早い、知らぬ存ぜぬで記憶の彼方だろ。
願いが在ったとしても、それは関係ない。
元とは言え神なんだから個を優先するのは愚か。故に制限が着いた状態に陥ったんだろう。ま、要因は1つとは限らないからな。
何が言いたいのです。
繋がりは切っても切れないとは言うけれど、実際は簡単に切れるし、修復も可能だよ。まあ大変な部分もあるけれど。一度切れたらそれまで。何かの切っ掛けか、それか歩み寄るという一番の苦行をして修復の前段階。その先は当人達の努力か何かだろうと思うのよ。
何を言いたいのですか。
考えは万も億もある。統一しても綻びは必ず現れる。否定せずに受け入れる。とは無理だろ。だからこその世界だ。千に変わり万に化けるのが世の中だろ。
聞いている事に対しての答えを出してほしいのですが。
そうだな。では何をもって自分を肯定する。
だから答えを聞いているんですよ。
はは良く言うよな確かさ。
何ですか。
偶然が本当にあると思うのか。
何なんですか。
ふはっは。お前が造られたのは一体、どれ程の確率だよ。自我まで獲得させるのは差し金を考えられるな。でまぁ、何が言いたいのか。お前は現在、どっちに傾いているのかな。
傾くだと。
そうだよ。神を自称するもの。方や何かを再現するという果てに産み出された無を有に変動させ意識を植え付けてから認識を確定させた不完全で不安定で不釣り合いな存在。なあ壊していいかね。
ぶほっ、な、ななな何を急に。
嫌になってきたから取りあえず。
おふぅっ。
さらには。
くふはっあ。
最後にこれで終ってる。と良いよな。
げへかはっ。
ななはは。終ろうとして終れないのが。
くふっ。さて煩わしくこのムカつきは脱糞ものだぞ。
表れたのか。
初めましてと丁寧が良いか。
終わりが見えなくなる。
そうだな。
名を聞いてもいいかな。嫌なら別に構わんのだけど。
名を持ち合わせていない。逃げを選択した瞬間に種が生まれ契約して発芽し眠りと覚醒を繰り返して成長し今はまだ、途中である。
それにしては、言葉を流暢に喋れるな。
そうですね。まあ神とやらの知識とか表と思うようなものの知識で何とかな。
それでお前は獣の意識と認識して良いのかな。
肯定しよう。神との契約で自我が構築され、直後に奥底へ幽閉され眠った。複数の覚醒をもって最新は先の自身の器だ。だから負の感情は無いに等しい。
なんだ。恨みつらみとか、えげつない思いとか考えて、はあぁいなかったな正直。
それで何を知りたい。
なあ本体は何処へ隠した。
本体。とは。
前の意識は神とお前が造り出した虚構という虚像。時間稼ぎであり逃がすための、手助け。だよなっ。
げふっおぉかっ。
四方やだ。どうして判った。
さぁ、言えることは1つ。素直すぎた。かね。
くかぎぎぎぎぎぎいぃぃぃぃぃぃ。それでどうする。
さあどうしようか。考え中。
ぐぞがぁ゛はなぜぇ゛え゛。
なあ逃げられると本気で信じていたのか。ほっ、それは滑稽極まれり。
ごの゛おうおおおおはな゛ぜよ゛おおおお。
ほれよ。
どあっ。
なあ。
なんだよ。
本体は今、何処にいる。
そうするなら追わない関わらないお。
なら彼方に行ったよ。
そうかい。なら、ほい。行ってもいいぞお。
ではさらば。
ぐへっ。
何を簡単に逃亡しようとしてますか。分体であっても切り離せるは危険なのだから。
くの、嘘つきがぁ。
いや、最後まで聞けよ。俺は追いかけない、と言おうとしたら行動したのはソチラだし、俺は悪くないと思うよ。
はぁ、逃げても無駄と言うことでいいのか。
ん、そうだな面倒だけど、押し付けられたことは気の済むまで遣りきろうかと。まあどうなるかは判んないな。
見逃しは。
出来ない、というよりする気分にはなれないな永遠に。
そうですか。仕方ないですね。
そうだ、もし虚偽を報告した場合は神とお前の存在を贄にして本体を根絶やしにするから、ね。
ひっ。
ふうはふ。末恐ろしいとは貴方を指すのでしょうね。
さあ、どうだろう。それで本体は何処へ行ったのかな。
それはですね。よ、と。
ぐぎゃっ、え、ななな、なんで。おいおい。俺が逃げきるまで引き留める。なんて豪語してたのにさぁ、素直に従ったのかっ。この役立たずがぁ。
おいおい。判りやすい切れっぷり。
はぁ、なんてな。初めから期待してたら大きな衝撃に崩れるだけだろ。はっ。簡単に逃げられるとは思ってもいたが、無理だったか。
さ、どうだろう。気分しだいで見逃してた、てのもあり得るかもな。
希望的な。
それで気が済んだかよ。
ああ。そうだな。ま、まだまだ生きたいなぁ、とは思うよ正直。でもさ無理だろ。出会ったなら、どちらかが降るしかない。ならもう良いよ。好きにしろ。
そうかい。だそうだけど神、いや元神とやらはどうするよ。宿主が諦めに近いとしても結論を出したんだ。従うかい。それとも続けるかな。選択は自由だ。
ふふ。選択です、か。いや、選択も何も無いでしょう。決まってますよね。
さあ、どうだろ。
宿主たる者。最後に問う。
何だよ。
おや、驚かないのですか。
え、あ、そうですね。まさか神様がこんな場所に現れるなんて驚きますね。
ふふ。渇いた返答ありがとう。
さて翁たるかの者の契約者。
違うよ。正当な契約者じゃないよ。
む、話が進まないでしょう。
そうだけどな。この辺りは確実に言っておかないと後が面倒になるだろ。でどうする元。
決まっている。全てが一応として決しました。従い、貴方の下へと入りましょう。
お、そうか。なら手続きは戻ってからだな。
おや、この場でしないのですか。
いや、俺にそういった権限はないよ、あるのはあの爺さんだけ。細かな手続きも含めてな。
くく、面白い。なら戻ってから場を設け、改めて契約しましょう。
そうしてくれ。
じゃあ獸。どうする。このままそちらの人に溶けて消えるか。若しくは。
決まっている。
そうからならばだ。後は人にと神と話し合って決めてくれ。話に割って入ることもしないから。それとまあ。普通に面倒だったなと。
は、いやそこは楽しかったで終らせるだろ。
なにが楽しいのか。もうずっと苦痛でしかなかったよ。奔走して諸々を処理したり裏で様々な交渉をしていたり。て長々となるからもう、切ろう。
ふふ。お前は大変だったんだな。
判った様にいわれても正直、嬉しくもない。
いや、同情とかじゃないよ。まあその年で濃厚な経験をしたなんてのは、僕だったら逃げてるよ確実に。
そうかい。
そうさ。
ふむ。では、行こうか。
世界に戻る。
なんてのを簡単に許す奴は一人だけ居ないよな。
ふふふふう。この時。を待っていたよう。
欠片じゃないな。逃がした1つか。でも本体ではなくても近い存在に成長したのか。
そうだよ。ねぇ驚いた。
なんで。
だってさ、これで全てが収まると思って安心したんでしょ。だからこんな簡単に拘束されたんだよね。
ああその事ならもう終ってる。
へえ。強がり言っちゃうんなんて、らしくないね。
それで何の用事かな。1つの区切りをつけたんだ。出る幕はないと思うがね。
そんなつれないな。僕と君の。だろ。
止めろよ吐き気しかない。
でもね。こうして捕まった。そして動くことも出来ない。なら僕の好きにさせてもらうよ。
なあ。
命乞いかな。良いよ願いを聞き届けるならね。
いや、終ってるて言ったろうが。
ぶえっ。
なあ『《悪意たる隔たりの牢獄を司る拷問》』が鎮座しているて気づこうや。自分で造っていたんだからな。そうだ。理解しているだろうけど、外そうとか思うなよ。設置した時点でもう獲物は逃げられないと、お前自身が話していたんだからな。まあ本体だけど。さて本体に近いし。成長途中だからこのままは危険なので装置ごと封印する。解放は、まあ気が向いたらしてやるよ。誰かが。では、その時間軸までさようなら。
静寂とは無縁でありたい誰かの願いなのか。横槍まで簡単に対処して現実へと帰還していった。