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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
終章
102/111

終章~結末~

ん。

一人と一匹と二柱は封印を確実にした後、覆っていた壁を溶かして世界へと戻っていった。

世界にとって認識出来ないほどに短い時間。

展開されてから解除したのは瞬きよりも短い。

それで。

速攻で認識した。

最初から。

アイツが存在していなかったということに。

そう。それはアイツが起因とする様々な出来事が全て無かったか、もしくは改竄されていた。

だがそれは世界の理であり、二柱にとってみれば気にする程の改竄でもなかった。そうして。


神々と呼ばれる存在の戦いは人知れず続けられた。最後は一つの元へと集い、其々の役割を与えられた器達は各国に潜り込み重職に着きながらも世界を調整するために暗躍。

その筆頭が中心に存在する純色の対極である。一柱。

全てを手にしたその存在こそが世界の覇者として永遠に平和を紡いでいくだろう。

それは外敵であれ身内であれ手札は無限に所有しているため誰もがその意思を折られ砕かれ消し飛ばされ、その前に頭を地に着き命を請いそして永久の服従を誓うのだろう。

数年の後にて版図を広げ最後は世界を手中に納めることになる。

全ての存在がその者を新にして真なる唯一的存在として崇め奉り、また畏怖の象徴として神聖視され世界中に信徒が跪く。

しかし平穏は怠惰という罪を醸成する。


時は流れに流れ数百年。

平穏が前触れもなく破られる。

次元外側からの来訪者が介入。

して新たな戦いが幕を開ける。


この話しは小さな歪みから始まる。

一番最初の歪みは世界が統一されてから数年後である。

だがその歪みは歪みとしての形成には至らず自然消失して終わった。

これが最初の切っ掛け。

しかし、それは些細な切っ掛け。次第に歪みは頻発しながら世界へと拡大していった。

気づくと歪みは日常となり、閉じられた世界は開かれ来訪者が姿を見せたのは支配するものの眼前である。

来訪者は宣言した。

恭順を示せ。と。

暴挙であり怠惰であり傲慢である。

故にして支配するものは判断し無傷で帰したのだ。

返答期間を約束させて。


その返答を設けたのが駄目だったのか。

帰した直後に各重要拠点を襲撃され連絡手段など全てが潰されていた。

完全な油断と高慢が原因で引き起こされた惨事とも言えるだろう。

意思無き悪意が撒かれ、気づく筈の小さな穴さえ傲慢により思考と視界を曇らせ霞ませる。

民衆は離れていく。次第に心と身体。

視線と口調。

態度と雰囲気。


しかし唯一絶対たる自身の考えに間違いなどないと思い込んでいるためにその醸し出されている空気さえ流してしまった。

それが本当の最後警告であることにも気づかずに。


そして、事象は回転する。


始まりの朝。

起き上がると四肢を貫かれた。痛覚を遮断していたことが、幸いか不明だが考えを纏める。

言葉を発するため開くも同じ様に貫かれ舌を切断された。

即頭部に硬い物が当てられ命令された。

何があるのか、心が踊る。

この状況で異常性を認識して黙々と従うこととした。


立ち上がりに片目を繰り抜かれ傷口に埋め込まれた。

何が面白いのか皆が笑った。

何だこれ。とは考えず高揚感が高まってくる。

と思っていると殴り倒され足を砕き潰された。

悲鳴を挙げて見ると拍手喝采。

何が楽しいのか。

しかし足の破壊をして皆が誤った事に気づいた。

仕方なしに手を縛り引きずって目的の場所まで行った。


開かれた扉の先には何時も鎮座していた謁見の間。

だが違いは見なくとも解っていた。

次元外側の者が座っていた。

反論しようにも口内を潰されており声は出さなかった。

俯せに玉座の前へ引きずられ腕をへし折られて頭を前へと向けられた。


残された目で相手を確認する。

口を開くも長々と高説を垂れ流して如何に自分達が高尚な存在か。そして如何に此方が下等なる存在かを述べ連ねていた。

要約するとこうなる。


最後に。

この次元の宝物を全て明け渡すなら存在だけは許可すると言ってきた。

時間を与えると。猶予は1日。

だが悩む必要はない。

何故なら決まっていたから。

答えは。

否定たる拒絶。

を全身で表現する。

驚いた顔を想像してたが、その表情に微々たる動きはなく。冷めていた。

つまらないな。と感じた。

ふう。

考えてみなくても当然なのかもしれない。

しかし、それでも少しは動くだろう。と。その微々たる動きすらない。もう、本当に、何なんだろうかと悲観にくれて何処かへと引きずられていった。


拒絶したからといって即日処刑とはいかない。

手続き諸々必要で時間が掛かるのだが恐れは不可解な程に感じない。

長くも短し日々を久方の暇を享受した。

満喫した暇は直ぐに終わりを迎えて外に連れ出された。

喧騒が聞こえていたが、その場に連れ出されて思った。

ああ、愉しいなぁ。と。

そしてこれから先も愉しい事が欠くことなく続くのだろう。と考えている。


始まった。

見た事のある何かが宣っていた。

あぁ。愉しい。と腹底から思ってしまう。

数百もの年を重ね、行き着いた先には何もなく。

ふ。

とした瞬間に、力が抜けていく感覚。

やる気が無くなっていた。

生きるだけの力は在った。ただそれだけだ。

平和は怠惰を呼び。怠惰は暴食と色欲を呼び寄せ。暴食は傲慢と憤怒に寄り添い。色欲は嫉妬と強欲を誘発。さてさて何が原因なのかを問われるなら。

全てが嵌まっていた。

そう世界全てを掌握し数百もの歳月で世界は均衡に保たれていた。保たれていたからこそ、生きる意味。生き甲斐が無くなっていたのだ。

理解した所で何も感じられず、民草に向ける感情も次第に希薄していった。

その長き時の狭間にて招かれざる来訪者。次元の外側より来る者達が渇き絶望した体と精神に活力を漲らせた。

だからこそ。これで長い役職を終える事に歓喜しかない。

職務放棄。なにそれ美味しいのかね。


長々とした講釈を垂れ流した宣言は終わりを迎え、歓声に包まれながらん処刑装置が作動した。

絶望から。

漸く。

解放される。


というのは一切合切にしてなく。飛来した何かが装置の作動を阻害し首の表皮に触れて止まった。

さらに現れた影が処刑場を囲み逃げという手段を潰す。


何者だ。という問いに対しては無言での解答と続く行動により集まっていた衆人環視は逃げ惑う。

次元外からの者達は戸惑いも驚愕も躊躇もなく影に向かっての一斉放火を浴びせた。

結果的にみるのなら愚策と言う他なく、人々はただの肉に成り果てていた。

中には幼子等も含まれていたがそれは双方にしてみれば些細な出来事。

結果に至るまでの過程である。

慈悲を乞うものなどを無視して影は目標へと進んでいく。

進む先には処刑装置。の横に置かれている装飾品。

意図を感じて次元外の数体が阻むために対峙する。が、意味はなく圧倒的な力の前に砕かれる。

何度も立ちはだかっては砕かれ最後は指揮官と同等が阻むがやはりと言うべきは砂塵となって消えていく。

装飾品に手を伸ばそうとしてその影は止めた。

突如の笑いと振り返りと同時に放たれた言葉と力で装置に繋がれていた者以外全てが灰塵と帰した。

周囲数万もの範囲には何も残されず、言葉に表すことも出来ない何かがあった。

世界で唯一の存在たる目の前で世界は少し小さくなっていた。

絶望。はせず、更なる楽しみが出来たと素直に思った。

そう思ってしまったのだ。

世界の住民に関した感情は何時の頃からか無くなっていた。

存在するは心が沸き立つ感情のみ。

唯一の存在は自身に降り掛かる厄災すら天秤に掛けずに民を捨て昂る感情にまかせた。

だから、と、目の前に立った影を見て昂りが限界を越えた。

躍り掛かろうとした。

それを予測していたかの様に地面へ縫い付けられた。

噂に聞いていた古代の業。が一瞬で解き放ち影を蹴り飛ばす。

捻る。

首を。

何か違和感。

そう実体が全く感じられず、蹴り飛ばした影は中空にて霧散した。

やはり躍り昂り沸き立つ感情は抑える事さえ億劫になる。

限界も近い。

世界を欠けさせた理由を直後に知る。

あれだけの範囲をものともせず、装飾品は置かれている台を含めて無事だった。

戦慄と歓喜が同時に押し寄せ立ち上がりながら残っていた影を討伐していった。

世界に残った。

何がしたいのか理解に苦しまない。

装飾品を手にすると光に包まれ見ている前で世界が修復されていった。

全ての時間。現象。物質。

凡そ消費された量が全て元に戻った。

そう僅か小さく儚い命でさえも。


体感では数瞬。が世界は巻き戻って、次元外の侵略者が来る前まで戻っていた。

唯一の存在である。その者は記憶も残っており、目覚めた場所から直後に全てを理解した。

また、沸き踊るような混沌を飲み干せるのだと。鬼気と小さく震えた。


喝采した。一人で喝采を演出した。

目覚めた場所は知己とは遠き場所。

絡みつけ変則を拒絶した。結果的に幸いを得ることに成功。口が柔らくなり過去の影響を廃棄して未来を進むための力を獲得。さぁ歩きましょうか。

苦境を自分にとって不明たる表現不能な空回りとして飲み下した。

器が再生成されていく。

再会して全員は不可解な事を何度も問いただしてきたが交わして納得させて先延ばししていた事象を説明した。

納得しない者もいたが近い事を何度も説明して何とか納得させた。


記憶通りに次元外の存在が出現した。

事前に設置した装置に面白いように落ちていき全員を捕縛できた。

名を全て言うと驚いた表情。

でも、演技だと知っていたので乗って話を進める。

何日かして先見部隊の総大将が姿を現して一方的に言いくるめめてきた。

これも飲んで調印式の日程をその場で決めて解散とした。


さて素直に従ったことに訝かしんだが幾つかの手配で回避した。

撫で下ろしながら警戒は怠らない。


臨時拠点に戻って警戒強化と次元外の者達への静かな監視を隠した観測を実施させた。点を隠すために面を見るという費用の掛かる作戦だが副産物として陰へと完全に隠せることとなったのは幸いだろう。


そして幾年もの年を重ねて次元外の存在達の作戦が開始された。

しかし、それは知っていたことで潜ませた争乱部隊により撹乱させ混乱を招いて首謀者と影の者達を一掃できた。

胸が透く思いだった。

瞬間に。

あぁまだ民に対しての感情は失われてなかったのだと実感した。

次元外の者達の処遇は決まっていた。

その持ちうる知識全てを吐き出させ、飼いながら腹底に渦巻く感情を打つける相手を求めていた。

そう先見隊と解っていたから大本へは偽の情報を掴ませていた。

記憶の通りに事が運んでいるように偽らせたのだ。


そうしてあ、の瞬間へと結ばれる。

断罪の瞬間へと。


勿論。自分自身があの時の様に装置に填められるという案も有ったが、それは周囲が反対したので廃案とした。

しかし、相手が相手であるため複数の作を同時に進行させることで納得させた。


同時進行ということは、費用も膨らみ国庫を圧迫した。

甲斐あって完成させるのにそう時間は掛からず全てが整った。


こうして本体とした本隊が次元の向こう側から進行してきた。

この先は自身でも未知の領地。

何が起こるのか楽しみです仕方ない。

と感情が堕ちて小さな笑いから大きな笑いへと転じ、つくづく自分自身が呆れてくる。

だが否定はしない。

これはもう自分にとっての遊びであり、転がるか昇るのかは僅かな運と緻密な作の成否にかかっている。


想定以上の軍勢が世界各地に進行していった。

助けられるなら助けるし、命の灯火が消えかけていたなら迷わず掬いとって永らえさせよう。世界は庭で家で箱なのだから。


そう家とするなら全ての配置全ての場所全ての地点を把握している。

幾度も次元を越えて来る次元外の来訪者達。その力を解析し予兆を見つけ罠を仕掛ける。

そうすると面白いように罠へと掛かり、串刺し張り付け火炙り水攻め等々、全ての地点で数多が命を失っていった。

笑いたいが羨望の目を前にして嘲笑いは禁だろうと解っていたから自粛して抑えていた。

しかし指揮官や近しい者達を残して全滅させた事に何か胸騒ぎを覚えたが従わずに遂行させた。


進行は上手くいった。

だのに、またこの状況である。

あれとの違いを上げるのなら、そう手足を串刺しにされて地上から遥かな上空で固定されていた。

何が間違っていたのか。

その切っ掛けを模索しようにも過ぎたこと。頬を引き裂く風爪が現実を突きつけていた。

失敗したんだと。

これは流石に、堪えた。

あの時より頑丈な処刑装置。あの時でも抜け出せなかったが強化されていた。

動かせる箇所もない。

見た目に騙されてはいけない。

抜け出せるように固定されていない。

そう抜け出せたとして力を根こそぎ抜き取られた今では落下して地面に赤い溜まりを造るだけ。

打つ手が無くなっていた。

あの時は何かの切っ掛けで時を戻った。

でもこの場所でそれはない。

奇跡を期待して裏切られるだろうとも理解している。

そう。

だからこそ。

異常な者をその目にしてしまった。


張り付けにされた装置は地上から遥かに遠く星を越えていた。故に生身で生存できるものは存在せず。居たとするならそれは生物に在らず。しかしそれでも尚、その者は薄ら笑いを張り付け、小さく手を振っていた。

何かを言う前に説明された。


簡単にいうと、この状況は詰み。なので諦めて戻しなさい。と瞬きなどしていないのに姿を消した。

小さな混乱と今のが現実だと認識して目の激痛と共に視界が暗転し意識が飛んでいく。残された肉体は塵となって霧散していた。


意識は戻るあの瞬間へと。が、今回は代償が伴う。


目の前に自分の背中。近づき合わさり合一する。

衝撃は軽く足が少し浮く。

頭を降り状況を確認する。

戻ってきた。

この瞬間と強い違和感。

することは決まっていた。だからその原因に種を植える浅く深く。

意識の隙間を縫って。


準備は着々と進んでいた。


瞬間がきた。

攻勢が上手くいっていた。本陣での指揮を的確に進めていたけど、味方の一部が反転し此方に向かってくる。

あと一手の、この時が瓦解し崩壊して最後は装置に繋がれた。

そうこの時を待っていた。

雪崩に巻き込まれるように人の波に圧されすんなりと身柄を拘束された。

人山から一人の臣下。

その見知らぬ顔を見てやはりオモイダセナイ。

アアコレガ代償カ。

一人の存在に対する様々な幾つもの記憶と記録を随時消去する。

だから確信した。

これが最終分岐点。

誤れば消滅。

ずれても無限に続く世界の土台として抗う術もなく捧げられるだろう。


臣下は勝ち誇るように一歩を出す。

何かを述べているが、やはり、思い出せない。

長々とした言葉を終えると周囲へと自身の捕縛を命じた。

だから盛大に泣き笑った。

全身に架けられた拘束具は確かに理解しがたい力をもって完全に抑えていた。

そうそれは前回の話である。

ならば。

力を解放しよう。

魂に眠る本当の力を。

だが先手を打たれていたのか力は発動せず、足を砕かれ手を貫かれ地に縫い付けられる格好となった。

別の意味での笑いが小さく漏れる。

臣下は冷たい眼を向けて全身を更に拘束具で覆わせ何処かへと運んでいった。

全身から急速に力は抜けて思考も曖昧になって最後に見たのは悲壮な親しき者達の顔と次々に散っていく命だった。


その後、長い時間を掛けて研究され血の一滴すら無駄にせず複製体を多数生み出し世界は次元外の者達により統べられ、長い








・・・・









・+・・









・・・




メンドクサイ。

ああ止め止め。

はあ、長々と話したけど無いな。うん。さて目覚めてもらおうか諸君。


電気が走るような音と一緒に認識していた世界は崩壊し現実へと帰還する。

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