10
翌日。
俺は和也と姉貴を会わせるべく、二人で和也の家へと足を運んだ。
姉貴に和也のことや、遊んだ内容を話して聞かせながら歩いていると、向かいから見慣れた姿が近づいてきた。
ふらふらと頼りない足取りは、出会った頃のように。だが、治りかけていた傷とは別の傷が、和也の身体に新しく刻み込まれていた。
「何があったんだよ!」
俺は声を張り上げながら和也に駆け寄った。と同時に、遠くからこちらを見つめていた数人の子供たち――おそらく和也と同世代だろう――が踵を返して走り去るのが見えた。
あいつらだ。
あいつらにやられたんだ。
和也から詳しく問いたださなくとも、容易に理解出来た。
俺の背後に、一足遅れで姉貴の気配を感じた。
和也は、大丈夫だよと小さく呟くと、握り締めた左手を広げて見せた。
「見て、ほら。木の精霊を捕まえたんだ。初めて捕まえたから、亘にも早く見せたかったんだ」
ざり、と後ろに立つ姉貴の足音が聞こえた。
「あんな変な子と一緒にいたら、亘までおかしくなっちゃうわ!」
俺の腕を強引に引っ張り一緒に家に戻ると、すぐさま姉貴は両親に一部始終を話して聞かせた。両親の表情は、雲が落とした影のように暗い。
「ちょっと変わってはいるんだけどね、真奈ちゃん。和也くんはとってもいい子なんだよ」
ばあちゃんが和也の言動をかばう。
「亘ちゃんも、和也くんとそりゃあ楽しそうに遊んでいたよ。友達になったんだもんねぇ」
そう言いながら俺の顔を、気持ちを伺った。
細められた瞳の奥に、鋭い光が輝いている。何故だか責められているようで、ぞわりと毛が逆立った。
「でも、私あんなこと言う子、気持ち悪い! だからいじめられてんじゃないの?」
「真奈ちゃん!」
感情が高ぶった姉貴を、ばあちゃんが怒気を込めて制した。
俺は、姉貴の言葉と両親の表情、そして、はにかんだ和也の笑顔が浮かんでは消え、様々な思考と感情がぐちゃぐちゃになって、頭の中が混乱していた。
結局、「明日の昼前、みんなで家に帰ろう」と言う父さんの一言で話は終わった。




