きぼうのつばさ 4
――あのとき私がおまえを引き留めていれば、失わずにすんだのだろうか。
《闇ノ翼》の王は永遠の棲み処である暗闇で、瞼を閉じる。
だが後悔はすぐに、終わりにたどりつく。その仮定はありえないことだった。何故なら《闇ノ翼》の王が愛した娘は、苛烈な光をまとう乙女。彼の救いがたい闇を侵食するほどの正義の光に、彼は惹かれた。《一極》にさえ盾ついた彼女の強烈な心こそ、彼の諦念をくつがえす力だった。闇に薄められる光なら、闇を従えることはできない。
結ばれない運命。
あまりにも残酷な。
光と闇のさだめ。
せめて《光矢ノ乙女》の祈りを無駄にしないために。
祈りが確かな利益を生むように。
そのために《闇ノ翼》の王は、闇の本領である奸計に未来を賭した。
――約束は成った
満足を得て瞼はひらかれる。《闇ノ翼》の王が足下に眺めるは、二つの翼の物語。彼が導き、つくりあげた、二つの鍵たち。
それは彼が愛した女の壮絶な死に捧げる手向け。
そしておそらくは。
もっとも卑怯な復讐、だった。
時は来たる――。
光と闇のもつれた先で、あたらしい未来に投げだされた小さくかよわく逞しい子供たちが、不安そうに、けれど希望を信じて星空を見上げていた。




