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戒 - 4 -

『野犬と思われる、大型の犬に襲われると云う事件が、多発しております。・・・見かけた場合、無闇に近づかない様、注意を促して・・・』

麗奈が野犬に襲われた二日後の夕方のニュースだ。

ピ。シュン・・。

テレビを消すとソファーに深く沈みこんで、御門は目を閉じた。腕を組んで、何かを考える様に。

野犬は、特定の誰かを狙って襲撃している訳ではなさそうだ。不運にも野犬に遭遇してしまった人が狙われていた。

しかし、麗奈の場合は違う。明らかに狙い澄ましていた。空間の歪みに誘い込むという念の入れようだ。

・・・何故、彼女は狙われたのか。彼女に何があるというのか。

ふぅ。と息を吐きだすとガリガリと頭を掻き毟ると、その身をぽふっとソファーの背凭れに預けたのだった。

彼女の周囲を警戒すべきか・・・。


「あぁ?また木乃伊だと?」

野犬に襲われる事件が多発して、野犬狩りに駆り出されていた本谷は声を荒げた。

覆面の無線を乱暴に戻すと、くるりと振り返って石上に・・・。

「くそっ。」

暴言を吐き、ひとりで覆面に乗り込んだ。

石上はと云うと、何者かに襲われ入院中なのだ。命は無事だったものの、意識はまだ回復していない。

遺体安置室へ行った石上の戻りが遅いからと、若い刑事に見に行かせ発見したのだ。その時には、犯人は既にいなかった。


本谷が車を飛ばして向かったのは、田倉が発見された雑木林と同じ場所だった。田倉の屍体が実際にあった場所からほんの数歩離れていただけ。

本谷は近辺をざっと見まわした。雑木林が続き、民家も疎らにしかない。

あまり街灯がないことから、夜になるとこの辺りは随分と暗くなることだろうと思われる。

雑木林を目で流し見て、ある一部で目を止めた。

「・・・なんだありゃ。吸血鬼でも住んでそうな洋館だな・・・。」

自分の言葉にぞっとした。莫迦な。そんなものが居るはずがない。

本谷は、首を振って頭から莫迦な妄想を振り払おうとする。しかし、屍体が視界に入るとまた莫迦な考えが頭を過った。


―――人智を超えた、バケモノが存在するとしたら・・・・。


ピッ・・ピッ・・ピッ・・

一定のリズムで刻まれる音で、石上の心臓が止まっていない事を知らせている。

石上は、ICUのベッドの上で瞼を閉じたままだ。口元にを酸素マスクに覆われていた。

ピクリッ・・・。

微かに石上の瞼が震えた。

コツッコツッ・・・

薄暗い病院の廊下を歩く音が響いて来た。

現在時刻は、二十二時を回っている。余程の事がなければ、面会時間は疾うに過ぎている。では、病院関係者なのだろうか?否、病院関係者であれば、院内で音の立つ靴を履いているはずがない。

スゥ・・・

ICUの扉が静かに開けられた。そこから独りの人物が室内へ入り、石上のベッドまで近づく。

室内には、石上以外の患者はいなかった。病院関係者も今は姿が見えない。

石上に近づいた人物は手を伸ばして・・・。

その時、ICU入り口の扉が再び開いた。

「・・・紫咲・・さん。」

声を掛けられ紫咲しざきは、石上に伸ばした手を下しながら振り返る。

「様子をね。まだ、意識戻ってないみたいね。」

視線のみを石上に向け、淡々と云った。その表情は薄暗さも手伝って、読み取ることは出来なかった。

「あなた達・・・あなたも、石上も私の可愛い部下だからね。」

そう云われた本人、本谷は苦虫を噛み潰した様な顔をする。

紫咲は警部補である本谷の上司、警視である。女だてらにキャリアだ。叩上げの本谷には、苦手な人物だった。

「ところで、襲撃犯の方は?」

「は。すいません、未だ何も掴めてません。」

石上が襲撃された件だ。石上が襲撃されたのは、遺体安置室へ行って戻るまでの間だ。

つまり、警察署内での犯行なのだ。署始まって以来の醜聞だ。

署内総力上げて躍起に探ってはいるが、何も解っていない。

内部の犯行、もしくは内通者がいる。署内は黒い疑心暗鬼が渦巻いていて、重苦しい雰囲気になっていた。

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