変換エネルギー抽出論
「ねえ、ヘラクレイトス。そういえば、なんで魔術のたびに水晶球を割るの?」
「いきなり本題か、あせる女は貰い手少ないっていうぜ。」
「そういうのいいから教えなさい。」
あれはなー、天才達にはわからない苦しみんんだけどな。
俺は魔術に関してはあくまでも優等生どまりだ。
姫さんやアーシアみたいな天才的な才能はない。
才能が一番明確に表れるのが魔術を使うときにエネルギーを取り出す原点をどこに置けるかというのがある。
一番の理想はΛΨΩ軸原点に取れればいいのだが・・・残念ながら俺の頭では情報処理が追い付かない。
そこで処理できるMDT軸原点を使うのだが・・・これだと3次元分のエネルギーロスが発生するため大きな事象変化を起こせない。
「ということで水晶球をわって発生する事象を原点にするんだ。」
「?」
「水晶球を割ると大きく二つの波が発生する。一つは音の波でMDT軸に2次式で表現できる。」
「??」
「もう一つが水晶が圧電素子ということで圧潰の時に発生する電波の波だ。これはΛΨΩ軸に三角関数式で表記される。」
「???」
「この式に従って予測線を利用して変換エネルギーを取り出すんだが・・・わかってないのか、姫さん?」
「うん、全然。」
「だー、どうやって魔術使ってんだ、お前は。」
「ぽら、キュッときて、ポンと立って、バーンって感じで」
「・・・天才はこれだから・・・」
「ニャアニャア(ネズミ捕った、褒めて褒めて)」
「あ、ホルス、えらいえらい。がんばったねー」
「オメェも少しは頑張れよ・・・」
「そういえばホルスこの間までは白虎だったけど・・・今はユキヒョウみたいだな・・・姫さん使ったな!」
「え、でもちゃんとアーシアの許可は取ったわよ。」
「アーシアの許可?何につかったんだ?」
「ほら、あたしって細胞完全に複写するのよね。」
「知ってる。」
「だから、欠損部位も時間がたつともとに戻るのよ。」
「ええーーー」
「別に驚くことじゃないわよ。アミノ酸の濃度分布を適正に保てばトカゲでもできることなんだから。」
「いや・・・そうだが・・・でそれが?」
「その・・・そのままだと全部再生しちゃうのよね・・・処女膜も・・・」
・・・
「さあ、話を戻そうか。」
「でもさっきの話からすると時間軸はいじってないのね?」
「おっと、いきなり。まあそうだな、それが空間系魔術式の特徴だからな。」
「ふーん・・・ねえヘラクレイトス。あなたたちって光子をどう見てるの?」
「光子って・・・あの粒子にして波なんてたわごとか?」
「そう。」
「・・・しいて言うならとげとげが出たり引っ込んだりするスギ花粉みたいな形かな?」
「あー、なるほど。それなら時間が一定にできるわ。」
「ん?」
「えーとねー、時間系魔術師にとって光って太陽と彗星みたいな形なの。」
「焦点の一つが太陽で長楕円軌道をしてるのがあるってこと。」
「そう、Ωボーア粒子が太陽で彗星が光子。30万キロメートルで移動するのはこの光子の方。Ωボーア粒子の近くで軌道を変えるときには潮汐力で速度が変わるの・・・時間が早くなる感じ・・・その潮汐力を利用するのが時間系魔術師なんだけど。」
「・・・それって、ノルン空間の認識のままだと、通常空間が時間圧で波打って感じないか・・・」
「YES、だから慣れないと船酔いみたいに空間酔いするんだけどね。」
ちなみにΩボーア粒子のほかにΛボゾン粒子がもう一つの焦点にあると電子になるのだが・・・まあいいか。
「空間魔術師はさっき言ったように光子も空間中に占める体積を設定する。だからどのような場合でも相対速度を座標系から計算できるんだが、その速度差を利用して遅い方を早い方に引っ張ってもらうが原則になる。」
「便利ねーそれ、大きささえ、十分ならXYZ軸でもいけない?」
「まあいけるけど・・・実際にはMDT座標からの介入は必要になる。1gの移動に82億ジュールも使いたくないだろ。」
「・・・うん。」
「ニャーニャー(ねえ蝉、取ってきた褒めて)」
「まーえらいえらいって・・・いいのかな?」
「ん?」
「蝉もアポロの神獣なのよね・・・」
「まあいいんじゃないか、いっぱいいるしうるさいし。」
「どっかの市民みたいなもんか・・・うん、えらいえらい。」
「ということで第3回 魔術講座 変換エネルギー抽出論を終了します。総合司会は妾レイチェルと」
「ニャア」
「でお送りしました。」
「おい、またかよ・・・」