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Battle Freak's  作者: 雅美琉
2章~始まりの街セイレム~
17/41

16話

更新が大変遅くなりごめんなさい。

文章の稚拙さが気になって勉強しつつ書き直していました。

お気に入りが増えてきてうれしいです。ありがとうございます!


用語を亜人→獣人    に変更しました。

   道具袋→腰掛け鞄 

「――じゃあ僕たちは森の東側を探策します。レイさんは西側をお願いします!」


「あいよ」


朝飯を済ませ、今俺たちは森の入り口に並んで立っている。

昨日の村長の話を聞いた後だからか、どこか不気味に見える森を探索するにあたって俺たちはそれぞれの方針を確認しあう。


とはいえ基本的には森を歩きオークを発見し次第討伐するというだけだ。

作戦内容は変わらないが、とりあえず互いのバッティングを避けるために進む方向を大まかに決めた。


確認も終わりいざ出発というときに、先ほどからずっとなにか言いたそうにもじもじしていたパルが口を開いた。


「ほ、ほんとに一人でいいの?うちらと来た方がもしものとき安心よ?」


何を言われるかと思えば。

俺は軽く脱力した。


「おいおい。俺は一人でもお前らと同じDランクなんだぜ?心配は無用だ。」


昨日借家で本格的に会話をして以降、パルは自分から積極的に話しかけてくるようになっていたのだが、今の問いかけは完全に論外だ。

三人についてこられても足手まといになりこそはすれども、なんの役にも立つとは思えなかった。

そんなことをしても獲物を取られるだけだろう。

そもそも俺の闘いを見られるのも気が進まない。帰りの馬車で終始怯えるような眼差しを向けられても気まずいからだ。


「じゃあオークを狩りつつ、なにか異変を見つけたら村に一度戻って報告しましょう!」


ウィルの号令でそれぞれ探索を開始する。


そういえば今回の探索のもう一つの目的として、森の異変の調査をするというものも先ほど確認したが...

そちらに関して俺は特に何かするつもりはない。

俺の目的はオークと闘うことだから、オーク発生の原因などはどうでもいいことだ。

精々あの三人に頑張ってもらおう。




“若き風”(ヴィンド・ユング)と別れてからしばらく森を彷徨っていた。

今のところまだオークらしき姿も足跡すら見つけてはいない。

とここにきて前方から何か生き物の気配がする。ある程度の大きさはありそうだし、どうやら複数いるようだ。


こちらの気配は外套の力でかなり薄くなっている。

物音を立てない限りはそうそう気付かれることはないはず。

俺はできる限りの速度をもって、生き物の気配がする場所から最寄りの大きな木まで近づき、そっと陰から様子をみた。



「――ギギっ!」


「ガ!グギャ!」



ほうっ――、と漏れる溜息。


耳障りな濁声はその姿を視界に入れずとも正体がわかる。

少し開けたその場所にいたのは、既に腐るほど討伐したことのあるゴブリンだった。

目の前の二匹は、今しがた仕留めたのであろうシカのような動物に喰らいついていた。


(ここまできてゴブリンとはな...)


今俺の胸の中には興醒め感しかない。

だが、ふと一つの策を思いついた。


俺は食事に夢中になっているゴブリンに背後からそっと近づく。

そして大きく足を振り上げ、


ぐしゃり――、


と右側にいた一匹の頭を踏み潰した。

慌てふためくもう片方には短刀を突き刺し息の根を止める。


大きく息を吐いてから、俺は短刀で適当にゴブリンの死体をばらし始めた。

一通り満足がいく頃には辺りにゴブリンの血肉がむごたらしく散らかり、おぞましい光景となっていた。

あとは時がたつのをただただ待つのみである。



風が吹き、木々が靡いて葉のこすれる音が辺りを満たす。

こうしてじっとしていると改めてこの森の不気味さが身に染みてくる。

先ほどは冗談交じりにそう思ったのだが、今や認識を改めつつあった。


――何故そう思うのか。


何故ならば、この森には“音”が少ないからだ。

なるほど先ほどから木々のささやき声は聞こえてくる。

けれども、本来そこに共にあるべき鳥の囀りや虫の唄といった、“生命が活動することで生まれる音”が混じっていない。


この森には確実に何かがある...


だがこちらもようやく待ちわびた時が来たようだ。



「「フゴァッ!」」




今俺の目線は真っすぐ一点に注がれている。

視線の先にあるのは今俺が静かに佇む木の下のちょっとしたスペース。


俺は先ほど敢えてゴブリンの死体を汚く撒き散らしておいた。

ゴブリンの臓物というのは独特の臭みがあるのだ。はっきり言ってしまえばかなりきつく匂う。


そんなものが散らかるそばにじっとしていることは、当然鼻が敏感な俺にはとても辛かった。


おかげでゴブリンに素材としての価値は皆無だが、俺は咄嗟に思い出したのだ。

オークはゴブリンを襲って食べることがあるということを。



ゆえに、わざとゴブリンの死体をぶちまけて放置しておけばオークをおびき寄せる罠になるのではないかと思い、今まで耐えていたのだが、予想以上にうまくいったと言えるのではないかと思う。


なにせ思ったよりも早く、俺が樹上でこうして見下ろしている所へと匂いにつられてオークがやってきたうえに、ここに来るや否やオークは勢いよくゴブリンの肉に食いつき始めたのだから。


俺はさっと木から飛び降りた。

着地した時の物音を隠そうともせず、ただただ愉快な目をオークに向ける。


一方、ゴブリンの肉を貪り食っていた二匹のオークは、その巨体に似合わぬ素早さでこちらに振り返った。

俺も初めて見るオークの顔が明らかになる。


顔の中央に大きく突き出た豚鼻はもちろん、その上には無数の皺が深く刻み込まれている。

落ちくぼんだ眼はやけに血走り、ゴブリンの血でぐっしょりと濡れた口元からは二対の巨大な牙が天に向かって覗いていた。


グロテスク極まりない顔はゴブリンのように嫌悪感を抱かせるだけでなく、強烈な恐怖を抱かせるに足る雰囲気を持っている。

おまけにその体は二メートルを越す巨体ときた。


――これがCランク上位の魔物の姿。



二匹のオークは威嚇の怒鳴り声をあげ脇に置いてあった武骨なこん棒を構える。

見た目の威圧感だけで言えば今までの中でも相当だ。


頑丈そうなオークの体を目の当たりにして、俺の中にある野心が芽生えた。



――久しぶりに素手で闘ってみよう、と。



そう決めてからは早かった。

俺は軽く指の関節を鳴らした直後、一瞬で右側のオークの懐に潜りこむ。


踏み込んだ地面を抉りながら足から腰、腰から上半身へと回転を連動させ、波打つ筋肉の収縮と共に渾身の右拳を豚面に叩き込んだ。

強烈な殴打を受けたオークはそのまま後ろに吹っ飛ばされる。


(あぁ、この感触!たまんねぇ!これは素手でしか味わえないよなー)


みしり、という右手に残る重厚な肉の感触に俺が酔いしれていると、後ろからもう一体が振り回した棍棒の一撃が飛んできた。


「フッ」


狙いの甘い攻撃を、軽く仰け反り避ける。

こん棒は轟音と共に空を切りさいて俺の鼻先を掠めていき、その先にあった木に衝突すると、木はその部分から叩き折られた。


(これが僅かにでも当たったら...)


つぅ――、とそのあまりの威力に冷や汗が背を伝い、同時に心の底から歓喜が沸き起こる。


すぐさま棍棒の一撃を放ったオークへと一気に距離を詰め、そのままの勢いを利用し跳躍。

空中で逆さになるとオークの頭を両手で掴み爪を食い込ませると続けて足を器用に回して勢いをつけ、そこから全身を使って思いきり回転した。


オークの首の筋肉が強張り、腕に激しい抵抗を感じたが遠心力をも利用した俺の力の前にはそれも空しく、回転とともに骨の砕ける感触、筋肉が千切れる感触が伝わってきた。

首を折られたオークは気が抜けたような断末魔を上げ、巨体を地面に放りなげる。


数瞬遅れて、俺は足元にいっさいの乱れ無く着地を決めた。


するとそこへ先ほどダウンさせられたオークが憤怒の形相で走ってきた。

振り上げた棍棒が俺の下へと唸りを挙げて迫る。

だが俺は冷静に、棍棒の一撃で叩き潰されるよりワンテンポ早く、左足を軸に鋭く回り、相手の首を刈り取るような鋭い回し蹴りを繰り出した。


ゴッ――、


とすさまじい衝突音が響き、オークの態勢が崩れる。

俺はすかさず追い打ちとして顔面に膝をめり込ませる、と地面に仰向けに倒れたオークは二、三度痙攣したあとに動かなくなった。



「あはははっ!これはいいな。なかなか闘り応えがある!」


時間でいえばあっという間の闘いを終え、俺の体は耐え難い高揚感に包まれる。


オークの攻撃は一発でももらえば死。


冒険者になって以来、俺に闘いで緊張感を抱かせてくれるレベルの敵がここにきてようやく表れたわけだ。

たとえ負けることはないであろう敵でも、それだけで十分楽しめる。

今までの敵が不甲斐なさ過ぎたのだ。


俺はしばらく闘いの余韻に浸ってからオークの死体を丸ごと腰掛け鞄に入れた。

雑魚の魔物とは異なりオークの肉は美味い。

そのためそこそこの値で売れるのだ。


そして俺はさらなるオークを探す。とりあえず奴らが来た道を辿ればいいか。



***



「あ、レイさんやっと帰ってきましたか!お疲れ様です。」


結局追加で5匹のオークを仕留め、夕方に村に帰ると既に“若き風”(ヴィンド・ユング)の三人は戻ってきていた。

見れば三人ともかなり汚れている。オークに遭遇したのは確実だろう。

どこか浮かれているようだったので俺はウィルに聞いてやることにした。



「どうだった?オークは倒せたか?」


するとウィルは顔を綻ばせた。

他の二人も満足そうな顔だ。


「はい!運よく一匹で歩いてるオークを見つけることができて何とか倒せましたよ!レイさんはどうでした?」


「まぁまぁじゃないか?さすがに巣に突っ込んで大量ゲットとかできる感じじゃないしな。」


若い三人に水を差すようだが、俺は鞄を逆さまにして上下に振る。

すると何度見ても不思議なことに、中からドスンドスンと音をあげながら巨大な豚の死体が出てくる。


――合計7匹分。


積み上げられた豚の死体はなかなかにすごい絵だ。


「な?!」


「ちょ、どーゆー?!」


「…?!」


それをみた若い冒険者三人は目を大きく見開き口をあんぐりとあけたまま固まってしまう。


(おーい、おーい。)


あくまでも何でもないという風なまま俺は話を続ける。


「で、お前らなんか森で木になることはあったか?」


俺の声を聞き、はっと我に返ったウィルが答える。


「あ、はい。森を歩いて思ったのはオークの数が少ないなってことですね。定期的に狩りを行っている森の浅いところにオークがでるなんて異常なことですけど、もしオークの住処に何かあって群れごと出てきたならもっとたくさん見てもいいはずなんです。オークは一つの巣に大体四、五十匹はいますから。でも僕たちはあの一匹以外に見てないですし...レイさんはどうでした?」


「俺もそんなに見なかったな。見かけた奴は全部狩ってきた」


「やっぱりそうですか...」


そう言うとウィルは黙り込んでしまった。

だが別の方向からの声が会話を続ける。


「そ、そんなことよりもDランクになりたてで、しかも一人でこんなにオークを狩っちゃうなんてあなた一体何者なのよ?!」


声の主はパルだ。

俺たちの話に割り込んできて騒ぎ立てている。


「わかってんだろ?俺はお前等と同じ冒険者だよ。で、お前らは明日も狩りに行くのか?」


異世界人だ、とは言えないため話を多少強引に逸らした。


「そうですね、一人一匹は成果が欲しいのでもう少し頑張りますよ。レイさんもまだここに残りますか?」


「あぁ、あと一日くらいは狩ってもいいな。」


「そうですか、じゃあとりあえずこれといった異変も見つからなかったことですし、また明日もがんばりましょう!」



丁度話が一区切りついたところで村長が俺たちのところにやってきた。

オークの死体の山を見るなり、な、なんだこりゃ!とか、まさかこんなに凄腕が来てくれてたとは!などといって盛り上がっていた。

そこで一匹やるよといったら大層喜んで何度も礼を言われた。なんとも暑苦しい。


そしてその日の晩は俺のオークを解体して村人と一緒にオーク肉の焼肉パーティーとなった。

村人たちはここ何日か部屋に閉じ籠ってたのと碌なものを食べてないのとでストレスが溜まってたらしく、皆一様にやけ食いといった感じだ。


俺は振る舞われた村の地酒を煽りながら、一人離れたところで盛り上がる宴を眺める。


(...俺には縁のない世界だな)


外套のおかげで離れている俺に気づくものはいない。酒を一気に飲み干し俺はそのまま借家へと戻った。



***



「結局なにも見つかりませんでしたね。」


「そうだな。まぁ、それはそれでよかったんじゃないか?」


宴会の次の日も朝からそれぞれ森へ入り、浅いところを徘徊するオークを狩ってきた。

成果は俺が5匹で“若き風”が3匹と大きく数を伸ばしている。

三人の成長は思ってたよりもすさまじかった。



そして今は昼下がり。

街まで馬車で送ってくれるという村長の言葉に甘え、用意ができるのを待ってるところだ。


「どうどう」


借家の外から馬の足音と御者の声が聞こえた。


「準備ができたみたいだな」


荷物をまとめ表に出る。

ここへ来たときよりは小さいが、十分4人が乗ることができる馬車が停められていた。

そこへ村長が現れ、俺たちは別れの挨拶を交わす。


「ありがとう、二十弱ものオークを狩ればとりあえず大丈夫だろう」


「そうですね...ただそれでも群れの半数未満ですし、オークが出てきた原因はわからないままなので油断はできません。なにかあったらすぐにギルドに知らせてくださいね」


「あぁ、もちろんだ。その時はまた頼む、腕のいい冒険者に依頼したいからな」


「はは、まかせてください!」


挨拶を済ませ、俺たちは順に客台へと乗り込んでいく。

今回はなぜかパルが俺の隣に座る。なぜだ。仲間と一緒に反対側に座ればよいものを。


「みなさん準備はよろしいですか?では出発します」


全員が乗り込んだのを確認し御者が馬に鞭をいれる。



「やぁ!...あ、あれ?」


鞭を入れても馬が進まない。“若き風”(ヴィンド・ユング)の三人が思わず御者をジト目で睨む。

...御者が少しかわいそうな気もするが。

その後何度鞭をいれても馬はいっこうに進まない。

肝心の馬方はと言えば、そわそわしていてどこか落ち着きがないようにみえる。

俺たちはそのまましばらく足踏みをしていたが、パルがふと異変に気付いた。


「ねぇ、なんか揺れてない?」


パルが俺の袖を引っ張りながら言う。

...だから俺じゃなくて仲間に言えばいいだろうに。


「馬車のなかなんだからそりゃ揺れるだろ?」


「違うの、なんていうのかしら、地響きみたいな...」


意識を体の感覚へと傾ける。



ドッドッドッド――、


すると確かに揺れていた。


「――確かに揺れてる。これはそうだな、でかい生き物が群れて歩いてる...そんな感じじゃないか?」


一定の感覚おきに足元から伝わる振動はさながら像の群れが大地を踏みしめ一歩一歩進んでいるのを近くで感じてるみたいだ。


「...僕にはわかりませんせんね。オックスはわかりますか?」


「いや、わからん。」


俺もパルもネコ科の獣人だから揺れとかには人一倍敏感なんだろうか。

もしかすると馬が動かないのもこの振動が関係してるのかもしれない。


(それにしても...この振動、だんだん大きくなってるか?)


俺たちが謎の振動に困惑していたとき――、


「うわぁぁああーーっ!た、助けてくれーーー!!」


遠くから、付け加えるなら森の方から男の悲鳴が聞こえた。


「な、なんですか、今のは?!」


「悲鳴?森の方からよね?!」


言うや否や、“若き風”(ヴィンド・ユング)の三人は各々の武器を携えると瞬く間に馬車から飛び出していった。


タイミング的にはあの地響きと関係があるのはほぼ間違いない。

となると大型の魔物の襲撃とかそんなところか。


(やれやれ。次から次へと...この世界はほんとに退屈しないな)


「おいあんた!あんたは様子を見てやばそうなら逃げな。俺が帰るときに困らないようどっかに隠れて待機しとけ!」


俺はぽつんと佇む御者に一言告げ、ウィルたちのあとを追った。


レイの設定上明るい感じより落ち着いた感じのほうが良いかと思い。ちょっと書き方うを変えてみたんですがどうでしょうか?

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