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戒 - 6 -

暗く静かな室内。人の姿はない。時間的にいえば、先程、定期的な夜の見回りの職員が様子を覗いに来たが、それも既に部屋を出ている。

その闇に紛れて人の気配が動く。跫を殺して、音もなく目的のベッドへ近付く。

暗闇でもその膨らんだ上掛けの下に、何か在る事が解る。しんと身動ぎもせずに、寝静まっているのだろうか。

招かざる客は、ベッドの直ぐ脇まで近付いて手を振りかざした。手に持った白刃に、非常灯の明かりが反射しキラリと光る。

ガシュッ。

勢いよく振り下ろされ、白い羽毛がブワリと宙に舞った。スローモーションのように羽毛がゆらりゆらり、舞い踊る。


御門は呼び出しに応じやってきたが、先程から眼前の人物を睨み付けて口を開かない。

睨み付けられている当人はと云うと、平然と涼しい顔で受け流していた。・・・いや、微かに口角が上がっている。面白がっているようだ。

御門は、はぁ、とこれ見よがしに盛大な溜め息を吐いて、目を眇めると徐に口を開いた。根負けした態なのが気に入らないが、何時までも睨み合いをしていても時間の無駄だし相手が面白がるのを助長するだけだ。

「で?俺が付けと?」

相手は微かだった口角をハッキリ解るぐらいに、上げて態とらしい程の笑みを見せた。そして、話は終わりとばかりに椅子から立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。

取り残された御門は、腹立ち紛れに近くの壁に蹴りを入れて荒々しく扉を開閉した。

関わらなければ、余計な事を云わなければ・・・、しかし、既に関わってしまった。

ふぅ。

御門は深く息を吐いて苛立ちを鎮めると、暗い廊下を歩きだす。


麗奈は独り暮らしのアパートで、布団に包まりながらカタカタと震えていた。

コツ。コツ。コツ。

先程から窓が叩かれていたのだ。五階建ての四階の部屋の窓が、である。

カーテンを閉め切っているために姿を幸いにして目にしていないが、人間とは思われない。

コツ。コツ。コツ。

ただ窓を軽く叩かれているだけなのだが、いつ何時割って侵入されるかも判らない。玄関から逃げる事も考えたが、外に出た時点でアウトだろう。つまりは、八方ふさがり。

カタカタカタ・・・。

怖い。誰か・・・、助けて。

不意に窓を叩く音が消えた。

・・・助かった?

気を緩めた、その瞬間・・・

ピンポーン。

アパートのインターホンが鳴らされた。深夜零時を回ろうかとしている今、麗奈を尋ねる客など思い浮かばない。

・・・だれ?

動けないままの麗奈。

ピンポーン。

苛立ったように、再度インターホンが鳴らされる。

部屋の片隅で蹲っていたが、恐る恐る立ち上がった。音を立てないように気を付けながら、インターホンの画面を確認するが・・・。

・・・え?

その画面に写っていたのは、思いもよらぬ人物だったのだ。

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