3
祖父母の家は漫画もゲームもない、なんともつまらない所だという認識をしていた俺は、家に着くなり早々畳敷きの居間にごろりした。
途中で食べたメロン味のかき氷。いつも近所の駄菓子屋で食べているかき氷とは、ほんのちょっとだけ味が違っていた。氷も柔らかくてあまかった。
大の字にうーんと身体をのばし、その拍子で服からはみ出た腹をゆっくりとさすりながら天井を眺める。
軒下に吊るされた風鈴が涼しさを運び、セミは反対に暑さを知らせてくれる。耳をすませば、コチコチと規則正しく仕事をしている柱時計が静寂を強調させた。
「おーい、亘。ちょっと出ておいで」
じいちゃんが庭から顔をのぞかし手招きをする。俺が縁側までのそのそと足を運ぶと、庭に植わっているキンモクセイの木陰までじいちゃんは移動した。足元には長い竹が二本。
それから夕飯まで、じいちゃんから竹馬の乗り方を教わったり、一緒に竹とんぼを作って空へ飛ばしたりした。いつの間に時間が過ぎていたのか。「夕ご飯冷めるよぉ」と台所の小窓からばあちゃんが呆れたようにほほえんできて辺りを見渡せば、もうすっかり空は夜の支度を終えていた。
ばあちゃんが腕をふるったご馳走は珍しいものばかりで。
今思えばおそらく、山菜や川魚の類だったんだろう。あの頃は全てのものが美味しく、何度もご飯のおかわりをしながらぺろりとたいらげたのを覚えている。
いつもはテレビを見ながら食事をしていた俺だったが、あんなにも会話を楽しみながら食べることは初めてだった。
だが、二日目になればそうのんきなことも言っていられなくなる。
何故自分は、一人でこんな田舎にいるのだろう。
何故祖父母と一緒に過ごしているのだろう。
父さんや母さん、姉貴はいったいいつこちらに来るのだろう。
俺はずっと帰ることすら出来ないのではないか。
いわゆる、ホームシックというやつだ。今度は祖父母を困らすことになったのだ。
わがままを言い散らし、ひとしきり泣くと、一人で家を飛び出した。
駅に向かおう。そこから電車に乗って、家族の待つ家へと帰るのだ。
漠然としたそんな考えが、ぐるぐると頭の中を駆け巡っていた。
そんな時、「あいつ」と出会った。
本当に偶然であり、忘れられない出会い。




